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第八回ビジネス烈伝/ファーストリテイリングフィリピン 久保田勝美さん
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<第8回>ユニクロのグローバル・ワンをフィリピンに浸透させたい

ファーストリテイリングフィリピン COO 久保田勝美さん

Mr. Kubota

【プロフィール】

1963年東京生まれ。大学時代にブラジルで一年間丁稚奉公。1987年YKKに入社。翌年より19年間をブラジル、アメリカ、メキシコ、シンガポールにて勤務。2006年ユニクロ入社後、ベトナム、カンボジア、バングラデシュ、ロシアなどでの勤務を経て2012年4月にマニラ着任。

【好きな書籍】

宮本輝の「青が散る」が好きです。テニスは高校よりずっと続けており、今でも一番好きなスポーツです。コートに立ってサーブを打つ直前の静寂と高まりが好きです。

【好きな言葉】

「汝らは地の塩なり、塩もし効力を失わば、何をもてか之に塩すべき」(マタイ福音書)。世界中どんなところにいっても、自分にはなにか人のためになることがきっとできると信じています。

 

今月15日、マニラ首都圏パサイ市のモールオブアジアに待望のユニクロ1号店がオープンしました。今回は、オープンに向け、フィリピンで採用した100人を超える新卒社員とともに、ユニクロのグローバル・ワンを浸透させるため奔走してきた久保田勝美最高執行責任者(COO)にお話を聞きました

編集部 ●フィリピン1号店のオープンおめでとうございます。東南アジアでは、シンガポール(1号店開業2009年4月)、マレーシア(同10年11月)、タイ(11年9月)に続く4カ国目の進出ですね。

久保田さん ●まずは皆さんには『お待たせしました』と伝えたいです。フィリピン進出がこのタイミングになったことについて地元のメディア関係者などからもたくさん質問を受けましたが、『ようやく進出できるまでの力をつけることができた』というのが正直なところです。

編集部 ●合弁の相手としてSMを選んだわけですが、その理由は?

久保田さん ●事業パートナー選びはお見合いに似ていて、私はフィリピンで約10社ほどの企業幹部と会い、直接話し合いをしてきました。最終的にSMを選んだ主な理由は、国内最大手の小売りグループであること、そしてユニクロのことを愛してくれると感じたことです。

編集部 ●記念すべき1号店のモールオブアジア内の立地をどう思いますか。

久保田さん ●SMの幹部とモールオブアジアを視察した時、「ここがいい!」と私たちから伝えました。ここに入っていたかつてのテナントは、多くのお客様が訪れるモール内でも人気の店でしたが、SM側は了承してくれました。SMからは、今後店舗を増やす際、SMの商業施設内の良い区画提供、ならびに一緒に他グループの施設にも店舗展開していこうという同意を得ており、今後もよい出店ができると期待しています。

編集部 ●さまざまな国際企業がフィリピンにも進出していますが、当地に暮らしている人の実感として、店舗はあっても、日本と同じサービスを期待するのは難しいように思えますが。

久保田さん ●ユニクロはフランチャイズではなくすべて直営店の形態をとっていて、商品だけでなく、店舗設計、レイアウト、そこで働くスタッフとそのサービスまで含めた全てのユニクロをフィリピンで実現していきます。オープンまでの準備期間はとりわけ現地社員のトレーニングに力を入れてきました。まず年初に店長候補10人を採用し、フィリピン・日本・シンガポールにて実際の売り場を含む研修を受けさせました。彼らは今年3月のユニクロ銀座旗艦店のオープンにも立ち会い、日本のユニクロを体験しています。そのほか一般社員として新卒ばかり100人余りを採用して、日本から来た店長3人およびフィリピン人店長候補と一緒に2ヵ月半にわたりSMクバオ研修所とオープン前の店舗にて繰り返し研修を行ってきました。

編集部 ●クバオでの訓練は見学させていただきましたが、まず若い社員が全員、メモを取りながら人の話を聞いていることに驚きました。当地ではなかなかお目にかからない光景だと思います。

久保田さん ●最初はみなできませんでした。まず、あいさつ、身だしなみ、メモを取るといった基本的なことを3日間のオリエンテーションで身に付けさせました。その後、レジ、売り場、補正の3つのグループに分かれ、ユニクロのスタンダードを教え、ロールプレイングを通じて実際にお客様に対応している状況を作り、どういった対応が良かったか悪かったかを互いに指摘し合い、日々改善させてきました。例えばレジでは、決められた時間内にいかに迅速かつ正確にお客様に応対できるか、目標を設定して競わせました。補正でも、時間を定めて達成度を高めていきました。ちなみにユニクロは、フィリピンでは通常、有料で行われているすそ上げ補正サービスも、ユニクロのグローバルとして無料でお客様に提供します。

