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第五十三回ビジネス烈伝 / KDDI Philippines 唐木 智生さん

システムインテグレーションで日系企業をサポートする

KDDI Philippines President
唐木 智生さん

1971年石川県生まれ東京都育ち。95年、国際電信電話(現KDDI)に入社。2000年から07年まで香港に駐在し日系企業向けの営業を担当。その後6年程日本で外資系の営業部門や国際サービスの販売支援をする。13年よりインドネシアで拠点長に就任。16年10月より現職。

〈心に残っている言葉〉
清水義範の『蕎麦ときしめん』です。パスティーシュと言われる架空の世界を書き続けるような小説です。大学の時に読んだのですが、自分も遊びで他人の文章をまねして書いたりしていたのです。オマージュになるものがあってそれに書き直すという作風が心に残っています。一時その作家にはまって何冊か読みました。

長年に渡り、国際畑を歩んでこられた唐木さん。来比1年弱で習慣の違いなどに戸惑いつつも多くのスタッフを取りまとめ、さらに過去の経験を活かし自ら現場へ出向くことも。現在は日系企業向けの移転、新設などのお手伝いを中心に、今後はより業務に踏み込んだサービスを展開していく予定だ。

 

 

編集部

 

KDDIに入社されたきっかけは?

 

唐木さん

 

小学校2年にまで遡るのですが、マンションの隣のお宅にいかにも立派な、恰幅のいい会社の役員クラスと思われるおじさんがいらっしゃいまして、毎朝、社有車で通勤されていました。その方が非常に子ども好きで、ある日私が友達と登校するときに車に乗って行きなさい、と声を掛けて頂き、乗せてもらったのです。その車には自動車電話があって、物珍しさもあり「おじさん、電話があるよ。使ってもいい?」といって自宅へ電話をさせてもらって「今、隣のおじさんの車に乗せてもらっている。」と。その通話に感動して通信ってすごいなと思いました。そこで友達も自宅に電話をかけたのですが、「今知らないおじさんの車に乗っている。」と(笑)。友人の母は私の隣宅のことを知らないですから、誘拐騒ぎで大変なことになりました。私は私で自動車電話に感銘を受けて、友達はお母さんにひどく怒られて、乗せてくれたおじさんも奥様に怒られるという(笑)。私も後で知ったのですが、その方はNECの副社長だったそうです。そんな経験から、漠然と通信は面白そうだという興味がありました。その後、就職活動していく中で初心に返って、95年はインターネットの黎明期でもありましたし、ハードウェアではなく、通信は人体に例えると神経系みたいなものですから、これはこれで絶対に必要なものだということからトライしてみようと思いました。文科系の学生としては珍しく、通信会社はほぼ全部受けました。NTTさん、日本テレコムさんも受けました。最終的にご縁があったというか、タイミングよく最初に内定をもらったのが当時の国際電信電話だったのでそこに入社することに決めました。

 

 

編集部

 

小学校にまで遡るというのはすごいですね

 

唐木さん

 

きっかけがつながったというのがあるのですが、そうはいいながらも自分は文科系に進みましたので、今でも若干理科系に関しては未練があります。業務経験は営業主体ではありますけれども、技術的な部分についても必要があり、自分で習得しました。

 

 

編集部

 

2000年から7年間香港に駐在されていたそうですが?

 

唐木さん

 

香港では営業部門に配属で、日系企業を担当していましたが、半分位、技術的なこともやっていて要は何でも屋です。その後帰国して外資系企業向けの営業を担当しました。予想以上に出張が多かったです。何故なら、当時、外資系企業の意思決定権が日本からなくなりつつありました。例えばアメリカの企業ですと契約をするのに、アメリカ本社の意思決定権者に許可をもらわないといけないのです。大きな案件になると、本国に行って交渉するということをしていました。特に私がいた2007年前後はちょうど多国籍企業の権限が本社に集中し始めた時期でして、1万円の決済も日本法人でできないという、それくらい厳しいお客様もいらっしゃいました。日本の担当者の方と話をした上で、決裁の前には本社に訪問した方がいいよ、という助言もあり、結果として出張が多くなっていました。当時の苦労としては、私が香港で英語を勉強したような状態でしたから、英語に若干の中国語訛りがありました。もちろん香港勤務時代にネイティブの方と話す機会もあったのですが、帰国後、アメリカ系企業を担当するようになり、アメリカ英語に慣れるまですごく時間がかかりました。そんな状況でしたので、英会話学校へ通って勉強していましたが、当時の先生には香港に駐在していたことを言っていなかったので、「何であなたは日本人なのにチャイニーズアクセントなの?」と不思議がられました。それくらい一般の日本人の発音と違いがあったようです。香港では日系企業中心の営業がメインでしたが、現地には大きな金融機関もあるので外資系企業とのお付き合いもありました。先方窓口は、当然のことながら香港人ですし、オーストラリアの人も多かったので、自分にとって難しい英語に触れる機会が多かったですが、メインに会話するのは香港人だったので、所謂ホングリッシュという訛りがうつったのだと思います。

