フィリピン南部のミンダナオ島ラナオ・デル・スル州マラウィで23日、イスラム系武装勢力「マウテ・グループ」と政府軍が衝突。それを受けモスクワを訪問していたドゥテルテ大統領は、治安維持のためミンダナオ島全域に60日間の戒厳令を布告しました。
帰国後の会見でドゥテルテ大統領は「今回の戒厳令は1972年にマルコス大統領が出したものと全く同じものであるが、(ISに忠誠を誓う武装勢力の排除へ向けて)より厳しく対応する。」と述べました。
とは言え、この戒厳令とは実際どのようなものなのでしょうか? また、戒厳令が敷かれた場合フィリピンで暮らす人々の生活はどのように変わるのでしょうか?
戒厳令(Martial Law)とは?
戒厳令が敷かれると、政府軍は一定期間、対象の地域を統制下に置き令状なしで身柄の拘束などができることになります。限定された地域に戒厳令が敷かれたのは、2009年のマギンダナオ州で起こった虐殺事件時にアロヨ元大統領による発令に続き、今回が2回目となります。
1972年の戒厳令
初めてフィリピン全土に戒厳令が敷かれたのは1972年のマルコス大統領政権時です。この期間、軍の勢力が強まり、政権に批判的な議員や一般市民を令状なしで逮捕、独裁色が強まり強権的な政治が行われました。
1987年フィリピン憲法下の戒厳令はどうなる?
現在、戒厳令が敷かれた場合は1987年に制定されたフィリピン共和国憲法に基づいて、実施されることとなります。戒厳令に関する第7条の第18節を抜粋します。
・大統領はフィリピン軍全体の最高指揮官である。
・大統領は、侵略や暴動により治安の悪化が懸念される場合、人身保護令状(ヘイビアス・コーパス:令状のない逮捕や違法な拘留に対するセーフガード)特権の停止や、フィリピン全土もしくは一部で戒厳令を発令できる。
・大統領は発令後48時間以内に議会にその内容を直接または書面にて報告し、議会で審議する。半数以上の投票があれば議会はその発令を却下または停止することができる。
・大統領が人身保護令状特権の停止または戒厳令の期間延長を求めた場合、議会はその要求を審議し決定する。
・最高裁判所はその内容が適切であるか吟味する。
戒厳令で出来ないこと
・憲法を停止する。
・民事裁判所または立法裁判所の権限を差し換える。
・軍事裁判に立法権を与える。
・(侵略や暴動で起訴された人以外の)人身保護令状特権を自動的に停止させる。
戒厳令下で懸念されることとは?
戒厳令が発令されるとその地域は政府軍の統制下に直接置かれます。これにより懸念されることとはどんなことでしょうか?
・令状のない拘束や逮捕による人権侵害
・個人の自由が損なわれ独裁主義が横行する
・権力の乱用
モスクワを訪問していたドゥテルテ大統領は、マラウィ襲撃のニュースを聞き、予定を切り上げ帰国。フィリピン軍最高司令官として軍の統制に努めます。軍によると、現在、ミンダナオ地域は治安が保たれている状態とのこと。軍は今回の襲撃や戒厳令に関するSNSへのむやみな投稿は国民の不安を煽ったり、誤解を招く恐れがあるのでなるべく控えてほしいと国民に呼びかけています。
また、戒厳令をビサヤ地方にも拡大することを示唆しています。
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