2021年9月10日
電通で海外事業を推進するグローバル ビジネス センターと、電通総研は、2021年7月に12カ国(日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)を対象に「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」を共同で実施、その結果を、9月8日に発表した。
この調査は、二酸化炭素の排出抑制やプラスチックごみの削減、サステナビリティに対する意識などについて、国ごとの違いとともに、2010年に実施した「サステナブル・ライフスタイル意識調査」と比較することを目的に実施した。
その発表によると、日本は10年前よりサステナビリティのイメージが具体化され、エコバッグ利用や詰め替え商品の購入も一般化した。しかし、買い物時にはある程度エコを意識する機会がある一方で、環境コスト負担を受け入れ、社会活動を支援する層は一部にとどまり、使用・廃棄まで人びとの意識が行き届いているとは言えない。さらに、次世代につなぐことよりも、今の生活を守ることに精いっぱいという人の割合が高く、このことは日本以外の経済先進国においても同様の傾向である。
日本の対極にあるのは、フィリピン、インドネシア、ベトナムといったASEANの国々である。社会活動への支援が活発で、公的な意義を優先した消費への意欲をもち、リサイクル行動を実践する人の割合も高い結果となった。さらに、社会課題に関心を持つきっかけは「SNS投稿」と、ニュース優勢の経済先進国とメディア接触の状況が異なる。ASEANは若年人口構成比率が高く、SNS利用度とサステナビリティ意識の相乗効果が表れているとみられる。項目別の動向は以下のとおり。
<関心のある社会課題>
日本は1位「自然災害」57.2%、2位「少子化・高齢化」45.6%、3位「大気汚染」41.6%。
イギリス、ドイツ、シンガポールは「海洋プラスチックごみ」、アメリカは「人種差別」、「医療制度・設備」、中国、インド、ベトナムは「大気汚染」、「水質汚染・水不足」、フィリピン、マレーシア、インドネシア、インドは「公衆衛生」、タイは「失業率」が上位と、関心を寄せる社会課題には大きな地域差が見られた。フィリピンは「公衆衛生」が72%で、「貧困・飢餓」77%に次ぐ2位であった。
<リサイクル行動>
フィリピンの「エコバッグ」使用率は87.3%で首位、2位の日本の78.8%、12カ国全体の60.6%を上回った。「詰め替え商品」購入率も74.3%で、12カ国全体の53.3%を大幅に上回る1位であった。日本は67.8%で3位であった。マイボトルを持ち歩く比率は72.3%で2位とであり、フィリピンのリサイクル行動が活発であることが反映されている。
<社会活動の支援>
フィリピン、インドネシア、ベトナムは約8割が「社会活動」の高関与者(イベントを企画するリーダー+参加するメンバー+情報を広げるサポーターのいずれかを選んだ人の合計)となり、高関与者が半数に満たないイギリス、ドイツ、日本と比べて、社会活動が可視化されやすい地域といえる。
<社会課題に関心を持つきっかけ>
日本は「ニュース・記事」が56.0%、ASEANは「SNS投稿」の方が高い。日本と同様にイギリス、中国、ドイツでは「ニュース・記事」が「SNS投稿」を上回る。ASEANでは「SNS投稿」が「ニュース・記事」を上回り、社会活動の高関与者の多さとの関連をここでも確認することができる。
<サステナビリティのイメージ>
全体の1位である「地球環境」は不動。10年前は「つながり・関係性」、「責任・義務」、「子供・次世代」「忍耐」など、次の時代に期待する漠然としたイメージの言葉が上位であったが、2021年では「循環型社会・サーキュラーエコノミー」、「社会的影響」、「多様性」など、より具体的で現実的な、現在進行形の社会課題という認識に変わった。