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フィリピンで大人気の韓流、韓国コスメは マーケットを席巻【フィリピンビジネス情報 by JETRO 第14回】

  フィリピンのビジネスに関した様々な情報をJETROの吉田さんに寄稿していただきます。

フィリピンで韓国大衆文化(以降、「韓流」)の流行は2000年代に起こりました。韓流ブームはドラマを皮切りに、音楽、ファッション、コスメなど様々な分野に拡大しました。また、韓国企業は自動車、電子機器など、従来に日系企業が得意としてきた分野で高い競争力を有するようになりました。今回はフィリピンでの韓流ブームの誕生と、韓流に関連し、フィリピン人から高い支持を得る韓国コスメの人気について説明します。

日本貿易振興機構(ジェトロ)マニラ /
Japan External Trade Organization (JETRO) Manila
吉田 暁彦さん Mr. Akihiko Yoshida

 

2015年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ名古屋を経て、2020年9月より現職。フィリピン経済についての調査・情報発信と、日系スタートアップに対するフィリピンへの展開支援を主に担当。

 

 

 

<韓流ブーム成立の経緯>

 

韓流ブームが最初に起こったのは1990年代の中国とされています。その後、韓流は台湾、日本といった東アジアの国々に広がっていきました。韓流ブームの火付け役となったのは韓国のトレンディードラマで、その後、徐々にポピュラーソング、映画が流行していきました。

フィリピンでは2003年にドラマ「秋の童話」がテレビで放映され、大きな社会的インパクトを生み出しました。このドラマがフィリピンで大流行した理由として、女優・俳優が魅力的であったことに加え、ストーリー展開が当時のフィリピン人にとって斬新であったことが指摘されています。秋の童話では、主人公が最後に亡くなるというストーリー展開であり、概ねハッピーエンドで終わるフィリ ピン・ドラマを観てきたフィリピン人にとっては目新しいものでした。2004年には同じく四季シリーズの1つである「冬のソナタ」が公開され、大ヒットし、韓流ブースの到来を確かなものとしました。以後、フィリピンでは様々な韓国ドラマが放映されるようになりました。一方、現在の韓流ブームの中核をなしている音楽については、当初、ドラマほどの支持はありませんでした。その理由として、KPOPの多くが韓国語であり、フィリピン人にとっては歌詞の意味を理解するのが難しかったことが考えられます。しかし、近年ではインターネット上でKPOPスターのプロモーションが盛んにおこなわれていることもあり、フィリピン人もKPOPを頻繁に聞くようになっています。

折しも、1990年代以降のパソコン普及と重なり、韓流ブームによってテレビやインターネットにアクセスできるあらゆる人々が韓国文化に容易に触れることができるようになりました。このことにより、韓流に魅了された人々は単にエンターテイメントとして韓流を消費するのではなく、同国の文化や韓国人に関連するあらゆるものに関心を有するようになりました。

 

 

<フィリピン人の韓国文化に対する思い>

 

 

韓流ブーム発生当時、フィリピン人の中でもブームは一過性との見解もありました。フィリピンでは過去にJPOPの流行がありましたが、残念ながらブームは短期的に終了したとの見方があります。しかし、韓流ブームは2000年代から今にいたるまで持続し、その勢いはとどまる気配がありません。韓流ブームがフィリピンで定着した要因として、いくつかの説があります。


1つの説として、フィリピンと韓国が文化的・歴史的に共通点を有しているとの見方があります。例えば、歴史の観点でみると、フィリピンと韓国はともに日本の植民地支配を受け、米国が日本からの政治的な独立を助けたという見解があります。また、フィリピン・韓国両国には歴史上で深刻な対立が発生したことがなく、それによってフィリピン人が韓国文化を円滑に受容できたこと。また、家族や自身が帰属する共同体を大切にし、年長者を敬う文化を両国は共通して持っており、フィリピン人から見た際に韓国人に対して親近感を抱くきっかけとなっているとする識者もいます。

 

 

<フィリピン化粧品マーケットを席巻する韓国コスメ>

 

 

米国商務省国際貿易局によると、フィリピンでの化粧品需要は、若年層が健康的な外観に対して意識が高まっていることもあり、増加を続けています。フィリピンの人口構成にて女性は54.6%を占めています。フィリピン人女性について、年齢層はおおよそ19歳から64歳までで、大半は労働に従事しています。女性たちはフィリピンの経済成長などによる、可処分所得の増加を受け、化粧品に対してより多く支出するようになっています。

成長する化粧品市場の中で、韓国コスメは高い競争力を有しています。図はフィリピンの韓国と日本からの化粧品輸入額推移を示しています。2013年は韓国からの輸入額が107万5,000ドルに対して、日本からの輸入額は131万1,000ドルと日本が韓国を上っています。しかし、2014年には韓国が追い抜き、以降、韓国と日本との差は大きく拡大しています。2021年時点で、フィリピンの化粧品輸入額上位国は、1位タイ、2位韓国、3位中国に対して、日本は10位となっています。

 

図:フィリピンの韓国と日本からの化粧品輸入額推移(単位:1,000ドル)

出所:グローバル・トレード・アトラスからジェトロ作成。

 

日系ブランドが優位性を有するとされるスキンケア市場では、国別でみると、米国ブランドのシェアが35%と最も高いですが、次いで韓国34%、日本20%となります。スキンケア市場においても韓国ブランドは大きな競争力を有しています。なお、米国商務省国際貿易局によると、フィリピンのスキンケア市場で存在感を有するブランドとして、ジョンソン・アンド・ジョンソン(米国)、エスティローダー(米国)、資生堂(日本)、ユニリーバ(英国)、ラネージュ(韓国)、イニスフリー(韓国)を挙げています。

 

韓国コスメの人気の理由として、韓流ブームの影響がしばし指摘されます。韓国コスメは積極的にKPOPスターを広告に起用し、韓流スターに憧れる女性たちの購買意欲を掻き立てています。フィリピン化粧品学会(PSCS)は、韓国コスメは特に「綺麗で白い肌」を手に入れたいフィリピン人の消費者から大きな支持を得ていると分析します(「CBN News」2013年9月18日付)。また、PSCSは韓国コスメについて、多くの消費者から高品質で優れた効能を持つハイエンド商品であり、パッケージも魅力的であると認識されているとコメントしました。

 

韓国コスメは欧米系ブランドに比較して、実際にフィリピン人の肌に適しているとの見解もあります。皮膚科医および美容外科医マイカ・スラテンセック博士は韓国コスメの人気の理由について、フィリピン人の繊細かつオイリーな肌にマッチしていると話します(「GMA News」2021年4月30日付)。マイカ博士によると、韓国コスメは皮膚に油を蓄積させず、洗いやすいうえに、着けやすい特徴があるとコメントしました。

 

写真:韓国ブランドの店舗

撮影:ジェトロ。

 

参照文献

Jay-Ar M. Igno and Marie Cielo E. Cenidoza. Beyond the “Fad”: Understanding Hallyu in the Philippines, 2016.

 

JETRO サイト:
https://www.jetro.go.jp/philippines/

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