 

 

編集部

 

インドネシアでは拠点長をされていたそうですね。ご自身で希望されたのですか?

 

唐木さん

 

香港から日本へ帰国後、再度、海外で働きたいという気持ちがありました。その中で自分の経験が生かせるとすれば次は東南アジアだろうなという感覚がありましたし、逆にアメリカ、欧州は性に合っていないので、希望していませんでした。私どものグローバルビジネスは4つのブロックに分かれていて、その中で東南アジアのブロックはシンガポールに統括拠点を置き、11カ国に亘っています。西はドバイ、東はシドニーで、オセアニアと中東も含んでいます。国別にここに行きたいと言う希望はあまり通るものではありませんし、どこへでも行きますと言っていた中で、インドネシアに決まりました。3年間のインドネシア勤務後、東南アジアブロックの中での異動は部署内異動と同じようなものですので、インドネシアからフィリピンへ直接異動となりました。私に限らず他にもシンガポールからベトナム、ベトナムからミャンマー、インドからタイへ異動という人もいます。

 

 

編集部

 

インドネシアからフィリピンというと英語が使えるのはメリットですよね?

 

唐木さん

 

インドネシアでは社内であれば幸いにも英語が通じましたが、日常生活では通じないので、片言のインドネシア語を覚えました。フィリピンに来たら皆英語が上手で、社員が使う英単語も高度で難しく、まだアジャストし切れていないです。英語のレベルは全く違いますね。文法的にも正しい英語を使っているので、自分の英語もブラッシュアップされていると思います。

 

 

編集部

 

東南アジアのインターネット速度はあまりよろしくないと思うのですが、インターネットに関しては伸びてくると思われますか?

 

唐木さん

 

フィリピンはインターネットサービスに関して、まだまだ潜在性があると思います。私が3年半前にインドネシアへ着任した時、初日に日本との速度差を体感しました。会社で支給されたiPhoneのiOSアップデートが必要で、何も考えずに始めたところ、パソコンにつなぐことが必要とのこと。そこで出たで完了予測が4時間くらいで本当にそれ位の時間が掛かりました。これは大変なところへ来たと感じました。インドネシアの通信速度も遅かったですが、残念ながらフィリピンでも同じような状況です。これは普及率が低く、競争もあまり無い為、通信事業者のインターネットサービスの値段が高く、ユーザーが契約している速度を抑制せざるを得ないことに起因しています。日本だと1Gbpsが数千円程で使えることもありますが、東南アジアでは数Mbpsでも月額数万円程の値段となります。高額なので法人利用であっても高速インターネットが普及しません。一方で、ユーザー視点では遅い環境でも徐々になれてしまい、不具合をあまり感じなくなってしまいます。インドネシアからフィリピンへ来た際、携帯電話でのインターネットはかなり速いと感じましたが、固定回線インターネットはインドネシアよりも遅く感じました。インターネット環境は、国力に影響されます。現時点では、フィリピンのインターネットユーザーが使いたいデータの多くはフィリピン外に存在しており、日本やアメリカなど他の国にあるわけです。データが国外のサーバーにあり、そこから持ってくるのにダウンロードしますよね。大雑把に言ってダウンロードの方向が多い国は相手国との通信回線コストを負担する傾向があります。フィリピンは海外の通信事業者に対して恐らく、使用料を多く支払う側にあると思います。そのコストが大きいと太い回線は持てないし、その結果、海外との接続にはボトルネックがあり、遅くなります。逆にこれからこの国がコンテンツを沢山持ち、通信上の情報発信側になると、だんだんと費用負担が減ってくるのではと思います。フィリピンへつなぎたい国がつなげてくるとなると立場が逆転してきます。色々な統計がありますが、東南アジア諸国の中でもフィリピンはまだ比較的固定インターネットが遅くて発展途上と言えます。下から数えてインドの次くらいがフィリピンで、これはインドネシアやベトナムよりも下で、タイやマレーシアはもっと上ですね。シンガポールですと日本と変わりありません。

