JETROフィリピンは6日、輸入完成車へのセーフガードについての情報を発表しました。
貿易産業省、輸入完成車へのセーフガード暫定措置を発動へ
フィリピン貿易産業省(DTI)は1月4日、輸入完成車に対するセーフガード暫定措置を発動すると発表した。乗用車に対して1台につき7万ペソ(約15万4,000円、1ペソ=約2.2円)、小型商用車に対して1台につき11万ペソの関税を、現金担保のかたちで賦課する。セーフガード暫定措置は、発動から200日間適用される。並行して、関税委員会(TC)が正式なセーフガード発動に関する調査を行う。同調査において、輸入の増加が国内産業に重大な損害を与えている、または与える恐れがあるとされない場合には、暫定措置による関税引き上げ分(現金担保のかたちで付加された関税分)は払い戻される。
DTIは、自動車や鉄鋼、造船、鉱業分野の労働者で構成される労働組合「フィリピン・メタルワーカーズ・アライアンス(PMA)」からの申請を受け、2020年2月からセーフガード発動に関する予備調査を行っていた(2020年2月21日記事参照)。
同組合は、完成車の輸入が増加していることで、フィリピン国内の自動車産業界の雇用がダメージを受けていると主張し、輸入完成車へのセーフガード発動を政府に求めていた。DTIは、調査対象期間である2014~2018年に、乗用車・小型商用車ともに国内生産に比べて海外からの輸入が大きく増加しており、国内自動車産業の保護が必要と判断し、セーフガード暫定措置の発動に踏み切る。
国内自動車産業界は国内市場の回復への負の影響を懸念
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の自動車販売台数は大きく減少している。ASEAN自動車連盟(AAF)の発表によると、フィリピンにおける1~10月の四輪の新車販売台数は、前年同期比42.7%減の17万3,035台だった。自動車産業界では、政府がセーフガードを発動すると、市況がさらに悪化するとの懸念もある。フィリピン自動車工業会(CAMPI)は現地メディアの取材に対し、「セーフガードが発動すれば、自動車産業界の回復にマイナスの影響を与えるだろう」とコメントした(フィルスター2021年1月2日)。
(吉田暁彦)