ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  ビジネス烈伝 IPS, Inc. 代表取締役社長 InfiniVAN Inc. 代表取締役社長 宮下 幸治 氏

ビジネス烈伝 IPS, Inc. 代表取締役社長 InfiniVAN Inc. 代表取締役社長 宮下 幸治 氏

フィリピン国内海底ケーブルの完成で
通信事業は品質やプランの競争へ

 

IPS, Inc.代表取締役社長
(InfiniVAN, Inc. chairman)
宮下 幸治 氏

 

 

 

フィリピン投資委員会(BOI)に高い評価を得ているフィリピン国内海底ケーブル建設の立役者である株式会社アイ・ピー・エス 宮下社長は、通信事業だけではなくメディカル・ヘルスケア分野などフィリピンで果敢にビジネスを展開している。今回の海底ケーブルの背景と意義、そしてフィリピンでのビジネスについてお聞きした。

 

 

編集部

 

フィリピン国内海底ケーブルネットワーク(PDSCN:以下海底ケーブル)の概要は?

 

宮下氏

 

ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶ、フィリピン国内を縦貫する回線で、グローブ テレコム(GLOBE)とイースタンテレコミュ二ケーションズ フィリピン(EASTERN)との共同事業です。工事は24区間、ケーブルの長さは約2400㎞。フィリピンの人口のカバー率は96%。2023年4月に海底部分の建設が完了、12月には全国140カ所の中継局網も完成し、既存大手通信事業者と遜色のないネットワークとなりました。ハイパースケール事業者、CATV事業者、地方の通信事業者など、幅広い顧客層に対するサービス展開が全国規模で自社のネットワークを使い提供が可能になります。

 

 

編集部

 

フィリピンでの通信業者としての活動の経緯を教えてください。

 

宮下氏

 

我々がフィリピンで通信事業に関わり始めたのは2012年ごろからです。当時、フィリピンの通信事業は外資規制(22年撤廃)があり、大手事業者による寡占状態が続いていました。資本は外資資本が40%まで、民族資本は60%以上というルールがあったため、高いノウハウをもつ外資企業は進出を断念し、既存の通信事業者へのマイナー出資参加のみあるだけでした。最初、我々はフィリピンのローカル企業と提携してビジネスがやれないかと模索していたのですが、フィリピンの通信事業者は排他的な傾向があって自分たちはがっちり顧客を押さえ、その一方で公共性の高いサービスであるにもかかわらず極端に高い価格で売る、そんなビジネス慣習がありました。大手通信会社に出向いて、「もう少し安い価格で提供すればより多くの人が利用してビジネスも大きくなりますよ」と語りかけてみたものの、ぜんぜん相手にされませんでした(笑)。

フィリピンにおいて通信事業を行うためにはライセンスの取得が必要でした。そこで、厳しい経営環境に置かれていた現地の通信事業者に働きかけ、国内回線のライセンス供与を受けることで事業を始めることができました。そしてまずCATV事業者へ回線の販売を始めたのです。中堅や中小のCATV事業者に積極的に販売し、これがとても歓迎されました。ライセンス供与を受けた現地通信事業者は、もともとマニラ首都圏だけを事業の対象にしていましたので地方のCATV事業者にサービスを拡大するには自分たちで通信業務の免許を取らなくてはいけません。フィリピンの通信事業者の権利(フランチャイズ)は議員立法になっており、下院、上院の審議を経て、大統領が許可し発布されるという流れになっています。これはハードルが高いだろうと思われました。

その一方で当時アキノ政権下ではコールセンターやBPO(Business Process Outsourcing)に力を入れてフィリピンの成長を促進しようという流れがありました。要となる通信が大手の寡占状態で遅くて料金も高い、なんとかしなければという空気がありましたが、外資規制とフィリピンの状態がよく解らないこともあり、外資の参入が進んでいませんでした。

ただ我々は駄目でも失うものはないし、通信事業者の免許を申請してみようと(笑)。CATV事業者や様々な方に協力いただいた結果、議員立法が成立、2016年、アイ・ピー・エスの子会社でフィリピン現地法人インフィニバン(InfiniVAN, Inc.)の設立にこぎつけました。60%の民族資本は我々のお客様である様々なCATV事業者のオーナーに入ってもらい、フィリピンでの通信事業の土壌ができました。我々は首都圏では法人のお客様向けにできるだけ安価に回線を提供し、地域では、地域に根差したCATV事業者と組み、国際回線につながる安定したインフラを整備していきたいと考えています。

 

 

編集部

 

今回の海底ケーブル建設の発端は?また一番苦慮されたのは?