 

 

編集部

 

KDDIのサービス概要について教えてください

 

唐木さん

 

通信を使う為に必要な機器、PCやサーバーなどのIT機器全般を販売して据え付けし、その後のメンテナンスをするという、システムインテグレーションが事業の中核です。もともとはIT分野中心だったのですが、お客様がフィリピンで事業展開する為に必要なインフラを丸ごと整えようと考え、内装までを提供しています。お客様の入居スペースを探し、測量し、オフィス設計図面を用意し、家具や什器なども含めてコーディネーションします。弊社にお任せいただければ全部用意いたしますという勢いです。日本のKDDIとは全然違うことをやっていると思われるかもしれません。ソリューション提供が我々の使命ですが、言葉の通り、課題解決ということで移設から新設、はたまた縮小まで含めて何でもお引き受けしています。フィリピンのオリジナリティとして一番特徴的なのは内装の部分で、デザイナーやPMをメンバーとして加えています。他の拠点も違った形で成長してきていまして、以前いたインドネシアではERPシステムをより深いところにまで力を入れてやっています。東南アジアブロックのグループ会社は移転に関して、丸ごとやりましょうという姿勢では共通しています。

 

 

編集部

 

このサービスが始まったのはいつ頃ですか?

 

唐木さん

 

2014年です。まだ新しいサービスですが、同時期に私がインドネシアにいたときに、やはりお客様のご移転を契機に何かやろうという動きはありました。

 

 

編集部

 

現在フィリピンには60名程の社員がいらっしゃるのですね。

 

唐木さん

 

この人数になるまでには歴史がありまして、フィリピンに限らず我々の海外現地法人は駐在員事務所でごく数名からスタートしています。日本と各国をつなげる通信事業者同士の調整が必要で、フィリピンですとPLDTやGlobeと交渉して日本と回線をつなぐためには何をしたら良いか、あとは事業者同士の折衝みたいなものが最初の任務でした。そうやっていくうちに日本のお客様が海外進出されてユーザーになる。そのときに何が必要かというと通信用の屋内配線や通信機器となります。そこで我々は現地法人化し、お客様の進出と通信の必要性に伴って仕事が来るというのが第2ステージとなります。規模も10人程になっていましたが、まだその段階というのは会社としても中継営業というか、日本のお客様がこちらに進出したときに日本で必要なものをフィリピンで購入されるという受身の状態でした。我々の業界用語でA-end、B-endというのですが、通信の始点をA-End、終点をB-Endと定義しています。日本発でフィリピンが終点なのでこの受身の営業スタイルを B-end営業という言い方をします。第3ステージはKDDとDDIとIDOが三社合併して以降、海外現地法人も自ら営業していこうというスタイルを目指しました。それから2013年半ばくらいでしょうか、B-end営業から脱却してA-endとして我々自身で開拓してお客様を増やそうというスタイルが定着しました。
日系通信事業者以外にいろいろな国からの海外現地法人がありますけれども、KDDIは最初の通信事業者の出張所から通信ユーザーに向けたサービス展開、次に現地にいらっしゃるお客様のお役に立つようにということで3つのステージで成長してきました。当地も4、5名でスタートし、今では60名ですから当初からすると全然規模が違います。私が着任してからも社員は5名増えています。日本の社内関係者と話していても60名社員がいるというと驚かれます。人数がいないとできないような仕事をしていますので、売上と比例して人も増えていくことになると思います。現状、第3ステージですが、今後何をしていくのかというのがまさに今我々の課題で、このステージでどれだけ盛り上げられるかというのが私の任務となります。

 

 

編集部

 

同業他社さんと比較しての強みとは?

