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日本に住んでいたフィリピン国籍の母の相続【フィリピン法律あらかると第百四回】

『日本に住んでいたフィリピン国籍の母の相続』


今月の事例

Q.私は日本人父とフィリピン人母の子で、日本国籍のみを持っており、他に妹がいます。父は既に他界しており、このたび日本に住んでいる母が亡くなりました。母はフィリピンに不動産を持っていますが、どのような手続が必要ですか?
 
 
設例のように被相続人の国籍(フィリピン)と相続人の国籍(日本)が異なる場合、どの国の法律に基づいて相続を判断するかという問題がまず生じます。この点、日本法によりますと、被相続人の本国法によるとされていますので(法の適用に関 する通則法36条)、フィリピン法が適用されることとなります。他方、フィリピン法に照らしてもフィリピン法の適用があることとされていますので(フィリピン民法16条)、設問のケースではフィリピン法が適用されます。フィリピン法と日本法とでは、法定相続人の相続分などに違いがありますが、今回は法定相続人が被相続人の子供2名であると仮定して手続面についてご説明させていただきます。

もし、お母様が遺言書を残していれば、その遺言書に従った遺産分割を行うことになりますが、遺言書がない場合にフィリピンの資産を遺産分割するためには、①法定相続人が遺産分割協議書(Extra Judicial Settlement;EJS)を作成するか、②裁判所に遺産分割の申し立てを行うことが必要となります。遺産分割協議書による遺産分割は、被相続人が債務を有していないことが条件となっていますので、もし、債務がある場合には原則的にはこの方法は取ることができず、裁判所に遺産分割の申し立てを行うことが必要となります。遺産分割協議書による遺産分割が可能な場合、相続税の申告を行い、遺産分割協議書の登録許可書をBIRから取得するとともに、日刊紙上に公告を週1回三週連続で行うことが必要です。かかる手続きが完了しますと、遺産分割協議書に基づく不動産の名義変更が可能となります。なお、遺産分割協議書は日本国内で作成することも可能ですが、アポスティーユを取得する必要があります。

次に、遺産分割協議書によることができない場合は裁判所に遺産分割の申し立てを行うことになりますが、この場合は、申し立てを地方裁判所(RTC)に対して行います。申し立て自体は弁護士を通じて日本に居ながらにして行うことは可能ですが、審理の際裁判所に要請された場合はフィリピンに赴く必要があります。

なお、遺産分割協議書の方法によるにせよ、裁判所での遺産分割にせよ、相続人はフィリピンの不動産の相続に際してはフィリピンにおいて相続税を支払う必要があります。他方、日本国籍を有する相続人はフィリピンの不動産を含む、全ての相続財産を対象として相続税を支払う必要があります。そのため、フィリピンの不動産について二重課税の状態が発生しますが、フィリピンで課税された部分については日本で相続税を計算するときに税額控除の対象となります。

また、日本国内でフィリピン国籍のお母様が亡くなった場合はその事実を30日以内にフィリピン大使館に報告することが必要です。
 
 

結論

A.可能です。但し、婚姻前に公証を受けた上で登録する必要があります。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



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