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出社できない従業員の解雇【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第六十五回】

『出社できない従業員を解雇できますか?』


今月の事例

Q.工場の操業を再開し、出社命令を出しましたが、交通手段がないため出社できない社員がいます。この社員を解雇することはできますか?また、出社しない従業員の穴埋めのためにGCQの期間中のみ臨時に従業員を雇い入れることはできますか?
 
 

<出社しない社員を解雇できるか?>
 
まず、原則として、GCQ下においても平常時と変わらず、使用者は労働法の規定に基づいて解雇を行うことは可能です。設問の場合ですが、労働法は使用者が労働者を解雇できる場合としては、懲戒解雇、整理解雇及び病気を理由とする解雇を定めるのみですので、交通手段がないために出社しない社員を使用者が懲戒解雇することができるかということになります。労働法は労働者が故意に使用者の命令に反することが懲戒事由になり得ることを定めていますが、命令違反が懲戒事由になるためには使用者の命令が合理的なものである必要があります。労働者がGCQのために出社するための交通手段がないにもかかわらず、出社を命じることについては合理性がないと判断されることになりますので、出社できない従業員を懲戒解雇することはできないでしょう。もっとも、解雇はできませんが、出社しない以上、No work, no payの原則により、使用者はその間の給与を支払う義務はありません。
 
 

<臨時に雇用することはできるか?>
 
操業を開始し、従業員に対して出社命令を出したにもかかわらず、交通手段がないために出社できる従業員が限られるため、事業に支障を来した場合、使用者としてはその穴を埋めるために従業員を新たに雇用することが考えられます。もっとも、使用者としては今後さらに制限が緩和され、従来の従業員が出社できるようになった場合の人員過剰が気になると思われます。
従来の従業員が出社できるようになった後も穴埋めのために雇用した従業員を雇用し続けなければならない事態を避けるため、使用者は期間を定めた雇用契約(例えば、3ヶ月といった期間を明示した契約や、従来の従業員が復帰するまでの有期契約とすること)またはプロジェクト雇用契約(あくまで特定のプロジェクトのためのみの雇用契約)をすることにより、そのような不安を払拭することが可能です。
 
 
 
<操業を再開したが、人員過剰となった場合>
 
設問のケースではありませんが、操業を再開したものの、業務の量が従来ほどまで回復しないために人員過剰となってしまった場合、使用者は人員過剰(Redundancy)を理由として整理解雇をすることが可能です。整理解雇を行おうとする場合、一ヶ月前までにDOLEおよび本人に対する通知を行い、就労期間に対応する退職金を支払うことが必要となります。
 
 
 
 
 

結論

A.交通手段がないために出社できない従業員を解雇することはできません。もっとも、出社できない従業員の代替要員として臨時に従業員を雇用することは可能です。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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