 

唐木さん

 

当社は通信事業が中心にあり、その周辺ということで拡大していったという経緯があるので、お客様のITをやっていたところに留まらず、内装に拡大していったというのは割と自然な流れだったと思います。どこが起点になるかは企業の成り立ちによりそれぞれ違いますが、我々は通信を使う為の物理線から入り、そこからIT機器、と徐々に業務を拡大していった中で、何よりもお客様に本業に集中して頂き、我々がお客様に代わってやれることは何かないかと考えて解決していくという姿勢が今の形態に至ったのだと思います。海外に来られてオフィスを立ち上げる場合、初めは1、2名でいらっしゃいます。そこから徐々にスタッフを採用して立ち上げていく過程で、日本人から来られた駐在員の方がITから内装まで全部進めるというのは大変な事です。そこは我々が支援をしてお客様には本来の業務に専念してもらって、喜んでいただけたらと思っています。我々のスタート地点は通信事業であり、そこで必要となる商材は柔軟に考えておりますし、何でも自分たちで選択ができます。通信会社としての色はあるのですが、例えば機材を選ぶにあたっても特定の機器でなければダメということはなくて、お客様に第三者的な立場で提案ができる、ある種、しがらみがないのが我々の強みだと思っています。マルチベンダーという言い方がありますけれど、我々自身がモノを作っているわけではない為、最良のものを選んで、お客様に提案しています。場面によりますがコストとパフォーマンスを考慮し、松竹梅とメニューを作って提示しています。お客様が、将来的なことも考えて余力を持ってやりたいということならこちらの選択の方が良いですよ、とか今はコスト重視ということであれば抑制するなど。IT機器選択の経験が、内装分野でもどんな工法とするか、家具、壁紙、塗装などにおいても選別する上で生きました。ITソリューションは、課題解決ですのでコンサルテーションのような形で提供していく必要があり、そこで学んできたことが強みかとも思っております。

 

 

編集部

 

具体的にフィリピンでは、どのような活動をされていますか?

 

唐木さん

 

会社の方向性と実績との差分を分析することが多いのですが、目に見えるところではお客様を営業メンバーと一緒に回っています。あまり机に座っていると現場感がなくなってきますし、私の上長も営業畑の人間ですから、現場から得られる情報を大切にしています。トップセールスとまでは行きませんが、私がお客様を見つけ、きっかけを作って一緒に営業を担当するということも多いと思います。時に本当に担当者にもなります。これまでPCを扱うことが多かったものですから、自分でお客様のところに行って直したりすることありました。立場的に一つのプロジェクトを最後までやるというのは少なくなって、途中でサポートに入ることが多いです。自分としてもお客様を開拓して、納品して喜んでいただくという全プロセスには入っていませんので、そういった意味では若干地に足がつかないところもありまして、そういうことを言うと上長に「担当を持てば良いじゃないか。」と言われますので(笑)悩ましいところです。

 

 

編集部

 

現在、世界中にいくつの拠点がありますか?

 

唐木さん

 

28カ国62都市で103拠点あります。スタッフ数は概ね5700名です。東南アジアの中だけですと11カ国17都市あります。アメリカ、ヨーロッパ、東アジアの統括拠点はそれぞれアメリカ(NY)、イギリス(London)、中国(北京)にあります。隣の東アジアブロックは中国、韓国、台湾、香港がカバーエリアで、やや韓国だけ異なりますが、ブロックの中で共通性があります。しかしながら、東南アジアブロックは他と全然違い、各国が地理的に離れているのみならず制度、文化も全く国によって異なりますので、バラバラです。他のブロックとは大きく違うところですね。他のブロックは給料水準や人事制度もそれぞれ似通っているのですが、東南アジアではシンガポールとマレーシアとフィリピンとインドネシア、4つ比べただけでも何もかも違うのが異色です。9割がムスリムのインドネシアから8割がカトリックのフィリピンに来た時の違いたるやすごいですよ。

 

 

編集部

 

同じ東南アジアとはいえ、全く個性が違う国だったわけですね。

 

唐木さん

 

