2019年1月4日
インドネシア系コンビニ、電子煙草、電動三輪車等普及
株式会社TNC(本社:東京都新宿区)は、アセアン主要7カ国の2018年における、トレンドを調査するため、同社のサービスである「TNCアジアトレンドラボ」で収集している情報や、各国の現地ボードメンバーを対象に自主調査を実施した。
これらの定性情報を元に各国上位5位を選定し、分析を行いレポートとして無料公開を行った。ウェブサイトでは各ランキングの詳細と総括を公開している。レポートのダウンロードURLは http://tnc-trend.jp/pdf/trendranking2018_A3-181212f-web.pdfであり、フィリピンの動向は以下のとおり(発表原文をほぼそのまま掲載)。
1位.ネットフリックスにフィリピン発のインディーズ映画採用
アメリカの映像ストリーミング配信大手・Netflixが2018年、フィリピン映画を初めてネット配信に採用した。国の天然記念物に指定されているフィリピンワシを誤って猟銃で殺した少女とその父親の軌跡を描いたミカエル・レッド監督の『BIRDSHOT』を3月26日から、またドゥテルテ政権が進める麻薬撲滅戦争の実態を描いたブリランテ・メンドーサ監督の『AMO』を4月9日からそれぞれ配信した。
『BIRDSHOT』は第90回米アカデミー賞の外国映画部門のフィリピン参加作品でもあり、レッド監督は2018年3月の大阪アジアン映画祭でも別の作品で「来るべき才能賞」を受賞している。メンドーサ監督はカンヌ映画祭で最優秀監督賞にも輝いたフィリピンインディーズ映画界の巨匠だ。これらインディーズ映画が大手ネット配信でも紹介されるようになったことは、作り手にとってさらなる追い風となっている。
<トレンドの背景>
情報通信業界の調査会社によると、フィリピンのインターネット利用者は6,700万人と世界12位につけている他、FacebookなどのSNS利用時間は、1日当たりほぼ4時間と世界でもトップに位置している。また、映像ストリーミング配信サービス・Netflixの利用者もネット利用者の6割に達すると言われており、今や多くのフィリピン人が映画館だけでなくネットでの視聴を重視している。
このNetflixにフィリピンのインディーズ映画が初めて相次ぎ配信されたことは、国内の関係者にとって大いなる追い風になっているようだ。フィリピンインディーズ映画は、映画祭「シネマラヤ」から徐々に世に広まるようになり、メンドーサ監督のカンヌ映画祭受賞などを経て海外でも認知度が高まってきている。海外の視聴者を意識してか、最近では英語字幕が必ず入るようになってきた。今回のストリーミング配信でさらにインディーズ映画の普及が進むだろう。
2位.インドネシア系コンビニが急拡大
フィリピンの小売業界で最も伸びているとされるコンビニ。台湾系ホールディングスのフィリピン・セブン社のセブンイレブンが先行し、日系のミニストップが追うという2強時代がしばらく続いたが、最近では日系のファミリーマートやインドネシア系のアルファマートも参入し、地場コンビニも含めてコンビニ戦国時代の様相を帯びてきた。
中でもアルファマートはフィリピンのモール運営最大手の「シューマート(SM)」グループと提携して2014年にフィリピンに進出。モール内に直接出店する方式で特に最近1年間で首都圏で急激に店舗数を増やしている。2018年4月には首都圏だけで400店に達し、今後は地方にも出店すると発表。インドネシアのチェーンを交えたコンビニ戦争が今後、首都圏から地方にも波及することは確実だ。
<トレンドの背景>
フィリピンの小売業界は、各住宅地にある「サリサリストア」と呼ばれる小規模雑貨店や公設市場、スーパーマーケット、モールなどが従来から住み分けされている。しかし、現在最も伸びているのはコンビニ。特に首都圏で増えているのがインドネシア系のアルファマートだ。
同社はモール国内最大手のSMグループと提携し、モール館内に直接出店することから得られる集客の相乗効果や冷蔵・冷凍食品を置くなど、他のコンビニチェーンにはないサービスを展開し、顧客を増やしている。インドネシアのブランド製品は、インスタントヌードルの「Indomie」が2018年8月からセブンイレブンで販売されるなど、複数の大手小売業者がすでに国内販売していることもあるが、まだまだ認知はされていなかった。アルファマートの拡大で今後、インドネシアブランドに対する認知度も徐々に高まると考えられる。
3位.大統領の禁煙令などで電子たばこへの移行が進む
