JETROフィリピンは24日、新型コロナワクチンについての情報を発表しました。
フィリピン政府は12月16日、中国の製薬会社大手シノバック・バイオテックと、ロシアのガマレヤ疫学・微生物学研究センターの新型コロナウイルスのワクチンを早ければ2021年3月に調達する見込みと発表した。これら2つのワクチンは、フィリピンが早期に調達できるワクチンとなりそうだ。
今回の発表に先立ち、政府は11月27日、フィリピンの複数の大手民間企業の資金協力を得て、260万回分のワクチンを調達する契約を製薬会社大手アストラゼネカ(英国)と締結したと発表していた。政府は同社のワクチンを2021年5~6月ごろに調達し、約150万人が恩恵を受けるとする。
その他、政府は製薬会社大手ファイザー(米国)やジョンソン・エンド・ジョンソン(米国)、ノババックス(米国)などからの調達も合わせて計6,000万回分のワクチンを調達する予定だ。うち、2021年第1四半期(1~3月)に入手できるワクチンは少量で、第2四半期(4~6月)以降に本格的な調達を進める見通し。政府は3~5年以内に約6,000万~7,000万人に対してワクチン接種を行う意向を示している。
感染拡大防止に最前線で対応している医療関係者や政府関係者の接種を優先する。2021年度予算のうちワクチン調達に約725億ペソ(約1,595億円、1ペソ=約2.2円)を割り当てる予定。また、アジア開発銀行(ADB)や世界銀行からも資金調達を行う。
ワクチン調達に当たり、国内での貯蔵・輸送から消費までの過程で低温状態を維持するコールドチェーン物流の構築が急務となっている。米国系の大手不動産会社ジョーンズ・ラング・ラサールの調査レポート「ジ・エボリューション・オブ・フィリピン・ロジスティックス」によると、新型コロナウイルス感染拡大を受け、Eコマースによる食料輸送需要が急激に増大したため、物流施設が大きく不足する事態が発生している。新型コロナウイルスのワクチンが導入されることで、コールドチェーン物流の深刻な供給不足が発生する可能性がある。フィリピン保健省(DOH)は10月、ワクチン調達に向け、物流施設を増設するよう表明していた。
(吉田暁彦)