インドネシアは赤道の向こう側の国ですし、何となく日本とは常識が違うだろうな、ということは感覚的にわかります。フィリピンに比べるとインドネシア人はもの静かに見えます。着任当初はインドネシアモードでやっていたのですが、徐々に全然フィリピンとインドネシアは違うなと感じてきて目が覚めました。それからは自分なりにも接し方を含めて変えてみました。誇り高きキャラクターや経済的な面、行動パターンなど似通ったところもありますが、究極の場面で出方が違いますね。フィリピンの人はよく情熱的と言われますが、爆発したときはすごい。後先考えない発言も多いです。激高したときは今すぐにでも退職すると言って本当に辞めようとする。でも「とりあえず一日待とうよ」と言うと、翌日「ごめんなさい」といって戻ったりもする(笑)。その辺のカラッとした部分と燃え上がる速度にびっくりしました。振れ幅が大きいので、あまり怒らせたくないですね。もともと怒鳴り付けたりするタイプではないのですが、たまにきついことを言ったときの受け止め方が、インドネシアの人は比較的受け流すのですが、フィリピンではそうではないので、「こういう意図である」といったフォローアップが必須だと思っています。

 

 

編集部

 

フィリピンは世界の各拠点の中でどのような位置づけになりますか?

 

唐木さん

 

この国の経済が非常に良いということもあり、非常に期待値の高い拠点になっています。実際私の肌感覚で見てもインドネシアに比べたら元気があります。2013年にインドネシアに着任したときはその2年前くらいからインドネシアが成長している時期にあたっていて、13年はその勢いがあったものの14年から大統領が変わって停滞していました。その状況からフィリピンに来ていますので、今はものすごい勢いを感じます。人口も一億を越えていますし。我々としてはフィリピンになるべく多くの日系企業が来ていただいて、そこでお客様の成長とともに我々も研鑽しつつ進むというスタイルなので、フィリピン自体が元気であるというのは魅力的です。

 

編集部

 

売り上げも伸びているのですか?

 

唐木さん

 

数値的には伸びています。ただ先ほど申し上げましたステージ1、2、3とある中で、ステージ2の頃まで本格的な営業をやっていなかったと言えます。ステージ3になってようやく一人前の海外拠点としてやっていける状況となっていますから、今すごく伸びているというのは正直なところ過去やっていなかったことにも要因があると思っています。今、日系企業を主体としているのは、まず日系企業としてやれることをきちっとやっていこうと。そのマーケットを取りきるのは難しいかもしれませんが、ある程度のレベルに達したら今度は多国籍企業や、最もハードルの高いで政府案件や地場大手企業という流れになっていくとは思います。

 

編集部

 

フィリピンで事業を行う上での問題点は?

 

唐木さん

 

こちらに来て1年弱ということで、私もまだ分かりきっていないところもあるのですが、東南アジアは全般的に外資規制が厳しい中で、フィリピンは比較的オープンな方だと捉えています。現政権も親日度が高いですし、かなり外資の受け入れ体制があると思っています。我々としては特に喫緊の問題点とは感じていませんが、フィリピンの会計や税務などの制度は非常に煩雑だと思います。すぐにインドネシアと比較しますが、手続き面で厳しく、署名主義というのもありますし、形式的な部分でまだ効率化が図れていないと思います。また、税務当局が強過ぎて、経理システムや請求書フォーマットまで許可制の国はなかなか他にないと思います。オートメーションをはかろうとしたときにシステム化というところが支障になってしまうので思った以上に手強いです。この国はまだまだ制度的に変わっていかないといけない部分が多いと思います。

 

編集部

 

納期がある中で、時間的な制限をクリアしていくにはどうされていますか?