 

宮下氏

 

ビサヤ諸島やミンダナオ島で通信事業を行うためには海を渡らないといけません。従来は大手事業者のネットワークを借りていましたが、頻繁に回線が切れる問題に悩まされていました。そのため、2年くらい前から、安定した自前の通信インフラを作りたいと思うようになりました。日本の場合、西と東、両方向から回線をアプローチして、どちらかの回線が落ちても自動的に代替できるようなシステムを当たり前のように持っていますが、フィリピンの場合はそれがなかったんですよ。

海底ケーブルの回線が切れる要因はいくつかありますが、その要因の一つが海流です。フィリピンのある地点の海流は非常に速く複雑に入り組んでおり、そのような場所にケーブルを敷設するとすぐに切れてしまうことになります。いったんケーブルが切れると修繕のための機材を積んだ船を出すため、その経費は1日7万ドルにも及びます。海底ケーブル敷設には、しっかりとした海流や海底の調査が必要となります。ケーブルがどのルートで敷設されるのが一番安定するか事前に綿密に調べる作業がとても重要になるのです。そこで高い技術力と経験値をもつ日本の海底ケーブルの敷設会社に依頼することにしました。もちろん、費用は高くつきますが、もともと日本の技術に興味を示していたGLOBE、EASTERNも共同建設に賛同いただき、このプロジェクトが本格的に動くことになったのです

また、高い安定性のネットワークの構築を第一優先としたため、複数ルートで海をわたるネットワークを採用しています。たとえ二つ切れても他のルートからその地域に行くように、着岸する陸揚局(海底ケーブルから陸上に信号を揚げる施設)と陸揚局は全部つながるよう設計しています。今回の海底ケーブルの完成は、フィリピンのネットワークを大きく改善するでしょう。

今回のもう一つの特徴は3社共同事業だったこともあり陸揚局には違う会社が参入してオペレーションをしてもよい、オープンゲートウェイ契約になっています。お客様も通信会社も自分のところで運営が可能になり、競争が発生してサービスが向上し、料金がどんどん下がっていくはずです。当たり前のインフラは独占状態であってはいけないです。料金が下がれば収入は減りますが、競争するべきは品質や売り方、プランです。パッケージをしっかり作って提案していくのが本来のあるべき姿なのだと考えています。

(詳細版、近日up予定です。)

 

【プロフィール】
1965年生まれ、和歌山育ち。大学在学中の85年株式会社リクルート入社、91年アイ・ピー・エス起業(18年東証マザーズ上場、現在東証プライム市場上場)。99年フィリピンインターナショナルマーケティングサービス(現KEYSQUARE, INC.)設立。2010年品川レーシック&エステティックス・センター、16年InfiniVAN, Inc. 設立。現在株式会社アイ・ピー・エス代表取締役とインフィニバン会長を兼務。

 

【座右の銘】
「悩むんだったらまずやってみよう」。殆どのビジネスは最初に絵を描いたようにはなかなか上手くいかない。ビジネスを軌道に乗せるには、その絵を描くのは2割、予期せぬ課題が出てきてそれを解決するには8割のエネルギーが必要ですね。まずはやってみることが大事である。社員にいつも言っています。

 

 

フィリピン インターネット、光ファイバー、通信、プロバイダー、インフラ INFINIVAN.Inc / インフィニヴァン (primer.ph)

広告

ビジネス烈伝 前回のコラム

マニラに事務所を構え今年で70周年、アヤラコーポレーションと提携してから今年で50年。節目の年を迎えた三菱商事マニラ支店だが、グローバルに活躍する商事会社として、フィリピンの市場をどう見て、どう業務を推進して行こうとしているのか。2023年4月に支店長に就任された石川氏にお話を伺った。

新着コラム

2024年3月に駐フィリピン大使として着任し、精力的に活動を続ける遠藤大使。就任から約8か月が経過した今、彼の目にフィリピンの現在と未来はどのように映っているのか。着任前に外務省国際協力局長としてODAを担当していた経験を持つ遠藤大使に、フィリピンの投資環境や二国間関係の現状、今後の協力体制についてお話を伺った。また、今回200号を迎えた本誌と読者の皆様へのメッセージもいただいた。
世界で義足が必要な人々がどのくらいいるか、ご存じだろうか?世界中には高額なために、そして義肢装具士の不足のためなどで義足が利用できない人が非常に多い。その人々に日本のテクノロジーを用いて、精工な義足を提供しようと、まずフィリピンで邁進しているのがinstalimb(インスタリム)だ。そのビジョンは?展望は?事業統括の足立氏に伺った。
フィリピンにある日本食レストランブランドの中で、最も多くのエリアで店舗を保有しているのはどこかご存じですか?答えは「BOTEJYU®(ぼてちゅう®)」。今年の8月にフィリピンで8周年を迎え、現在89店舗を展開していますが、その躍進の秘訣は?そして、目指すところは?BOTEJYU®グループの栗田氏と、フィリピン側のパートナーであり、フィリピンを代表するエンターテイメント企業VIVA Communication Inc. Chairman Vicente Del Rosario, Jr さんにお話を伺いました。
商船三井のフィリピンにおける100%出資現地法人2社、EcoMOLInc.(エコモル)とMOLBulkShipping Philippines(MOLバルクシッピングフィリピン)をMOL Enterprise (Philippines) Inc.(MOLエンタープライズ)にこの4月に事業統合、高い経済成長が見込まれるフィリピンでさらなる躍進を目指す。その背景と目指すところは? エコモルの設立に携わり、運航船のオペレーション効率化を推進して来た横橋 啓一郎氏にお話しを伺った。
ゼロから誰もが知る商品に! フィリピンで乳酸菌シロタ株の普及に邁進   Yakult Philippines, Inc. フィリピンヤクルト 上級副社...続きを読む
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you
ページトップに戻る