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ビジネス烈伝 日本貿易振興機構(JETRO) マニラ事務所長 中村和生氏

ビジュアルなコンテンツの充実で、
日比間ビジネスをより活発に。

 

日本貿易振興機構(JETRO)
マニラ事務所長
中村和生氏

 

 

 

コロナ禍からの回復を受け、フィリピンのビジネスが活気を取り戻す中で、フィリピンへの新たな日系企業の進出や日本製品の輸出促進等のために、ジェトロ・マニラ事務所はどのような 活動に取り組んでいるのか?事務所長の中村氏にお話を伺った。

 

 

編集部

 

中村様がジェトロ・マニラの所長にとして赴任されるまでのご経歴をご教示ください。

 

中村氏

 

ジェトロに入ってから、ずっと、東京本部と海外事務所を行ったり来たりしています。本部では、管理部門が長かったかもしれませんね。海外駐在は、最初がニューヨーク、2回目と3回目がカナダのトロント、そして、今回4回目で初めて東南アジア・新興国駐在となり、2021年6月にフィリピン・マニラにやってきました。

 

 

編集部

 

フィリピンの印象はいかがでしょうか。

 

中村氏

 

赴任前は、過去のフィリピンの悪いイメージが先行して、安全な場所なんだろうか?トイレットペーパーは便器に流せるのだろうか?等、いろんなことを心配していました。(笑) 赴任してみると、マカティは大都会で生活に不便はあまり感じませんし、気候も1年を通して暖かです。加えて、フィリピンの人たちも陽気で人懐っこい感じで、とても好印象です。ただ、フィリピンは良い国なのですが、たまに、日本において、フィリピンに関連した犯罪絡みの報道が出てしまうのが、とても残念なところです。

 

 

編集部

 

フィリピンにおけるJETROの活動内容と2023年の取組みについて教えてください。

 

中村氏

 

ジェトロのフィリピンにおける事業は、大きく分けて、3つの柱で構成されています。1つ目の柱が、日本企業支援・進出日系企業支援、2つ目の柱が、日本の輸出促進、そして3つ目の柱が、全ての事業の基盤となる調査・情報提供です。

まず、1つ目の日本企業支援・進出日系企業支援では、フィリピンへの進出や日々のビジネスの悩み等に関する相談業務をはじめとして、日本企業とフィリピンのスタートアップ企業や財閥等とのオープンイノベーション創出を目的とするJ-Bridge事業、日本のスタートアップ企業の海外展開支援事業(グローバル・アクセラレーション・ハブ事業)等を行っています。

また、輸出促進事業においては、農林水産物・食品分野や環境・省エネ分野等におけるビジネス・マッチング(商談会開催)事業を行っています。
調査・情報提供事業においては、毎年、進出日系企業の皆様にもご協力いただいている海外進出日系企業実態調査をはじめ、投資コスト比較調査、地域分析レポート、ビジネス短信といった調査・情報提供事業を行っています。
2023年度においては、コロナ禍からの回復を受け、日比間のビジネスの往来も一層活発になってくると思いますので、これらの3つの事業をしっかりやっていきたいと思います。また、日本の企業の皆さんにフィリピンという国・市場を正しく知ってもらうための調査・情報発信にも力を入れたいと考えています。特に、フィリピンのビジネス環境やビジネスチャンスを紹介するビジュアルな動画コンテンツを増やしていきたいですね。冒頭でお話したとおり、残念ながら、フィリピンには、未だ悪いイメージも残っているように思いますので、ビジュアルな動画コンテンツを用意することで、そうした誤解を払拭し、もっともっと日比間のビジネスが活発になることを期待したいです。最近では、ジェトロのインターネット放送番組で「ごみを減らせ!フィリピンの生ごみを堆肥に」、「フィリピンへ和牛とコメを売り込め! ‐現地シェフが認めた品質‐」といった動画番組を作成・公開していますので、ぜひ、ご覧になってください。

https://www.jetro.go.jp/tvtop/tv/asia/ph/

 

 

編集部

 

新政権に関して、今後の日本、日系企業への影響をどのように読まれていますか。

 

中村氏

 

