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ビジネス烈伝 JICAフィリピン事務所 所長 坂本威午氏(SAKAMOTO Takema)

フィリピンは今が旬!日本ブランドを誇りに
オールジャパンで取り組むJICA

 

独立行政法人国際協力機構(JICA)
所長 坂本威午 氏

 

 

 

坂本氏は、中国、イラク、インド、そしてフィリピンでの駐在。その他、中東・欧州・南アジア等本部部長としても国際協力に携わってきたエリアは、「危険地」も含めてユーラシア大陸を網羅し、「JICAだからこそ」と各国要人に言わせしめてきた。その原動力は?そしてフィリピンでは何を目指しているのか、お話を伺った。
坂本氏のインタビューはマガジンでもご覧いただけます。

 

 

編集部

 

フィリピンの印象を教えてください。

 

坂本氏

 

明るく外交的、フレンドリーですね。「おもてなし」は日本の特性と言われますが、フィリピンのお家芸でもありますね。暗くて危険、そんなイメージはもはや過去のことです。初フィリピンは30数年前のセブへのハネムーンでしたが、今回単身赴任して、こんなにも過ごしやすく、日本人を大切にしてくれるのか、と感じていっています。先般の一時帰国時にも早く戻りたいと夢にまで出て来たくらいです。
忘れてはならないのは、この国は第二次世界大戦中に約120万の無辜の方々を失い、最も過酷な賠償額を請求した歴史があるにも関わらず、現在では信頼できる国として超親日であることです。日本人だというとみんな笑顔で応えてくれるでしょう。

 

 

編集部

 

フィリピンのポテンシャルをどう見ますか?

 

坂本氏

 

潜在力の大きい将来有望な国ですね。よくフィリピン経済の懸念材料として、債務が過大ではという点が報道されています。しかし、IMF(国際通貨基金)すらも管理可能な債務水準だと言っていますし、友人である財務大臣も中銀総裁も同様の見方です。何より債務の中身はその7割がJICAのОDA(政府開発援助)のような長期・低利のソフトな条件であり、かつ、7割がペソ通貨建てで為替変動リスクも僅少です。また、実は、対外債務のGDP比率はアセアンで最良レベルです。そして、危険水域は輸入規模見合いで2ヶ月、とされる外貨準備高が約8ヶ月もあります。フィリピンは返済資力があるのです。そして、今後も経済成長していけばよいのですが、今後も経済成長率は6.5〜8.5%と見込まれ、アセアンで最高クラスです。

この点も含めて、フィリピンはイメージを変える必要がありますね。良い方向に変える材料は揃っています。フィリピンは政治安定性や経済環境の主要指標でアセアンのトップクラスです。アセアン最低レベルのインフラ、社会開発指標、格差や世界最低の災害脆弱性など課題も山積みですが、JICAが強力にサポートしますのでそれらも逆に大きな「機会」になるとも言えます。

しかし、そんな折だからこそ、昨年の運輸省等の大幅予算縮減による契約支払いの遅延やVAT政策の中途変更などは大いにマイナスで残念です。「信頼できない国」だというメッセージに繋がってしまいます。 「信頼」は国際社会では非常に重要です。私は閣僚・議員等ハイレベルの方々にも口を酸っぱくして、信頼の重要性を訴えています。政権交代後も、政策の一貫性がないと国際社会の信頼を失ってしまいます。今後のキモとなる成長に必要な投資・ビジネスの誘致にも大きな障害となります。

マルコス政権では、幸い手がたいベテラン閣僚が要職に配置され、近しくお付き合いさせていただいていますが、彼らはこの点を理解しています。2023年予算法案の上院・下院の審議で運輸省分の政府原案が削減されそうな議論が判明した段階で、即座に、越川和彦・在フィリピン日本国大使のお力も得て、週末・早朝深夜も問わず、閣僚・議員等要路に直接働きかけ「そんなことではフィリピンは国際社会の信頼を失ってしまう」と訴え、その甲斐もあってか昨年のような事態はなんとか回避される見込みです。

 

 

編集部

 

JICAの活動内容を教えてください。

 

坂本氏

 

