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第二十一回ビジネス烈伝 / サンミゲルビール株式会社 代野照幸さん
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国民的ビールブランド同士の連携
キリンのノウハウ、サンミゲルにも

代野照幸さん

サンミゲルビール株式会社 上級副社長
代野照幸 (だいの てるゆき)さん

1983年キリンビール入社。社内留学制度でMBA取得。国内営業に始まり合弁会社への出向、留学、本社の経営戦略室等を経て、フォアローゼス社では7年間社長を務める。2011年から現職。5代目の駐在代表としてサンミゲルビールの上級副社長に就任。休日は専らゴルフ。
 
【好きな言葉】
「味噌汁365日」。
ある日本料理店の家訓。現店長が先代から毎日の朝食作りを命ぜられた。単純そうな味噌汁を作る中でもどこかに工夫、変化を加えて「凡の中から非凡が生まれる」ことを叩き込まれた、と。我々の生活や仕事にも通じる所があると思います。

フィリピンで知らない人のいない最大のビール会社サンミゲルビール。その大株主として関係の深い日本のキリンビールから赴任されている代野さんに、これまでのご経験や、キリンビールとサンミゲルビールの提携の経緯、今後のビジネス展望についてお話をうかがいました。

 

 

編集部

 

初めに、入社されてからのご経歴について教えてください。

 

代野さん

 

大学卒業後キリンビールに入社し、最初は横浜支店でビールの営業を5年間。その後本社のマーケティング部に移り、商品開発や広告に携わりました。更に5年後に、当時キリンビールが合弁で設立したバドワイザージャパンに出向しました。市場は日本だったものの、それまでのドメスティックな環境から、外国人のボスの下、会議や資料に英語を使って仕事をする環境に変わりました。

 

 

編集部

 

キャリア上の大きな転機になったのでしょうか。

 

代野さん

 

そうですね。トップのリーダーシップが非常に強いアメリカの経営スタイルと、それまで経験してきたキリンビールでのいわゆる日本的な部門積み上げ型との違いを感じて非常に興味深いな、と。社内留学制度に応募して、一年間マサチューセッツ工科大学の経営大学院に留学させてもらいました。そこで会計や財務も勉強して、幅が広がりました。留学後は経営的な観点で仕事ができたらと思っていたところ、希望がかなってキリンビールの経営戦略部に配属になりました。そこではビバレッジ等も含めたキリングループ全体のグループマーケティング構想や、綜合酒類戦略に基づいた買収交渉などにもあたりました。

 

 

編集部

 

買収先に出向されたこともあるのですか。

 

代野さん

 

ちょうど40歳のときに、買収で関わったフォアローゼス社に社長として出向しないかと打診がありました。もう少し本社の経営戦略の仕事をしてみたかったのですが、当時の副社長に自分も40歳のときに転機となるビジネスを立ち上げたんだと言われましてね。社長として働けるチャンスもそうは巡って来ないかと思い、引き受けさせてもらいました。バーボン発祥の地、米国のケンタッキーに蒸留所と本社がありましたが、まだ米国市場自体はあまり開拓できおらず、拡販していく過程が面白かったですね。

 

 

編集部

 

欧米系のお仕事が中心だったところで、フィリピンに赴任となられたんですね。

 

代野さん

 

フォアローゼスには7年間ほど、これまでで一番長くいた場所で、それこそ定年までいてもいい、と思っていたんですが、岐阜のキリンビールの支店長として国内営業に戻りました。2年後に当時の上司からまた電話がかかってきまし て、今度はマニラだと。自分は欧米系を担当する人間だと思っていたので、アジアへの配属は意外でした。フィリピンには引継ぎのために来たのが初めてで、最初は街並みに清潔感がないな、と感じましたが、すぐにフィリピンの人々の明るい性格など良い所が見えて来ましたね。

 

 

編集部

 

現在キリンホールディングス(HD)からサンミゲルビールには何名の方がいらっしゃっているんでしょうか。

 

代野さん

 

私も含めて5名です。営業、財務、経理、それから醸造技術の専門家も赴任しています。私は既にフィリピンでは3年経過して、これまでの駐在代表の任期からすると終わりかと思っていたんですが、経理担当役員の別の駐在 員が帰任することになったので、もう少しマニラにいることになりそうです。

 

 

編集部

 

キリンビールとサンミゲルビールの提携の経緯について教えていただけますか。

 

代野さん

 

日本の各ビール会社が海外展開を考え始めたのは95年くらいだったと思います。幸いキリンビールは内部留保が厚かったので、海外展開も種蒔きから始めるよりは海外の優良な企業に投資する、という形を取ることができました。2002年に現在のサンミゲルビールの親会社であるサンミゲルコーポレーション(SMC)に約15%の出資をしました。当時まだサンミゲルコーポレーションは、ビールとピュアフーズなどの食品関連企業だけだったのですが、その後フィリピンの成長に伴って多角化を始め、石油会社のペトロンやフィリピン航空までも傘下に収めました。キリンビールからもSMCに取締役を出していたのですが、インフラビジネス等になるともう我々キリンとしては事業参画できませんので、ビール部門のスピンオフをお願いしました。サンミゲルビールの上場が実現したのが2007年。株の交換をした結果、キリンビールがサンミゲルビールの約48%を保有する、という形になりました。おかげさまでサンミゲルビールへの投資からは非常に良いリターンを得られていま す。

 

 

編集部

 

サンミゲルビールをキリンHDが完全子会社化する、との報道が何度か出ていますが。

 

代野さん

 

どうでしょう。SMCとしても、国民的ブランドであるサンミゲルビールを簡単には手放さないんではないでしょうか。大事にしたいと思いますよ。今後更なる多角化の過程で、サンミゲルビールを売りたいとの申し出がSMC側からあれば、キリンHDとして真剣に検討すると思います。

 

 

編集部

 

日系の他のビールメーカーに比べ、キリンブランドをフィリピンで見かける機会が少ないように思いますが。

 

代野さん

 

サンミゲルビールは既に9割以上の圧倒的なシェアを持っていて、在留邦人の方にも、サンミゲルビールを愛飲していただいています。この場を借りて感謝申し上げます。日本のビールよりも気候にあっていますし、現時点では敢えてキリンのビールを前面に出して勝負しようとはしていません。例えばタイのバンコクでは、日系の市場が大きいので、一番搾りを日本人向けに、サンミゲルをローカル向けにという位置づけでポートフォリオを展開しています。東南アジアは非常に重要な市場ですが、各地域・国でそれぞれ異なった戦略を取っています。フィリピンでは、もう少し中間層が拡大してきたら、フィリピン人向けにプレミアムビールとして「一番搾り」を販売するチャンスが出てくると思います。あと10年近くかかるのではないかと予想していますが、ぜひやりたいですね。

 

 

編集部

 

キリンビールとサンミゲルビール共同で製品開発をする、といったようなことはあるのでしょうか。

 

代野さん

 

これまでも技術面、営業面、開発面等各部門での連携、知見の共有は行ってきています。最近「サンミグ・ゼロ」が発売されましたが、この商品はキリンビールの「カロリーオフビール」のアイデア、製法を参考にして発売につながっています。スタイルを気にする情報感度の高いフィリピンの人々に受け入れられて、好評です。サンミゲルとのコラボレーションでは、ビール以外にもビバレッジ分野など、今後もまだまだ成長の余地があると思っています。

 

 

 

 

サンミゲルビール株式会社 上級副社長

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