新政権にはとても期待していますね。もともとフィリピンは、日本にとって身近な存在であり、ビジネス面においても製造拠点や消費市場として高いポテンシャルを持っている国だと思っています。同じ島国で、日本からも近い。人口も1億を超えていて、若い人が多い。しかも、人件費は安く、英語が通じる。また、日本の自動車やバイクをはじめとして、日本の衣料品、日用品も幅広く浸透していますし、アニメ、日本食、日本への旅行も人気です。フィリピンは、2022年、7.6%の経済成長を遂げるとともに、マルコス政権は、2023~28年にかけて毎年6~8%の経済成長を達成することを目標に掲げています。国民の所得水準も向上し、消費市場も拡大することで、これからますます魅力的な国になると思います。

他方で、ジェトロが毎年実施している進出日系企業実態調査(2022年)では、進出日系企業から、ビジネス環境上のリスクとして、①税制・税務手続きの効率性、②法制度の整備状況、③行政手続きの効率性等が挙げられています。こうしたところを、新政権が、真摯、かつ、迅速に対応することで、日本企業に対し、ビジネス環境における安心感(Sense of Security)と予見可能な未来(Visibility)をしっかり見せることができれば、必ず良いビジネス・パートナーになり得ると考えています。そうしたことからも、新政権には期待したいですね。

 

 

編集部

 

中村様ご自身のことをお聞きします。これまでビジネスパーソンとしてご活躍される中で、特に印 象に残っている出来事やプロジェクトなどをご教示ください。

 

中村氏

 

北米に駐在していた頃の北米企業の日本への誘致プロジェクトは印象に残っていますね。将来の日本社会に必要なものを考えて、北米企業にアプローチし、日本のビジネス環境とビジネスチャンスを説明して日本への投資・進出を検討してもらうというプロジェクトです。当時担当した大型のプロジェクトは、スキーリゾート運営とアシステッド・リビング(ケア付き住宅)の2つでした。いずれも北米屈指のオペレーター企業にアプローチし、社長を含めた上層部に対してプレゼンテーションを行い、日本への投資・進出を検討してもらうというプロジェクトです。北米屈指の大企業ともなると、企業との接点が出来ても、社長にはそう簡単には会えません。アポイントを取るために、信頼関係を醸成し、幹部とミーティングを持つまでが、大変でしたね。企業にアプローチした時点で、日本進出は視野に入っていて、地球温暖化が進行する中、世界のどこであれば、雪が安定的に降るのか?日本であれば、東京からのアクセス時間がどの程度でなければならないのか?等々、検討は多岐にわたっていました。アシステッド・リビングの日本進出においては、将来にわたって人材の確保がどうできるのかが課題となりました。いずれのプロジェクトも、様々な理由から、日本への投資誘致・進出実現とはなりませんでしたが、とても印象に残ったプロジェクトでした。

 

 

編集部

 

好きな言葉と趣味を教えてください。

 

中村氏

 

好きな言葉は、If you can dream it, you can do it.です。何事にもチャレンジしたいと思っているからか、こんな言葉が好きです。

趣味というほど、凝っているわけではありませんが、フィリピンでは、週末、サイクリングを楽しんでいます。年末年始には、ラグナ湖畔を1周する自転車旅をしました。自転車が20インチの小径車であることと荷物をリュックに背負って走ったことから、少しキツかったですが、途中、グランピング・サイトに泊まるなどして、無事、約200キロを完走することが出来ました。旅先ではマカティでは見ることがない星空や一般家庭の庭先でレチョンが焼かれる光景も目にしました。また、最近では、スキューバ・ダイビングもはじめました。自転車、ダイビング、旅行等を通じて、フィリピンで新たな景色を見たり、体験したりすることを楽しみにしています。

 

サイクリングで宿泊したJala Jalaのグランピングサイトと200kmの走行に利用した自転車(中村さんご提供)

 

 

プロフィール

1990年4月、日本貿易振興会(ジェトロ)入会。2021年6月、日本貿易振興機構マニラ事務所長として着任。過去、海外では、ニューヨークとトロントに勤務。国内では、東京本部において対日投資部、農林水産・食品部、総務部等で幅広い業務を経験。直近では、ジェトロ内に新たに設置した日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)の立ち上げに従事するとともに、海外におけるプロモーションを通じた日本産の農林水産物・食品のブランド化に取り組んだ。

JETROに関する情報はこちらから:https://www.jetro.go.jp/philippines/

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