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第九回ビジネス烈伝/トヨタモーターフィリピン 後藤雄二さん
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<第9回>トヨタモーターフィリピンのマーケティング部門を統括する後藤雄二さん

トヨタモーターフィリピンのマーケティング部門を統括する後藤雄二さん

後藤雄二さん

【プロフィール】
 
●トヨタモーターフィリピン 副社長
 
 後藤雄二さん
 
1958年生まれ。東京出身。2男1女の父。
海外の企画・営業に合わせて18年携わった後
2008年から初の海外赴任先であるフィリピンに駐在。

 

フィリピンの経済好調が叫ばれていますが、なかなか実態をつかみにくい印象もあります。そんな中、具体的な数字で成長を示しているのが自動車産業。今回は、業界トップに立つト ヨタモーターフィリピンのマーケティング部門を統括する後藤雄二さんにお話を伺いました
 
★ここ数年、フィリピンで自動車の売れ行きが好調なようですね
 
「アジア通貨危機の前、業界全体で年間16万台あった販売台数は10万台を割り込む水準まで落ち込み、長く低迷していました。2007年にようやく10万台の壁を破るも、その後は08年12万台、09年13万台と緩やかな伸びにとどまっていました。しかし10年、大統領選挙景気と台風オンドイによる浸水被害 で廃車となった車の買い替え需要もあり、16万台を突破。1996年に記録した過去最高を更新しました。昨年は東日本大震災とタイ洪水の影響でわずかに減少しましたが16万台を維持。今年も需要の伸びは堅調で、全体で18万台超が見込まれています。さらに来年も選挙イヤーで、車は売れますよ」
 
★好調の要因は何でしょうか
 
「私が赴任した2008年当時は、人口に比べて自動車の販売台数が少なく、車を持っているのはごく一部と人と感じました。そのころに比べて、足下で中間層の数が増えています。加えて、オートローンの充実も要因の1つと考えられます。コールセンターに代表されるBPO産業の急成長により若者の就労口が増えたことで 家族の購買力が上昇。世帯収入が年間50万ペソあればローンを組めます。もちろん焦げ付きも少なからず発生していますが、こうした流れは、成長の過程でほかの国も経験してきたことです」
 
★この国は市場拡大のポテンシャルありとされながら、長くそのままの状況が続いてきていましたが
 
「そうですね。ただ最近は、成長が具現化してきていると思います。特にアキノ政権になった2010年以降、景気が安定して伸びてきていると感じます」
 
★アジア通貨危機後に拡大した周辺国からの後れを取り戻せますか
 
「国民1人当たりのGDPがUSD2,500に達した時に、その国のモータリゼーションが活性化すると言われています。タイでは2000年初頭、インドネシアでは2~3年前にそうした現象が起きました。国際通貨基金(IMF)の試算では、フィリピンは現在USD2,200で、3年後にUSD2,500に達するといわれていま す」
 
★そうした追い風の中、トヨタが打つ次の一手は
 
「販売網の一層の拡充を進めます。現在31店あるディラーの数を、来年半ばまでに43店に増やす計画です。新設するのは、首都圏よりルソン北部を中心とした地方部です。一方、トヨタ車の供給が不足しているという指摘が一部にあります。お客様にご迷惑をおかけしている部分もあると思いますが、事実です。原因は、 昨年のタイの洪水被害の影響は短期的なもので、むしろ需要の急激な伸びに供給が追い付いていないというのが実態です」
 
★日本メーカーを抜いて業界3位の地位を確保するなど、躍進する韓国車を脅威と考えますか
 
「かつてに比べ、品質が良くなってきているとは思います。さらに低価格も魅力になっていると思います。それでもトヨタは車両価格ではなく、耐久性やアフターサービス体制を含め、長い目で見るとお得ですよ、という『コストオブオーナーシップ』を消費者に訴えかけていきたいと思っています」

トヨタ社内

★ところで海外駐在はフィリピンが初めてとか
 
「幼い少年のころからトヨタ車が好きで、念願かなってトヨタに入社した際、海外それも発展途上国の市場に魅力を感じ希望を出しました。その結果、中近東を中心に約18年国際海外事業に携わってきましたが、駐在ではなく出張ベースでした。2008年にフィリピンに渡航してきたのが初めての海外赴任となります」
 
