2021年6月25日
フィリピン中央銀行は(BSP)は、現在、年8回の金融委員会(MB)政策会合を開催している。
6月24日、2021年4回目のMB政策会合が開催された。このMB政策会合では、2020年12月17日、2021年2月11日、3月25日、5月12日に続いての5会合連続で、政策金利系の据え置きが決定された。すなわち、主要政策翌日物借入金利(RRP)2.00%を中心とする1.50%~2.50%という現行の金利コリドーが継続されることになった。この金利体系は、2016年に中央銀行が金利コリドー制を導入して以降の最低水準である。
5月のインフレ率が4.5%と4カ月連続で4%台での高止まりとなったが、アフリカ豚コレラ(ASF)感染に伴う豚肉を中心とする肉類価格の高騰など一時的な供給サイドファクターによるものであり、MBは新型コロナ禍による経済疲弊という状況で引き締めスタンスに転換する考えはなかったようだ。また、現在の供給ファクターによるインフレ率高止まりは制御可能と見ているようだ。実際、肉類価格上昇は輸入拡大などで緩和され、他の食料品価格も好天候のもとで安定化しつつある。2021年の年間インフレ率は2%~4%というインフレ目標の上限である4%、2022年と2023年はインフレ目標の中間(3%)に落ち着く予想されている。
一方、景気刺激のための利下げも得策ではないと判断したようである。2020年の大幅緩和(合計2%の利下げなど)の効果が続いているうえ、原油価格や食品価格変動等によるインフレ期待が高まる可能性もある。インフレ率が一時的にしても、5カ月連続で目標の上限を突破した状況下では利下げは難しいが、金利据え置きで景気を支えるという選択となったようだ。
BSPは今後も、持続可能な景気回復のために可能な限り支援を行う方針である。その一方、インフレと成長の見通しに対する新たなリスクを引き続き警戒し、価格と金融の安定のために必要に応じて金融政策を調整していく方針でもある。