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フィリピンの従業員解雇についてパート3【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第十六回】

『こんな従業員を解雇できますか?(3)』

  前回からはいろいろな事例に基づき、従業員を解雇することができるのかどうかについてお話させていただいております(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回もまた別の事例の場合についてお話しいたします。

今月の事例

当社は業績不振であり、さらなる損失を防止するために従業員の5分の1を減らさなくてはなりません。そこで、従業員を人員整理のために解雇しようと思うのですが、それは可能ですか?

整理解雇が許される場合

フィリピンの労働法298条(旧283条)は整理解雇が以下の場合には許されると規定しています。

① 労働省力装置の導入

② 重複人員の発生(Redundancy)

③ 損失を防止するための人員整理(Retrenchment)

④ 組織または事業の解散または停止

上記のいずれかに当たる事情がある場合には会社は従業員を整理解雇することができます。もっとも、解雇に当たっては、解雇予定日の30日前までに解雇対象となる従業員に対して書面による通知を行うとともに、DOLEに報告を行い、または、原則的に解雇事由に応じた退職金の支払いをすることが必要となります。

損失を防止するための人員整理としての解雇が認められる場合・(Retrenchment)

事情を行っていれば、常に業績が順調であるとは限らず、一時的に業績不振となることは十分にあり得ます。しかし、業績が思わしくないからと言って雇用主が簡単に従業員を解雇できるとすれば、従業員やその家族に与える影響が大きいことから、雇用主にはまずは人員整理以外の方法で事態を打開することが求められます。しかし、人員整理以外の方法ではどうしようもないほどの業績不振に陥った場合には、従業員を解雇することを認めています。もっとも、法律はどのような場合に解雇が認められるかについては具体的に規定していないため、これまでに数々の裁判が起こされており、現時点でどのような場合に解雇が認められるかについては最高裁の判例で示された以下の要件を満たすこと、そして、これらについて雇用主が証明できることが必要とされています。 

 その損失が重大なものであること

 その損失が実際に発生したか、合理的に発生することが差し迫っているといえること

 人員整理が合理的に必要とはいえ、それにより損失の発生を防止することが見込まれること

 その損失が十分な証拠により証明可能であること

 

   なお、損失が重大なものであることについては雇用主側が十分に証明できる体制であることが求められており、その際には外部の独立した監査人が適式に監査した財務書類の提出が求められます。社内で監査した財務書類では足りませんので、実際に整理解雇をする際には事前にこのような書類を準備した上で整理解雇が許される条件を満たしているかどうかにつき、専門家の確認を求めた方がよいでしょう。

どの従業員を整理解雇対象にとするか?

整理解雇といっても一部の従業員のみが対象となり、すべての従業員が対象となるわけではないケースが多いと思われます。それでは、雇用主側は自由に解雇する従業員を選べるのでしょうか。たとえば、この従業員は気に食わないから真っ先に解雇対象とするようなことは許されるのでしょうか。
 この点、裁判所は雇用主が整理解雇をする場合、公正かつ合理的な基準で解雇対象となる従業員を決定しなければならないと判断しています。具体的には、以下の要素を考慮すべきとしています。下記の要素を含み、公正かつ合理的と考えられる基準で解雇対象者を選択することが必要です。なお、下記の要素はあくまで例示であり、これら以外を考慮する必要はないというものではないことにご留意ください。

① 正社員よりも有期契約の社員、季節社員等を先に解雇対象とすべきこと

② 勤務評定

③ 業務遂行に要求される技能等を有するかどうか

④ 職務経験

⑤ 年齢または在籍期間

⑥ 健康

したがって、単に人事担当者が気に食わないという理由であったり、恣意的な基準や不合理な理由で解雇することは、後に争われた場合には解雇が認められない可能性が高いといえるでしょう。

結論

A.人員整理以外の方法が存在せず、会社の業績不振等を会社が証明できるのであれば、整理解雇を行うことは可能です。ただし、従業員及びDOLEに対して書面による事前の通知を行うとともに、解雇する従業員に対しては退職金の支払いを行う必要があります

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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フィリピン法律あらかると 前回のコラム

『こんな従業員は解雇できますか?(2)』今回もまた別の事例の場合についてお話しいたします。

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