『フィリピンでの逮捕』
今月の事例
日本では被疑者に警察などが接触せずにいきなり逮捕する場合がありますが(この場合、警察などが裁判所に逮捕状を請求して裁判所が逮捕状を発行し、その逮捕状を執行するという形での逮捕となります)、フィリピンでも日本と同様に被疑者がいきなり逮捕されるということはあるのでしょうか。本稿ではフィリピンでの逮捕の手続について解説させて頂きます。
フィリピンの刑事手続では、一部の軽微な犯罪を除いては、原則的に予備審問手続(Preliminary Investigation)を経て検察官が起訴をし、その後、裁判所が逮捕状(Warrant of Arrest)を発行するという形になります。この予備審問手続は、犯罪の被害者が検察官に対して犯罪があったことを証明する証拠等を揃えて犯罪の告発を行い、これを受理した検察官が行う手続であり、その手続において被疑者は検察官から告発された犯罪事実についての説明を行う機会が与えられます。そして、告発者と被疑者の双方から提出された主張および証拠に基づき検察官が犯罪があったと疑うに足りる事情があるかどうかを判断し、犯罪があったと疑うに足りる事情があると判断した場合、すべての情報を裁判所に提出します(これが日本でいう起訴に当たります)。そして、裁判所も同様に犯罪があったと疑うに足り、裁判を行うべきであると判断した場合、裁判を開始することとして逮捕状を発行し、所轄の警察に逮捕状の執行を命じることになります。
このように、一般的には上記の予備審問手続を経ずに事件が起訴されることはなく、予備審問手続では被疑者に弁明の機会が与えられていますので、そのような手続の連絡もなく、いきなり逮捕状が発行され逮捕されるということはないと言えます。ですので、逮捕を臭わせる害悪の告知を受けた場合であっても、いきなり逮捕されることはないということを覚えておかれればよいかと思います。
なお、予備審問手続を経て逮捕状が発行され、実際に逮捕されるとしても、逮捕状にはほとんどの場合で保釈金の金額が記載されていますので、その金額を納めれば保釈されることになっています。
他方、フィリピンでも逮捕状なくして逮捕が可能な場合はあります。これは、日本でも現行犯逮捕の場合は逮捕状なくして逮捕が可能であるのと同じです。フィリピンでは、(a)面前で犯罪が行われている場合、(b)犯罪が行われ、容疑者が犯罪を犯したと信じるに足りる事情がある場合、(c)受刑者が逃亡中である場合には無令状での逮捕ができるとされています。よって、ここでも現に犯罪を犯していないにもかかわらず、いきなり警察が来て令状なくして逮捕が可能となる場合はありません。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。
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