2023年3月6日
3月3日にフィリピン運輸省(DOTr)と三菱商事は、南北通勤鉄道延伸事業における鉄道システム一式(軌道、信号・通信設備、受配電設備、電車線等)に関する契約に正式調印した。三菱商事の受注金額は約2,600億円相当。この契約調印式にはマルコス大統領、DOTrのバウティスタ大臣、三菱商事の産業インフラグループ統括の太田光治常務執行役員らが出席した。
タルラック州ニュークラークシティーからラグナ州カランバまでをつなぐことになるNSCRは、マニラ首都圏中心部において日本の支援を受けて整備が進められている南北通勤線(第1期事業、マニラ市ツツバン-ブラカン州マロロス間、約38km)を、南北に合計約110キロメートル延伸するというものである。さまざまな最先端の技術の使用により、最高時速160キロを誇る高架式鉄道で、マニラ首都圏の交通渋滞の緩和や大気汚染、交通・物流コストの削減につながり、経済の発展と同時に人口の郊外への分散を促す。
総延長148キロメートルで37駅が配置されるNSCRが全面開通すると、1日当たり83万人の輸送能力を有し、クラーク国際空港からカランバまでの移動時間は現在の4時間30分以上から1時間30分に短縮されると試算されている。
今回、三菱商事が受注したのは、南北通勤鉄道(NSCR)の第2期事業である北方延伸(ブラカン州マルロス⇔パンパンガ州クラーク間の53キロメートル)と第3期事業である南方延伸(マニラ市⇔ラグナ州カランバ間の57キロメートル)の双方の鉄道システム一式である。フランスの総合鉄道関連企業のアルストムなどが下請けになる。
ちなみに、第1期事業の鉄道システムについては、日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レールSTSがデジタル信号を含む鉄道システムの提供および軌道工事に関する契約パッケージ(CP04)を約1,140億円相当で受注、今年1月30日、CP04調印式が実施された。
NSCR事業は国際協力機構(JICA)とアジア開発銀行(ADB)が建設資金などの支援を行ってきている。日本は既に第1期事業に2,420億円、延伸事業に1,672億円を融資している。更に、今年2月9日には、訪日したマルコス大統領と岸田文雄内閣総理大臣の立会の下、約3,770億円の追加投資に関する書簡の交換が行われた。
なお、三菱商事は2022年2月、DOTrより、JICA支援の「マニラ首都圏地下鉄事業フェーズ1」(マニラ地下鉄、全17駅、内地下区間13駅、全長約36キロメートル)向け鉄道システム一式を正式受注した。受注金額は約1,400億円相当。地下鉄対象区間の移動時間は、現行の自動車で約2時間から、地下鉄利用により約40分に短縮されることが見込まれている。
フィリピンでは、今後も既存路線の延伸や新線の建設が多数計画されている。三菱商事は、世界各国で培ってきた鉄道事業のノウハウを活用することで、フィリピンにおける交通インフラの整備に寄与し、人々の移動における利便性の向上を通じて、経済発展を続けているフィリピンに貢献して行く方針である。また、日本政府が推進する質の高いインフラシステム輸出を後押しし、鉄道インフラ案件に積極的に取組むことで、地域の利便性の向上や、渋滞等の地域課題への対応と解決策の提供を目指す。