 

唐木さん

 

これは現地現物を押さえていくことだと思っています。場面によっては、本当に進捗しているかを自分の目で確かめに行くのと、人伝手に確認するのでは違う結果となります。何か遅れた時は、担当者、あるいは相手組織の人のスキルを見極めながら、何を根拠にして今、誰が何をしているのかということを突き詰めていくと実態がわかってきます。本当に重要な局面であれば、自分もそういった確認に加わります。相手からすればとても疑い深いと思われるかもしれません。フィリピンにて気が付いたことは、組織内での横連携や、次工程に業務を引き継ぐ際のフォローが特に苦手なように見受けられます。所謂、申し送りや引き継ぎですが、相手が政府組織であれ通信事業者であれ、複数部門にまたがっている全部をトレースします。愚直な方法ですが、トレースすることで解決されることが多いと思います。これは通信事業での経験から来ていると思います。通信サービスは回線という物理的な線を敷設して、その線を通信機器に接続しないと使えないです。通信ができない場合は、区間を区切り、今はどこまでうまくいっているか?ということを把握して、次に進みます。これを業務プロセス上で応用するだけですので、フィリピンに限らず万国共通の方法です。
経験的にプロセスが停滞する場面にて、相手方が上長の決裁待ちというコメントが一番危ないです。これは実質ほとんど動いていないことが多いです。決裁待ちと言われると、そうか、と思うかも知れませんが、誰の決裁をいつまでに待つのか?他に方法はないのか?
などを必ず確認します。社内でも自分の外出中に私の決裁待ち待ちと言って止まることがありますが、自分が不在であれば決裁にも掛かっていない訳で、代理決裁者が居る場合には進めるように指示しています。なお、本当に決裁者が不在である場合もあるので、大事な局面では何よりも先にキーパーソンの予定を把握するようにしています。一つの行程をクリアすることで大きく時間短縮することも可能ですが、そこには執念が要ると思っています。

 

編集部

 

フィリピン国内で今後どのようなサービスを展開されていく予定ですか

 

唐木さん

 

ITと内装でお客様のオフィスを立ち上げていくというのは、今後も継続してやっていく予定です。これからはお客様の本来業務の分野で、より効率化を図るという貢献に努めたいと思っています。例えば製造事業のお客様を対象にIoTを活用して、製造過程でのデータ分析と共に業務への貢献ができないか模索しようと思っています。オフィス内装、ITなど、お客様が事業をする上での重要なインフラはこれまでも取り組んでいますが、事業のど真ん中での勝負はまだまだ少ないと感じています。生産システムを使う為に必要なインターネット回線の開設などはやっていますが、生産性を上げるというような事業の本質的なところまではやっていませんので挑戦したいと思っています。本業の改善を促すという本質的な分野ですから、これまで以上に競争も厳しいと思っています。お客様がどんなことに気を遣ってやっているか、事業の中身を理解していないと改善できる部分を出せないので勉強していかないとダメです。内装を始めた時よりもチャレンジングなことだと思います。それからこれは私個人が考えているレベルですが、当地の通信事業には興味があります。この国においては、規制的にも自前で全部やるというのはまずあり得ませんので、優良なパートナーを見つけなければなりません。本当に通信事業をやっていこうということになると物理的な線も引かなければならない。当地の同業の方に拠ればバランガイから工事許可を得るのがすごく大変で、GlobeやSmartですらアンテナ増設に苦労していると。それを聞いたら外資にはとても厳しい環境であると思うと同時にやれたら面白そうだと、痛感しています。ITと内装でお客様のオフィスを立ち上げていくというのは、今後も継続してやっていく予定です。これからはお客様の本来業務の分野で、より効率化を図るという貢献に努めたいと思っています。例えば製造事業のお客様を対象にIoTを活用して、製造過程でのデータ分析と共に業務への貢献ができないか模索しようと思っています。オフィス内装、ITなど、お客様が事業をする上での重要なインフラはこれまでも取り組んでいますが、事業のど真ん中での勝負はまだまだ少ないと感じています。生産システムを使う為に必要なインターネット回線の開設などはやっていますが、生産性を上げるというような事業の本質的なところまではやっていませんので挑戦したいと思っています。本業の改善を促すという本質的な分野ですから、これまで以上に競争も厳しいと思っています。お客様がどんなことに気を遣ってやっているか、事業の中身を理解していないと改善できる部分を出せないので勉強していかないとダメです。内装を始めた時よりもチャレンジングなことだと思います。それからこれは私個人が考えているレベルですが、当地の通信事業には興味があります。この国においては、規制的にも自前で全部やるというのはまずあり得ませんので、優良なパートナーを見つけなければなりません。本当に通信事業をやっていこうということになると物理的な線も引かなければならない。当地の同業の方に拠ればバランガイから工事許可を得るのがすごく大変で、GlobeやSmartですらアンテナ増設に苦労していると。それを聞いたら外資にはとても厳しい環境であると思うと同時にやれたら面白そうだと、痛感しています。

 

編集部

 

他国で通信事業をされている国はありますか?