フィリピンではドゥテルテ大統領が2017年に禁煙令を発令し、1年間で喫煙場所に関する規制がこれまでより厳格化されてきている。また、2018年1月1日から施行された税制改革法第1弾によるたばこ税の大幅引き上げでたばこの市販価格が上昇。この結果、禁煙する人が増える一方で、電子たばこへの移行も顕著に進んできた。紙巻きたばこに比べ、健康被害も少ないと一般に言われており、2019年以降、電子たばこに切り替える人も増える見込みだ。
電子たばこ製品の小売業者によると、現在人気が高いのは「Juul」という米国製の電子たばこで価格帯は3,500~3,750ペソ(約7,300~8,000円)ほど。しかし2018年に入り、これまで食品薬品庁などへの製品登録もされずに市販されるなど、ほぼ野放し状態だった電子たばこに対する規制強化を求める声が政府機関や市民団体などから急速に高まってきている。
4位.電動トライシクルの普及が本格化
排ガス規制を強化するための公共交通機関近代化政策の一環として、政府はこの1年間で電動トライシクル(三輪乗り合いオートバイ)の導入に本腰を入れている。2018年1月にはエネルギー省がアジア開発銀行と提携して、2017年のイスラム過激派占拠事件で荒廃したミンダナオ地方マラウィ市に寄付したのを手始めに、6月にはラスピニャス市など首都圏4市に合計900台を寄付することを決めるなど、電動トライシクルの導入を一気に進めようとしている。
2019年から本格的に実施する予定のジープニー(小型乗り合いバス)の電動化や排ガス規制適合エンジンへの転換事業を控えて、政府はまず費用も安く済むトライシクルの電動化に注力することで、2019年以降の交通機関近代化事業に弾みをつけたい意向だ。
5位.ローストチキンチェーンが躍進
現在、1日に2~3軒の割合でフィリピン全土に店舗網を急拡大させているのが、ローストチキンブランド「Chooks To Go」などを運営する「Bounty Agro Ventures」社だ。従来のローストチキンチェーンとは違い、タレがなくても濃厚な甘みやペッパー風味がチキン全体に浸み込んでいることが受け、一気に人気が高まった。
もともと養鶏場経営会社だったこともあり、値段の安さや店舗網の多さから売り上げを伸ばし、今や3つのブランドの下に全国に2,000店を超える店舗網を構えるフィリピンチェーンブランドの期待の星とも言われる。2018年には「Maro」や「Snok」など3つのチェーンブランドを新たに追加した他、ニュージーランドの鶏肉加工最大手の買収やインドネシアへの進出を発表するなど、さらなる拡大路線を取っている。
<イン&アウト、グルーバルに展開するコンテンツや企業戦略>
上記のフィリピンインディーズ映画人気は、カンヌ映画祭などで賞を受賞した監督の作品がNetflixとの提携によって広く国内で見られるようになり、注目されるようになった。2位のインドネシア系コンビニの急拡大は、モールを数多く展開するSMグループとの提携により、モール内に店舗を構えることで認知度を高め顧客を獲得している。5位のローストチキン店のチェーン展開は、鶏肉生産者としての値段の安さや販売網を活かすことで広がりをみせている。いずれも提携や拡大によって認知度を高めている。
<“強い政府”主導で変化するライフスタイル>
4位の電動トライシクルの普及は、排ガス規制によって公共交通機関の近代化政策が執られたことによるもの。電動トライシクルは既存のジープニーの電動化や排ガス規制適合エンジンへの転換よりコストが安いことから手始めに導入された。3位の電子たばこへの移行はドゥテルテ政権の禁煙令による規制とたばこ税の大幅な引き上げがきっかけとなった。ドゥテルテ政権という強い政府による規制や増税によって様々な変化が生じてきている。
株式会社TNCは、各国の高感度層で構成される現地ボードメンバーと共にグループインタビューやリサーチを定期的に行い、ウェブサイトで情報発信や分析を行う『TNCアジアトレンドラボ』を2015年8月よりサービス開始。また70カ国100地域在住600人の日本人女性ネットワーク『ライフスタイル・リサーチャー』を主軸とした海外リサーチ、マーケティング、PR業務を行う会社である。
問い合わせ先は、TNCアジアトレンドラボ編集部 濱野氏・木下氏、TEL:03-6280-7193、 FAX:03-6280-7194、問い合わせフォーム:http://www.tnc-trend.jp/about/#contact である(18年12月20日の株式会社TNCニュースリリースより)。