★フィリピン駐在を命じられた時の反応は

「正直なところ、当時は悪い印象が強く、嫌でした(笑)。家族の反応も同じです。それでも、家族は一緒に、という考えから、大学生の長男を除いて、妻と長女、次男を連れてこちらに来ました。しかし来てみると、考えていたのとは状況が全然違い、高い電気代を除けば、これまでに不便を感じたことはなく暮らしいいです。 嫌がっていた家族も今ではここでの生活を楽しんでいます。もっとも、駐在員の立場で恵まれているからというのはありますが」
 
★フィリピンに連れてきたお子さん2人に期待する部分はありますか
 
「英語力の習得とは別に、子どもたちには若いころに世界を見て異なる文化に触れてほしいという願いがありましたが、2人とも吸収が早く、適応してくれています。長女はこちらに来てから、実際に海外で働きたいと言い出しました。ただこの点には複雑な気持ちがあります。きっかけを与えたのは私ですが、もし遠く離れた国で 働くようなことになったら、やはりさびしいものです(苦笑)」
 
★休日はどのように過ごしていますか
 
「ゴルフのほかに、毎週日曜日、日本人中学生相手に野球のコーチをしています。家族サービスとはもっぱら土曜日の食事で勘弁してもらっています外食を楽しんでいます」
 
★もう一度、仕事に話を戻します。社内でのローカル社員との関係はいかがですか
 
「ローカル社員だから、ということで区別はしません。この国のやり方は尊重します。叱る時は、その人ではなく、物事がうまく運ばない原因を叱るようにしています。ただ一方で、叱ってもニコニコして全然こたえていないようで、脱力感を感じるところはあります。それでも私が甘いのか、同僚や部下を憎めないんです。昼食も進んで 、彼らと一緒に一食100ペソあまりのフィリピン料理を食べにいきます。お気に入りは、ご飯にアドボです」
 
★あらためまして、国内業界トップの地位を揺るぎないものにしているトヨタの方向性を聞かせて下さい
 
「国内で生産を行うメーカーとして販売台数の増加は非常に重要ですので、今後も既存市場で業界トップの維持に努めます。ただ、抑えるべきところは抑えた上で、新たな分野にも進出していきます。先ごろ市場投入したスポーツ車『86』はその一例です」
 
★国の安定成長を支える製造業が育ちにくいと言われるフィリピンですが、メーカーとしてのご意見は
 
「自動車産業の成長には、投資優遇策などその国の政府の支援が不可欠です。これまでは自工会(CAMPI)を通じた働きかけを行ってきましたが、販売会社が含まれていることから、業界としての意見の集約が難しい一面がありました。2009年には国内生産を行っている日系メーカーだけの団体(PASATPACCI) を立ち上げ、ここから政府に意見を上げるようにしています。こちらもアキノ政権になって以降、貿易産業省が意見をよく聞いてくれるようにはなりました。ただし、これも長い取り組みになると覚悟はしています」
 
★ASEAN自由貿易協定(AFTA)の影響で、家電業界では国内生産をやめ、製品の輸入販売に移行する動きが見られましたが
 
「自動車は設備投資が大きいため家電業界のようなわけにはいきませんが、実際のところ、フォードが年内で国内工場の閉鎖を決めるなど、採算ベースでは難しい状況もあります。それでもトヨタは、フィリピン社会に貢献する意味でも、完成車を輸入して売るだけではなく国内生産を続けることは大事と考えています」

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後藤雄二さん

【好きな書籍】
 
「炎熱商人」深田祐介
マニラに駐在していた日本人商社マンが殺害された実話に基づく話。登場人物と実在の日本人がつながったり、ディーラーの視察で訪れた地方の話が出てきたりと興味深く、読み重ねています。
 
【好きな言葉】
 
「努力に勝る天才はなし」
社会人になってから努力が足りなかったと思っていて、インターネットの普及で手軽に調べ物ができるようになったこともありますが、知識欲は年を重ねるごとに強まっています。知識を増やして、仕事をこれまで以上にこなし、私生活では人間を大きくしたい。やはり子どもには、努力している父の背中を見てほしいのです。
&nbsp
「10年たって振り返れ」
これは誰かの言葉ではなく、自分が子どもに言い聞かせている言葉です。今、抱えている問題も、10年後に振り返ってみれば大したことではないから、深刻になりすぎる必要はない、ということを伝えています。

 

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