2024年10月23日
三菱UFJやアヤラとともにモバイルマネー事業に参画
三菱商事は、10月18日、「三菱商事とフィリピンのアヤラ財閥の旗艦企業アヤラコーポレーション(アヤラコープ、証券コード:AC)は基本合意書を締結し、フィリピン最大の金融アプリでありデジタルキャッシュレスエコシステムであるグローブ フィンテック イノベーションズ(Mynt社、本社:マニラ首都タギグ市)に三菱商事が出資参画することについて合意した」と発表した。
三菱商事は、AC子会社でMynt社の株式を約13%保有するACベンチャーズ ホールディングスに50%出資(出資184億ペソ、約480億円)することで、Mynt社事業及び今後の事業機会に対し、ACと共同で参画していく予定である。また三菱商事とAC社は、フィリピン経済発展に貢献することを目的に、フィリピンにおける包括的協業に関する覚書を締結する。三菱商事は、デジタル金融事業はASEANの消費需要の成長を取り込むと共に、全ての人が手軽に金融サービスにアクセスできる社会(金融包摂)を実現する重要な取組みであり、複数の生活者向けサービスを有機的に繋げるインフラとなる事業であると位置付けている。
フィリピンはASEAN諸国の中でも人口、GDPともに最も高い伸びが期待される国であり、銀行口座保有率が低い一方で、携帯電話やインターネットの普及率が高く、デジタル金融サービスの拡大余地が大きい市場である。Mynt社は、フィリピンの金融包摂を加速させることをビジョンとして掲げ、フィリピン国民の約8割が利用したことがあるEウォレット「Gキャッシュ」を主要事業として展開している。
Gキャッシュはフィリピンで圧倒的1位の顧客基盤を抱えており、日々の決済・送金等、国民の生活に必要不可欠な生活インフラとなっている。デジタル決済及び送金に加え、Mynt社は子会社を通じて顧客の信用度を従来とは異なる方法で算出し、適切な融資へのアクセスを可能にしている。また、アプリを通じて貯蓄、保険、投資商品への手軽なアクセスを実現し、幅広い金融サービスを提供している他、マーケットプレイス等の非金融事業も拡大しており、1,000以上の加盟店パートナー、6百万の個人事業主を含む同国最大の加盟店ネットワークを構築している。
三菱商事は、ACと1974年より提携を開始し、フィリピンにおいて様々な産業分野での協業を重ねてきた。今般、提携50周年を迎えて両社の関係を更に進展させるべく、包括的協業に関する覚書を締結する。三菱商事とACは、Mynt社の企業価値向上に取り組むと共に、C2B事業領域(リテイル、ヘルスケア等)での事業開発・クロスセルを実現し、またモビリティ、再生可能エネルギー、カーボンマネジメント等の領域においても多面的に協業を推進することで、フィリピンの経済発展に貢献して行く方針である。
またMynt社には、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も今年8月に3億9,300万米ドル(約633億円)の出資(約8%相当)を決定しており、AC、MUFG、三菱商事の3社はMynt社の株主として連携し、Mynt社の成長を支援していく。
<Mynt社の概要>
2015年設立のMynt社はモバイルマネー、金融サービス、テクノロジーを通じて金融包摂を加速させることに重点を置いたモバイル金融サービスのリーダーとして、フィリピンで非上場企業として初めて企業価値50億ドルとなった企業である。三菱商事の参画で評価額は更に高まることになりそうだ。傘下に2つのフィンテック企業を運営しており、一つはGキャッシュのモバイルウォレット事業者であるGXI(フィリピンで第1位の金融スーパーアプリであり、最大のデジタルキャッシュレスエコシステム)。もう一つは、フィリピン人にマイクロローンやビジネスローンへのアクセスを提供する、テクノロジーベースの融資会社であるFuse Lendingである。
Myntは既に黒字化しており、Myntの2023年のグローブテレコムへの税引き前利益(NIBT)貢献額は前年比193%増の23億7,000万ペソと大幅増加、グローブのNIBTへの貢献度は7.3%に達した。2024年上半期(1月~6月)のNIBT貢献額は前年同期比120%増の21億ペソ、貢献度は12%に達し、前年同期の5%から急上昇した。
アヤラグループはこのMyntのIPO(新規公開)・フィリピン証券取引所(PSE)への新規上場を計画している。2023年に上場が期待される時期もあったが、投資環境の悪化もあって、現時点では2025年の上場が有力視されている。しかし、確定したわけではなく、あくまでも投資環境次第とのことである。また、流動性という観点から、PSEのほかに米国株式市場等への上場、すなわち、フィリピンと米国等での重複上場を検討しているとのことでもある。