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フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第九回
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『フィリピンの刑事裁判はどう進行するの?』

 前回はフィリピンの刑事手続のうち、犯罪が起こって起訴がされるまでについてお話させていただきました(前回のフィリピンあらかると に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回は起訴がされた後にどう進行するのかについてお話しさせていただきます。

逮捕及び保釈

    検察官により裁判所に起訴状が提出され、裁判官が犯罪の嫌疑があると判断した場合には裁判官は逮捕状を発行します。逮捕状が発行されると、警察官が被告人を逮捕します。

フィリピンの逮捕状には、保釈金の金額が記載されています。すなわち、裁判官は逮捕状を発行するに当たり、事前に被告人に保釈を認めるかどうか、また、保釈を認める場合の保釈金の金額を決めているということになります。 *ちなみに、日本においては逮捕自体が起訴前に行われることが一般的であり、保釈は起訴後でなければなされず、保釈の申請は被告人のほうから裁判所に行う必要があり、実際に保釈されることは限定的ということが現状となっています。保釈金の支払方法としては、現金の納付が一般的ですが、身元保証人による保証の差し入れという方法もあります。

*被告人は、死刑、20年超40年以下の有期懲役または終身刑が定められている犯罪以外の犯罪で起訴されており、しかも証拠が確実な場合を除いては、保釈される権利があります。

罪状認否

    ここから実際の裁判手続に入りますが、最初の手続は罪状認否(Arraignment)と呼ばれる手続になります。この手続は公開の法廷で裁判官、検察官及び被告人が出席して行うものであり、裁判官等が起訴状を朗読し、被告人に対して起訴事実に対する認否を尋ねます。被告人は、裁判所からの質問に対し、有罪を認めることも、無罪であると答弁することも可能です。仮に有罪を認めた場合、裁判所は原則的に検察官が起訴の際に裁判所に提出した記録をもとに被告人の刑罰を決定します。一方、被告人が無罪を主張した場合、手続は公判準備手続に進みます。

なお、罪状認否手続の時に被告人が弁護人を付けていない場合、裁判官は被告人に対して弁護人が必要かどうかを尋ねます。被告人が弁護人が必要であると答えた場合、裁判官は一般的には罪状認否の行われている法廷内にいる弁護士(同じ法廷でいくつもの事件の裁判が行われるため、別の事件のために法廷内にいる弁護士)または公設弁護士事務所の弁護士の中から弁護人を選任します。ちなみに、裁判所の指名により弁護人となる場合の弁護士報酬はきわめて低いため、別の事件のために裁判所に来ている弁護士は罪状認否手続き中は法廷から出ることもあります。

調停手続
    フィリピンでは、刑事裁判の際には刑事責任だけでなく、民事責任についてもあわせて検討されます。

罪状認否手続が行われ、被告人が有罪を認めた場合以外は公判準備手続に進むことになりますが、その前に一度裁判所が主導して民事責任について裁判所主導で和解の可能性を話し合う手続が行われ、この手続には被告人及び犯罪の被害者の双方が出席します。ただし、民事責任について和解が成立したとしても、刑事責任については別途責任追及がなされることになり、和解したという事実が刑事裁判の量刑に影響することはありません。
公判準備手続

    調停手続の後には、公判準備手続と呼ばれる手続が行われます。この公判準備手続にはで行われることは、司法取引(罪状認否手続のときに無罪の答弁を行ったとしても、ここで改めて有罪の答弁をすることもできますし、当初起訴された犯罪より軽い犯罪についての有罪の答弁をすることで、より軽い刑罰を受けることに合意することも可能です)や、犯罪事実の確認、公判で提出予定の証拠の開示などが行われます。この手続が終わると、裁判所は公判の期日を指定します。

公判手続

    公判手続では、まずは検察側が犯罪事実の立証を証拠書類の取調べや証人等の尋問によって行い、続いて被告人側が反対尋問など、検察側が提出した証拠に対して反論します。検察側の立証がすべて終わった段階で被告人側が検察官の提出した証拠によっては犯罪事実が立証されていないと考える場合、被告人は裁判所に対して事件の早期終結を求める申し立て(demurrer)を行います。裁判所がこれを認める場合には被告人は無罪となり、裁判は終了します。しかし、裁判所が検察官の立証が犯罪事実の立証に十分であると考える場合には被告人の申し立てを却下し、続いて被告人側の提出した証拠を調べる手続が行われます。

双方の立証が完了したところで、裁判所は検察側と被告人側に最終の主張書面を提出させ、これらも参考にして判決を言い渡します。裁判所の判決に対して不服がある場合、検察官は控訴することができませんが、被告人は控訴することができます。ただし、被告人は上級審によって、当初の判決よりも重い刑罰となる可能性もあることに注意が必要です。

執行猶予

    日本では懲役3年以下の刑罰である場合には最高5年の執行猶予がつくことがありますが、フィリピンでは懲役6年以下の判決であった場合(ちなみに、フィリピンでは1.2万ペソ以上の財物の窃盗でも懲役は6年超になります)には、刑期と同じだけの期間を執行猶予期間とすることが可能です。ただし、執行猶予が付くためには条件があり、被告人が初犯であること、また、公判準備手続の終了時までに有罪の答弁を行っていること(公判段階でも有罪の答弁を行うことにより執行猶予が認められることもありますが、これを認めるかどうかは裁判所の裁量になります)が必要になります。被告人は判決が出た後に執行猶予の申請を行い、これにより、被告人は控訴する権利を失います。

このように、フィリピンの刑事裁判手続は日本と異なる点も多々ありますので、ご注意ください。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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