『株主の権利』
今月の事例
<引受株主と払込済株主>
日本では株式を引き受けた株主は株式の代金を会社に対して払い込まない限り株主とはみなされませんが、フィリピンでは引き受けた株式の全額を直ちに支払う必要はないこととされています。そこで、払い込み済みの株式と払い込みをしていない株式の間で取り扱いが異なるのかどうかにつき解説させて頂きます。
まずフィリピンにおいては株式引受がどのようになされるかですが、株主となる者と会社との間で引受契約を締結し、その条件に従って株式代金の支払いがなされます。引受契約において一括で代金全額を支払うと合意されている場合は全額の支払いが必要になりますが、分割での支払いで合意がなされている場合はそれに従って払い込みをすればよいということになります(なお、2019年の改正前の会社法においては、会社設立時には授権株式の25%以上が引き受けられ、そのうち25%以上につき払い込みを必要とする規定が置かれていましたが、改正会社法ではその規定は廃止されました。)。なお、分割支払いの期日を定めるのではなく、会社から支払いの要請があった場合に払い込みを行うという条項を置く場合もあります。
以上をもとに、株式引受後全額の払い込みを行っを有すると明確に規定しています(会社法第71条)。そのため、引き受け済みの株主は払い込みをしていない部分も含めて株主が有する権利を行使することができます。
フィリピン会社法上、株主が行使できる権利の主なものとしては、株主総会に出席すること、取締役の選任及び解任につき議決権を行使すること、配当を受けること、解散時に残余財産の配分を受けること等が挙げられ、これらの権利を払い込みをしていない部分の株式を含めて行使することができます。
なお、株券の発行を請求できるのは全額の払い込みを行った株主のみと規定されています(会社法第63条)。そして、株式譲渡のためには株券が発行されていることが必要となりますので、払い込みが完了していない株主は、まず払い込みを完了してからでないと株式を譲渡することはできません。
次に、引受契約において支払いを行う時期が規定されているにもかかわらず払い込みがなされなかった場合や会社から払い込みの要請があったにもかかわらず払い込みがなされなかった場合にはどうなるのでしょうか。このような場合、未払込の株式は公売の対象となり、最高値で入札した購入希望者が購入することができます。公売でも購入希望者が出なかった株式については、会社が自己株として所有することとなります。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。
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