2022年5月18日
大統領選挙投票後の1週間(5月9日は投票日で休日、4営業日)の株価が急落、前回2016年のドゥテルテ氏当選時の祝賀相場とは真逆の動きとなった。
今回は、ロシアによるウクライナ武力侵攻やそれに伴う原油などの高騰、米国金融政策引き締め加速化の動き、それらに伴う世界的な株式市場変調、フィリピンでも利上げ前倒し実施の動きなど懸念材料が多いなかで選挙・投票が実施され、近年で最高の年間GDP成長率7.1%を記録した2016年とは経済環境が全く異なる。経済的要因が今回の急落の主要因であろうが、それだけでは説明できないほど、フィリピン株式市場は軟調である。下表のとおり、2020年、2021年と連続下落、2022年4カ月半でも10.4%下落している。
しかし、2022年5月10日は、寄り付き前からフェルディナンド・マルコス氏の大統領選圧勝、チームを組むサラ・ドゥテルテ氏の副大統領選圧勝が決定していたという状況下で、PSE株価指数(PSEi)は前営業日から一気に212ポイント急落した。この朝方の急落は大統領選挙においてマルコス氏が圧勝、マルコス家が再び政治の頂点に立つことになったことを懸念する外国人投資家を含む一部投資家が保有株式処分の動きに出たと解説する向きもあった。5月10日終値は約39ポイント安まで下げ幅が縮小したが、結局5月13日まで4日連続で下落、4日間で約381ポイント、率にして5.6%の大幅下落となり、祝賀ムードを全く感じさせない展開となった。
ちなみに、6年前の2016年5月10日は、大統領選において現ドゥテルテ大統領の当選が判明、PSEiは前営業日比183ポイント、率にして2.62%急騰した。5月13日までの4日間では約445ポイント、率にして、6.4%上昇という祝賀ムードに満ち一週間であった。
この一週間の急落での特徴的な動きは、アヤラ財閥系企業の急落が続いており、5月13日だけで旗艦企業のアヤラコーポレーション(証券コード:AC)が6.1%下落、通信のグローブテレコム(GLO)が5.9%下落、不動産のアヤラランド(ALI)が5.7%下落、発電のACエナジーが(ACEN)5.6%下落、銀行のバンク オブ ザ フィリピン アイランズBPI(BPI)が3.2%下落など軒並み急落した。5月10日から13日までの4日間では、ACENが18.0%、ALI が15.4%、ACが10.8%、GLOが10.7%と二桁の下落となった。
アヤラグループは、これまでフィリピンを代表する優良企業グループと位置づけられてきているが、足許の業績実質伸び率がライバルグループ企業に比較して低調なこともあって、外国人投資家によるフィリピン売りの中心的存在となってしまっている。ALIのライバル企業であるSMプライムホールディングス(SMPH)は5月13日に4.6%上昇、GLOのライバルPLDT(TEL)は1.1%上昇と対照的な動きであった。