2023年5月22日
株価大幅下落、収入首位アヤラランド、利益SMプライム断トツ
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2023年第1四半期(1月~3月)事業報告書が出揃った。それによると、新型コロナウイルス対策規制の大幅緩和や経済再開本格などにより、商業施設やオフィスの入居率が上昇、住宅事業も堅調、総じて回復ピッチが高まった。集計13社中、10社が増益(帰属純損益ベース、以下同様)、そのうち9社が二桁増益であった。
ただし、主力事業、プロジェクトの立地、保有物件などによって回復ピッチに差がある。また、COVID-19パンデミック直前の2019年との比較では減益という企業もある。特に、最大手(収入規模)のアヤラランド(証券コード:ALI)の帰属純利益は45億ペソで、新型コロナパンデミック前の2019年第1四半期の73億ペソを大幅に下回っている。また、急ピッチの金利上昇が回復ピッチを鈍らせているという要素もあり、他業種に比べると収益拡大ピッチは緩慢ともいえる。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
アヤラランドの総収入は前年同期比(以下同様)26%増の309億ペソ、帰属純利益は42%増の45億ペソであった。一方、アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の収入は21%増の292億ペソ、帰属純利益は27%増の94億ペソであった。すなわち、アヤラランドは収入では辛うじて首位を維持したが、帰属純利益ではSMPHの約48%の水準にとどまっている。なお、SMPHの帰属純利益は94億ペソで、2019年第1四半期の88億ペソを上回るに至った。アヤラランドの2022年の年間帰属純利益はSMPHの約62%であった。アヤラランドは不動産投資信託(REIT)創設、SMPHは未創設(2023年下半期にREIT創設予定)ということを考慮する必要もあろうが、帰属純利益ではアヤラランドがSMPHを大きく下回っている。
<ショッピングモール賃貸事業、大幅増収>
外出・移動制限大幅緩和などで、SMPHの国内ショッピングモール賃貸収入は72%増の130億ペソ、アヤラランドは71%増の50億ペソなど総じて大幅増収であった。ただし、2019年第1四半期の水準(SMPHが129億ペソ、アヤラランドが51億ペソ)とほぼ同水準であり、新型コロナパンデミック前を大幅に上回るには至っていない。
<低価格住宅堅調、三菱商事合弁事業など>
一方、手頃な価格の住宅需要は堅調である。センチュリー プロパティーズ グループ(センチュリー不動産グループ、証券コード:CPG)は、三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業をベースとするFirst-Homeブランドの住宅開発事業が堅調で、総収入の48%を占める16億ペソに達した。
<不動産各社の株価下落続く>
業績回復ピッチが相対的に緩慢なこと、金利上昇が業績回復の妨げになるとの懸念などを背景に、不動産各社の株価は総じて軟調に推移している。PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年は12.14%下落(PSE指数は0.24%下落)、2022年は9.04%下落(PSE指数は7.81%下落)、3年連続で大幅下落。2023年第1四半期に入っても8.55%下落(PSE指数は1.02%下落)している。金利敏感セクターの代表格として売られている要素もある。