 

唐木さん

 

我々自身が提供主体ではありませんが、KDDIとしては実はフィリピンでもサービスを提供しています。日本のKDDIと当地のPLDTとGlobeがネットワークを相互に接続しています。現地法人自身が提供者であるというのは欧米等の先進国で市場が開放されている国です。東南アジアブロックで設備があるのはシンガポールとなります。

 

編集部

 

最後に唐木さんご自身についてお聞かせ下さい。休日の過ごし方は?

 

唐木さん

 

これまでの海外赴任は全て家族帯同で来ており、今回もそうなのですが、週末は家族とレストラン開拓みたいなことをしています。ちょっと残念なことに食に関しては、香港やインドネシアと比べるとフィリピンはアメリカ的なところがあるので選択の幅がないような気がしますし、何を探したらいいのか戸惑いますね。フィリピン料理にはまだあまり挑戦していないのですが、インドネシア料理はナシゴレンなど日本人の口に合うものが多かったですし、彼らは味覚が鋭敏なので何でもおいしかったです。それと趣味はゴルフです。実は幼少の頃は父親が接待ゴルフで土曜日はいつもいなかったので、ゴルフなんてやるものか!と思っていました。ところが海外駐在で、香港はまだゴルフの料金も高いですしやる人もそれほどいなかったのでよかったのですが、インドネシアで拠点長になってゴルフをやらないなんてありえませんよと後輩に怒られまして(笑)、2015年くらいから始めました。スコアが伸び悩んでいまして、100を切れるか若手社員と勝負していたのですがあっという間に先を越されました。40歳を越えてからスポーツを始めるのはきついです。なかなか伸びなくてゴルフにばかり精を出しているので家族から顰蹙を買っています(笑)。

 

編集部

 

今後の展望や夢は?

 

唐木さん

 

仕事の短期的な面では、フィリピンが好調な状況を捉えて会社をもっと大きくしていきたいですね。コミットするものではないですが今の2倍くらいにしたいです。長い目で見たら私個人の話ですけれど、香港、インドネシア、フィリピンと来て、社内外とも、日本人、現地人といろいろな友人ができているのでフィリピンでも一生の友人になるような人を作っていきたいですね。今ここに働いてくれているフィリピン人のメンバーがそうなるのではと思いますが、将来的には彼らがこの会社を支えたり、また別の世界で成功したりしたときに、仕事の話ができたりつながっていられたらいいなと思います。そんな人とのつながりが海外では大事ですから。FBの登場で今でも10年前の香港の友人と繋がることができますから。インドネシアにいる間にはインドネシアのスタッフとはあえて繋がらなかったのですが、今ここに来てからFBでつながると愚痴を言われたり、戻ってこいなどと言われています(笑)。

 

編集部

 

座右の銘は?

 

唐木さん

 

よく自分で言っているのは「常識を見つめ直せ」ということです。本当は「常識を疑え」というのがぴったり来るのでしょうが、思い込みをなくしてそこに活路を見出していこうということを考えています。些細なことですが、みんながこうだと言っているものを何でだろう?と考えてみて、実はこの方が良いのでは?ということは多々ありますし、昔からこうやっていたから、ということに対してあまり納得しない性分ですので、もう一度考え直してみようと言っています。まだ若輩者ですし、座右の銘でぴったりくる言葉が見つからないので、自分の考えを紹介しました。
座右の銘ということで考えますと、少し趣向が違うかも知れませんが、「神は細部に宿る」という言葉があって、ディテールがあってこそ作品の出来が良くなると建築分野での言葉なのですが、私が勝手に解釈して、ITでは細部において間違えてしまうと使えなくなるのでディテールにこだわらなくてはならず、仕事の精度を上げるには細かなところを含めてきちっとやっていかなければならないという意味合いで捉えています。ただ、「神」という言葉は宗教によっては使い方を気を付けねばなりません。特に一神教の国では「神」を安易に使わないようにしています。

 

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