2020年9月2日
フィリピン証券取引所(PSE)上場の民間銀行の2020年上半期(1月~6月)事業報告書発表が出揃った。主要8行の動向は下表のとおり。
資産規模では、BDOユニバンク(BDO)が総資産(3兆3,177億ペソ)、純資産(3,675億ペソ)、受け入れ預金残高(2兆6,074億ペソ)、融資残高(2兆2,733億ペソ)いずれもトップとなっている。総資産2位はメトロポリタンバンク&トラスト(メトロバンク)の2兆3,213億ペソ、3位はバンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)の2兆2,620億ペソとなっている。バーゼル3基準の対リスク資産自己資本比率(CAR)では、メトロバンクが19.98%、セキュリティバンクが19.66%と非常に高水準であることが目立つ。一方、不良債権(NPL)比率では、メトロバンクの1.56%、セキュリティバンクの1.58%、チャイナバンクの1.60%などの良好さが目立っている。
上半期の業績に関しては、新型コロナウイルス感染拡大が大きな影響を受けた。8行とも主力業務などによる純金利収入は二桁増加と好調であったが、新型コロナウイルス危機に備えて貸し倒れ引当を大幅に積み増した3大銀行は揃って二桁減益決算となった。
最大行BDOの純金利収入は前年同期比(以下同様)16.6%増の664億ペソと依然好調であった。今後本格的な顕在化が予想される新型コロナウイルス危機備え224億ペソの貸し倒れ引当の積み増しを行ったことで、上半期の純利益は78.7%減の43億ペソへと急減した。貸し倒れ引当は、第1四半期に21億ペソ、第2四半期に203億ペソ積み増しされた。その結果、第1四半期は88億ペソの純利益ながら、第2四半期は45億ペソの純損失(前年同期は104億ペソの純利益)となった。
一方、チャイナバンクの純金利収入は39.8%増、セキュリティバンクは33.7%増と非常に良好であったことなどから、高水準の貸し倒れ引当にもかかわらず各々24.6%増益、14.3%増益となった。リサール商業銀行(RCBC)も16.9%増益となり、3大銀行とは対照的な結果となった。これらのことから、上半期の帰属純利益順位は2019年とは大きく異なった。
今上半期の帰属純利益はBPIが117億ペソで1位、2位がメトロバンクの91億ペソ、3位がセキュリティバンクの57億ペソと続く。増益率トップはチャイナバンクの24.6%、以下リサール商業銀行(RCBC)の16.9%、セキュリティバンクの14.3%と続く。純金利マージン(純金利収入対収益資産比率)首位はセキュリティバンクの4.71%、年率換算の自己資本利益率(ROE)ではチャイナバンクが10.64%で首位となっている。
BDOは近年事業規模で急成長を続けてきており、各資産規模でほぼ断トツとなっている。それに次いで、メトロバンクやBPIの総合力の強さ、セキュリティバンクの財務内容の良好さ、チャイナバンクやセキュリティバンクの利益率の高さなどが目立っている。