JETROフィリピンは29日、フィリピンの国内消費に関する新しい情報を発表しました。
消費市場は回復基調も、足元は厳しさが続く
米国の民間調査機関コンファレンス・ボードは7月15日、「グローバル消費者信頼感指数(2020年4~6月)」を発表し、経済動向を楽観視する消費者の比率は、世界全体で前回発表(2020年1~3月)の106から92に14ポイント減少したと報告した。
フィリピンも同様に128から113に15ポイント減となったが、インドやベトナムなどに次いで、世界で5番目に楽観的な消費者が多いことが分かった。
しかし、フィリピンの国内消費をめぐる現状は芳しくない。国内消費を下支えする海外就業者の本国送金は2020年1~4月では前年同期比3.0%減だが、7月20日のフィリピン労働省発表ではこれまで世界各国から9万5,702人の海外就労者が帰国している。そのため、5月以降の送金実績はさらに落ち込むことが予想される。
自動車販売台数にその傾向はあらわれている。フィリピン自動車工業会(CAMPI)とトラック製造事業者協会(TMA)が合同で発表した新車販売台数、自動車輸入販売企業協会(AVID)の発表した輸入新車販売台数を総合すると、2020年1~6月の自動車(新車)販売実績は前年同期の19万5,173台から52.1%減の9万3,469台に減少した。
ただし、6月の販売台数(輸入車を除く)は5月の4,788台から約3.25倍の1万5,578台と大幅に伸びており、回復基調にある。
一方、住宅投資はさえない。フィリピン統計局は7月21日、2020年1~3月の民間建築認可実績は、着工件数が前年同期比22.4%減の3万838件、床面積が同17.0%減の790万3,368平方メートル、価額が同20.1%減の860億7,211万ペソ(約1,893億5864万円、1ペソ=約2.2円)と発表した。
3月中旬の広域的なコミュニティ隔離措置施行で建設工事が中断され、5~6月に大幅に制限が緩和された後も工事現場には厳格な感染対策が求められている。2020年4~6月の民間建築認可実績はさらなる落ち込みが想定される。
なお、フィリピン統計局は7月7日、2020年6月のインフレ率は2.7%、同1~6月の平均インフレ率は2.5%と発表した。物価は緩やかな上昇基調にあるが、フィリピン政府は想定の範囲内としている。
(石原孝志)