編集部 ●訓練の過程で、100余人いる社員の間で能力差が顕在化しなかったのでしょうか

久保田さん ●もちろん個人差はありました。ただそのことによって下の人をふるいにかけるのではなく、むしろ上の人をさらに上に引き上げていくための動機付けにしていきました。私の年になると年功序列があればいいなと思いますが(笑)、ユニクロは実力主義の会社なので。フィリピンでも店長候補が店長を目指す以外に、一般社員にも、がんばれば上を目指せるという実例をなるべく早く実現してあげたいです。

編集部 ●店舗に並ぶ商品の品ぞろえと価格設定はどうなりますか。

久保田さん ●基本的に、日本のユニクロで売られているすべての商品を揃えます。ある一定の期間を経て、実際の消費動向を検証した後、商品構成を調整しますが、特定の商品の取り扱いをゼロにすることはないと思います。価格は世界共通です。ほかの国・地域同様、商品ごとの値引きは随時行っていきます。かつて中国市場参入時に、価格が高すぎるのではと考え、廉価版の商品を開発したことがあります。しかし単なるコストダウンは商品のコア競争力の低下にもつながり、すぐにユニクロの本質である高品質商品に立ち返りました。

編集部 ●広告宣伝はどのように行っていきますか。

久保田さん ●フィリピンでのユニクロの知名度は低かったので、オープンに向けて、バスにラッピング広告を施してエドサ通りを走らせたほか、フェイスブックを通じた告知をしました。また、オープン1カ月前に正式発表したイメージキャラクター、クリス・ティウ(バスケットボール選手)、イザ・カルサド(タレント)、チト・ミランダ(ロックシンガー)、ニッキ・ヒル(歌手・俳優)の4人を介し、幅広い世代に身近に感じてもらえるブランドづくりを目指しています。

編集部 ●ところで記者発表でのスピーチやローカルメディアの取材対応などを見ていて、英語でのコミュニケーションに慣れているように思ったのですが。

久保田さん ●英語は高校時代から好きでした。大学ではポルトガル語を学び、言葉の力を軸にしたコミュニケーションを得意としています。海外赴任は、前職も含めるとブラジルを皮切りにフィリピンが7カ国目。出張ベースまで含めるとビジネスをしてきた国は30カ国に上ります。

編集部 ●フィリピンの印象をお聞かせください。

久保田さん ●ローマンカソリックが多いことに起因しているのか人に優しいと感じます。治安もかつて駐在した南米に比べれば問題はなく、こんなに楽しいならもっと早く来れば良かったと後悔しているぐらいです(笑)。趣味がテニス、ダイビング、映画であることも、この国が楽しいと思える理由かもしれません。当地に来てから、テニスはまだ忙しくできていませんが、ダイビングはアニラオに行きました。

編集部 ●プライベートな時間は、どのようにして過ごしますか。

久保田さん ●ショッピングモール回りが楽しいですね。だれもがまる1日を過ごせる場所ですから。フィリピンのモールの印象は、常に人がいっぱいということ。我々のような小売業にとってはうれしい限りです。

編集部 ●当地で事業を行っていく上で、ローカライズしなければならないことがあると考えますか。

久保田さん ●ユニクロの原理原則はグローバルな基準を崩しません。ただ人との接し方など、コミュニケーションの部分で地元にアジャストする余地はあります。例えば米国では、店内に入ってきたお客様に‘How’re you doin?’ と親しみをこめて声掛けしますが、それではフィリピンのお客様は馴れ馴れしいと感じてしまうので、‘Welcome to Uniqlo’の方が良い、といった具合です。一方で、フィリピンのお客様はレジ係とのおしゃべりを楽しむ傾向があるので迅速さだけを追求するのはどうかという声も聞きますが、まずはレジ対応のスピードを最優先します。すべてのお客様がそうだとは限りませんし、買い物を楽しむ際、お客様は商品選びには時間をかけますが、選んだ後は早く支払いを終えたいと思っていると考えるからです。ただし、お客様の意向をまったく無視してまで、というわけではありません。

編集部 ●先進的な立場で海外事業拡大を続けるユニクロですが、フィリピンではまだ1年生。当地で長年事業を続けている日系企業から、意見交換などを通じて学んでみたいといった気持ちはお持ちですか。

久保田さん ●基本的には『自分たちがやりたいと思うユニクロをどれだけ実現できるか』というスタンスです。もちろんその国の法律や国民感情など、気をつけなければならない点はあると思いますので、フィリピンのパートナーからの助言は大切にしています。

編集部 ●最後に、ここから先の目標をお聞かせください。

久保田さん ●フィリピンでユニクロをフェアに理解してもらうことです。そして、ユニクロが日本からフィリピンに来て良かった、と思ってもらえるようにしたいです。店舗展開としては、これから2年くらいで、現在の店長候補が店長となりひとつの店舗を運営するフィリピン人だけの店ができればと思っています。

 

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