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フィリピンでの従業員降格について【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第十九回】

『従業員の降格はできますか?』

前回からはいろいろな事例に基づき、従業員を解雇することができるのかどうかについてお話させていただいております(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回もまた別の事例の場合についてお話しいたします。


今月の事例

Q.弊社のマネージャーが、業務時間内に私用で社用車を利用したことが明らかになりました。解雇はしませんが、配置転換の上、降格させたいと思うのですが、可能ですか?

 

 

<降格等はどのような場合に可能か?>


    フィリピンの労働法制上、降格はdemotionと呼ばれており、異動の結果、地位、ランク又は給与が下がることを総称しています。雇用主はビジネス上の必要性を満たすために、適宜従業員を異動させる権限がありますが、かかる異動は地位の降格や給料の減少を伴うものであってはなりません。そして、降格等は雇用主が恣意的に行うことは認められておらず、懲戒解雇と同様に、あくまで懲戒処分の一類型として認められる可能性があるに過ぎません。したがって、降格等を行うに際しては、適式な手続(due process)を経た上で行うことが必要であり、この手続を経ずして降格等が行われた場合には退職強要(constructive dismissal)があったと認定されることになります。
 それでは、具体的にはどのような適式な手続が必要となるのでしょうか。この点について、裁判例は、懲戒解雇を行う場合と同様に、2回の通知を行うことが必要としています。すなわち、降格等が相当であるという事由が発生した場合、まず会社は従業員に対して釈明を求める通知を行い、従業員が直接弁明をする機会を与えます。そして、これをもとに再度雇用主の側で検討を行い、弁明を聞いたとしてもやはり降格等が相当であると判断した場合には、その旨を2回目の通知として従業員に対して通知することになります。
 なお、降格等を通知する際、従業員からはこれを受諾する旨の合意書を取り付けることが好ましいでしょう。

 

<降格等が許される事由とは?>


  次に、どのような事情があれば降格等が許されるのかについて検討します。この点につきましては、先ほど触れましたように、降格等も懲戒解雇を含む懲戒処分の一つですので、懲戒解雇が許される事由と同じような事由がある必要があります。本件のように、従業員に対する信頼感が喪失された場合も懲戒処分が可能ですが、かかる信頼感を喪失させるに至った事情はあくまで業務に関連していることが必要となり、それ以外の事情、たとえば誠実でないことなどを懲戒処分の理由とすることはできません。 
本件のように、業務時間内に私用で社用車を利用したということは、業務に関連したということはできないと思われますので、このような事情に基づく降格は認められないということになるでしょう。この場合に許される罰則としては、より緩やかな罰則、たとえば、出勤停止などが妥当と考えられます。
 なお、本件のモデルとなった裁判例のケースでは、会社においてもっともプレステージな職場環境であった研究所において食品研究者の職にあった従業員が、業務時間内に私用のために社用車を利用したことが発覚しました。社用車の無許可利用が発覚した場合、第1回目の違反には15日間の出勤停止にする旨の社則があったにもかかわらず、会社が何らのヒアリング等も行わずに同人を食品加工を行う部署で食品加工を行うワーカーに配置転換をしたことから争いとなりました。判決では従業員の主張が認められ、かかる降格を伴う配置転換は退職強制に当たり許されないと判断されています。

結論

A.降格は懲戒処分の一種ですので、適式な手続を経た上で行う必要があります。また、降格を伴う配置転換を行うためには、業務に関連した信頼の喪失が必要ですので、本件の場合には降格させることはできないでしょう。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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