2024年5月13日
国際通信事業23年度は大幅増収増益、今年度も続伸へ
日比等で先端技術活用の通信事業などを展開する株式会社アイ・ピー・エス(IPS、本社:東京都中央区)が、5月10日、2024年3月期(2023年度)の決算を発表した。
それによると、IPSの2023年度売上高は前年度比(以下同様)14.4%増の141億1,700万円、経常利益は27.8%増の44億2,700万円、帰属純利益は23.7%増の28億3,500万円と二桁増収増益決算であった。特に、第4四半期(2024年1月~3月)が好調で売上高は62.5%増加、帰属純利益は156%増加した。この好業績の牽引役はフィリピンを中心とする国際通信事業である。
国際通信事業の2023年度の売上高は32.3%増の84億4,000万円、営業利益は55.5%増の29億0,100万円、営業利益率は34.4%で前年度の29.2%から5.2%ポイント上昇した。この大幅増収増益は、主にフィリピン国内海底ケーブルシステム(PDSCN)が2023年12月に完成、第4四半期にその回線および関連サービスなどの提供による収益計上がなされ、国際通信回線の提供や法人向けインターネット接続サービスの課金顧客数の増加などもあったことによる。
IPSは2024年度の国際通信事業の売上高を30.3%増の110億円、営業利益を15.8%増の33億6,000万円と予想している。PDSCNが完成しフィリピン国内基幹網が整備されたことから、マニラ首都圏および近郊以外の地域の通信事業者やCATV事業者へのサービス提供が可能となる。これに伴い、PDSCN自体の提供の拡大やPDSCN関連サービスの提供などが見込まれる。また、地方の通信事業者やCATV事業者などへのC2C回線の提供が行えるようになり、既に40件を超えるIRU契約が締結され、今期順次開通し収益の計上が行われる。
法人向けインターネット接続サービスについても、マニラ首都圏での回線の整備や調達が進み、順調な顧客獲得が見込まれる他、地方へのアクセスが可能となったことから、支店を多く抱える大企業向けの提供も期待できる。 フィリピンの好調な経済状況から、通信需要は引き続き拡大しており、国際通信回線の拡大も期待できる。IPSは、2023年11月時点で2028年度の売上高200億円、営業利益50億円と想定している。
なお、IPSのフィリピンでの通信事業は、主に2015年に出資したInfiniVAN, Inc.(インフィニVAN、所在地:タギグ市BGC)を通して展開されている。インフィニVANは2016年に制定されたフィリピン共和国法第10898号によりフィリピン国内で通信事業を営むことができる権利(フランチャイズ)を有する通信事業者である。固定通信のほか、無線通信サービスも提供することができる。また、フィリピン国家通信委員会より5G周波数割り当ても受けている。
IPSは過去最大の投資案件として、2022年7月よりインフィニVANを通じて、フィリピンの通信企業グローブ テレコム(証券コード:GLO)とイースタンテレコミュ二ケーションズ フィリピン(イースタンテレコム)と共同で、上記のPDSCNの建設を開始した。2023年4月に海底部分の建設が完了、全国140カ所の中継局網も2023年12月に完成した。すなわち、既存大手通信事業者と遜色のないネットワークが完成し、ハイパースケール事業者、CATV事業者、地方の通信事業者、地方の法人向け等への通信サービスの提供が全国規模で可能となりつつある。
PDSCNは、ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶフィリピン国内を縦貫する回線で、その工事区間は24区間、ケーブルの長さは約2,500Km、人口カバー率は96%、総投資額は1億4,200万米ドル(原則3社均等)。別途、伝送装置やインフィニVAN単独の陸上部分の費用を合計すると、インフィニVANの投資額合計は約6,500万米ドル。これを3-5年程度で回収する予定であり、順次IRU契約を積上げている。
ビジネス烈伝 IPS, Inc.のコラムはこちら:
https://primer.ph/column/genre/business/business-interview-vol193/