10年前にイラクを離任する際、首相代行も務められたガドバーン首相顧問会議議長が「巨額の資金協力もありがたかったが、何より国際社会のルールとは何か、プロジェクトマネジメントとは何か、契約管理・環境配慮等何に留意すべきか等、親身に教えてくれたことに心から感謝する」と言ってくれました。JICAの仕事はまさにこれで、自転車の補助輪をはずす過程に似ています。途上国政府が自立できるように、過保護になりすぎず、忠言諫言も含めて寄り添うことが重要なのです。

JICAの対比協力の3つの柱は、質の高い成長、人間の安全保障、ミンダナオ和平です。
質の高い成長の3要素は、持続性、強靭性と包摂性(住民参加型)です。
人間の安全保障の根本思想は、緒方貞子・元JICA理事長が提唱した日本発のコンセプト「No one left behind /誰一人として取り残さない」です。フィリピンではマニラと他のエリア等で大きな格差があり、不平等さを測る指標・ジニ係数はアジアの中で最低です。貧しい方々や遠隔地の方々の生計向上を図るサポートが求められています。

ミンダナオ和平も非常に重要で、フィリピンの治安面のイメージにも大きく影響します。現在は、ミンダナオは日本政府の渡航安全情報でも高い危険度が示されています。民間企業はそんなところには投資出来ません。観光もしかりです。ミンダナオ和平には、遅れている住民の方々の自立とフィリピン全体の安定と繁栄という重要な意味があります。鎖国して生きていけない日本にとっても重要です。武力の応酬では解決しないのは、世界のあちらこちらで経験しています。私がフィリピンに派遣されたのは、中東などでの経験を活かし、いかにJICAが接着剤になって安定と発展に貢献するか、そこが期待されているのだと思っていますし、注力します。

 

 

編集部

 

民間企業の方との連携は?

 

坂本氏

 

ドゥテルテ前大統領は式典の壇上でお会いした際に、「オー、JICAか、ありがとう、ありがとう、ありがとう」と三連発。マルコス大統領にも何回かお会いしていますが、毎回、とにかく握手握手、そして笑顔、感謝です。私はまだフィリピンに来て半年ですが、多くの要人が快く会ってくださるのは、日本の皆さんの真摯で、責任感があり、決めたことをきちんとやる、日本人の特性と仕事ぶりが評価されているからこそです。この日本人ならではの仕事ぶりが続けば、信頼関係は強化され、ビジネスであれ、観光であれ生活であれ、どんな分野でも必ずうまくいくと思います。一方で、今後もし日本企業の契約案件で事故・遅滞・問題等が生じれば、日本への見られ方は変わってしまうでしょうが•••。

フィリピンは今、日本政府もJICAも重視する、揺るぎない超重要国として、追い風が強く吹いています。越川大使はじめ、大使館の皆さんのサポートは心強いばかりです。民間ビジネスの後押し、支援は当然です。課題があればJICAもサポートします。ぜひ、日本ブランドの誇りを持って、オールジャパンで一丸となって取り組んでいきましょう!

 

 

 

プロフィール

福岡県生まれ、東京大学法学部卒業後、1989年海外経済協力基金(ОECF、現JICA)就職。北京大学留学、ОECF北京事務所駐在、国際協力銀行(JBⅠC)中東担当課長・国会担当課長、国際協力機構(JICA)報道課長・総務課長、外務省在イラク日本国大使館参事官等を経て、JICAイラク事務所長、インド事務所長、南アジア部長、中東・欧州部長、筑波大学客員教授(兼務)などを歴任、2022年3月から現職。

【座右の銘】
■ドアはノックしないと開かない ■愛嬌でカバー ■出過ぎた杭は打たれない
最近広めている造語は『5A・・・慌てず、焦らず、あきらめず、あてにせず、そして明るく』。途上国の仕事はうまくいかないことも多いがそんな時こそ5Aを忘れずにいたい。
 
 
 
ご参考)
 
ビジネス烈伝特別企画『信頼される日本クオリティの協力で 圧倒的に不足するフィリピンの鉄道インフラ整備を推進 選ばれる国・日本へ!』JICAフィリピン事務所 所長 坂本威午氏(2023年10月)はこちらから
 
JICAの情報はこちらから
 

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