JETROマニラは、フィリピンのIT-BPM産業に関する情報を発表した。
ITを活用した業務委託サービスであるIT-BPM産業(注)の業界団体「フィリピンITビジネスプロセス協会」(IBPAP)は9月1日、フィリピンのIT-BPM産業について、2022年の収益が前年比で8~10%、フルタイム従業員が7~8%増加する見込みと明らかにした(「ビジネス・ワールド」紙2022年9月1日)。また、新型コロナ禍からの経済回復を受け、今後の6年間で新たに110万人超の雇用を生み出す可能性があると指摘した。
新型コロナ禍でも産業の収益性を維持・拡大
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大直後、劣悪な通信環境や従業員の在宅勤務環境の未整備からフィリピンの一部のIT-BPM関連企業では、生産性が低下した。その後、従業員への通信機器の支給や情報管理体制の整備などの企業努力により、在宅勤務によるサービス提供が可能となった企業もある。2021年には、フィリピンのIT-BPM産業全体で295億ドルの収益を生み出し、前年比10.5%の増加となった。また、同年、同産業に従事する者は144万人だった。
フィリピン大手のリサール商業銀行のチーフエコノミスト、マイケル・リカフォート氏は「フィリピンは世界最大の業務アウトソース先の1つであり、IT-BPM産業は新型コロナ禍でも成長を持続させてきた」と話す。同氏は、フィリピン国内でのIT-BPM産業の成長地域として、マニラ首都圏郊外を挙げている。中でも、大学が立地するエリアは、安定的な労働力供給の観点から優れているとした。また、マニラ首都圏郊外は不動産価格などのオペレーションに係る費用が低く、企業にとってコスト節約につながると付け加えた。
(注)「IT-BPM産業」は、ITを活用した業務委託サービス全般を指し、さまざまなサービス分野を包含する。その範囲は、コールセンター、医療情報管理、バックオフィス業務からソフトウエア・サービス、ゲーム開発、アニメーション制作まで多岐に及ぶ。
(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)
(フィリピン)