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フィリピンで犯罪があった場合の手続きとは【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第八回】

『フィリピンで犯罪があった場合の手続って?』

  前回はフィリピン人を解雇する場合の手続についてお話させていただきました(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回はフィリピンの刑事手続についてお話しさせていただきます。

フィリピンでも犯罪が行われた場合に起訴がなされ、裁判所での裁判により有罪無罪が決定されるという点は大筋では同じなのですが、起訴に至るまでの手続は日本とかなり違います。そこで、今回は起訴に至るまでの手続がどうなっているのかについてまとめてみたいと思います。

予備審問手続

軽微な犯罪はさておき、刑事裁判手続における第一の手続は予備審問と呼ばれる手続になります。この手続は、犯罪が行われたこと、被告発人が犯人である可能性があることと被告発人が裁判にかけられるべきことを確認するための手続であるとされており、事件を起訴するに当たり不適切な差別が加えられることを防ぐことに目的があります。よって、告発者の側からすると、犯罪の事実が存在し、被告発人により犯罪が行われたのではないかと疑わせることができれば足り、予備審問のときに被告発人が犯罪を行ったことが合理的に疑われないまでの証拠を提出しなければならないということではありません。

告発状の提出

  予備審問手続の開始のためにまず告発人が行わなければならないことは、告発状を検察官宛に提出することです。告発状には被告発人の住所を記載し、犯罪のないように関する告発人及び証人の宣誓供述書ならびに証拠の提出があわせて必要となります。なお、宣誓供述書は原則として検察官または権限のある公務員、これらが不可能な場合は公証人の面前で作成され、宣誓が行われる必要があります。

その後の進行

このようにして告発状が提出されると、検察庁において担当の審査官(検察官)が決定されます。審査官は告発状その他一式書類を調査し、被告発人に対して召喚状を送り、反論する宣誓供述書の提出を求めます。被告発人は告発に反論する宣誓供述書を証拠とともに検察官宛に提出することができ、この宣誓供述書も告発人の宣誓供述書と同様に、検察官、権限のある公務員または公証人の面前で作成され、宣誓が行われる必要があります。

双方の宣誓供述書が出揃ったところで、検察官は通常の場合は双方を呼び出してヒアリングを行います。なお、ヒアリングにおいて当事者は相手方を尋問したり、反対尋問を行うことは許されていません。ヒアリングの後に両当事者は追加の宣誓供述書の提出を行うことができます。検察官は提出された証拠及びヒアリングの結果をもとに被告発人を裁判のために拘束するに十分は根拠があるかどうかを判断し、もし、十分な根拠があると判断した場合は意見書及び起訴状を作成して、すべての書類とともに決裁権限のある州検察官、市検察官または検事総長等に対して提出します。そして、決裁権者が承認した場合には、起訴状が管轄の裁判所に対して提出されます。なお、起訴状には検察官が推奨する保釈金の金額も記載されます。

このように予備審問の手続は、裁判と比べると簡略な審査を行い、起訴に相当するだけの犯罪の疑いがあるかどうかを決定する手続です。なお、法律には期間の設定がなされていますが(例えば、検察官は告発状の提出から10日以内に被告発人に召喚状を送付する等)、実際は守られていませんので、ご注意ください。


日本とフィリピンの違い

1.警察による捜査はあまり期待できません

日本の場合には警察に被害届を出し、警察が受理した場合には警察が主体となって犯罪の捜査を行い、たとえば必要な場合には被疑者を逮捕したり、捜索差押を行って被疑者を起訴するために必要な証拠を収集するのですが、フィリピンではそのようなことは一般的には行われず、まずは被害者の側で犯罪があったと疑わせるだけの証拠を集める必要があります。日本の捜索差押に類する制度はありますが、実際に警察を通じてこれを行うことは難しいと言わざるを得ません。時には警察が一般人からの情報や他の政府機関からの情報を受けて犯罪の捜査を行うことがあり、その際には警察が主体となって捜査を行い、起訴を行うこともあります。

2.身柄拘束は一般的には起訴後になります

被疑者の身柄が拘束されるタイミングも日本とは異なり、予備審問を経て起訴がなされ、裁判所が逮捕状を出したときとなります。とすると、そのときまでに被疑者が逃亡することも被疑者が証拠隠滅を行うこともあり得るということになってしまいます。なお、日本の現行犯逮捕のように、警察官の目の前で犯罪が行われた場合などには令状なしでの逮捕が行われ、犯罪により定められた時間内に起訴が行われる場合もあります。

ちなみに、法定刑が死刑又は20年を超え40年以下の懲役(Reclusion Perpetua)であり、かつ、有罪の証拠が固いと判断される場合以外については一般的には保釈が可能とされ、逮捕状に保釈金が設定されています。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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