在フィリピン日本国大使館から安全対策情報が届いております。
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フィリピンの海外安全情報(危険情報)が改訂(内容更新のみで危険度の変更はありません)されました。
フィリピンにお住まいの皆様及び旅行者の皆様へ
在フィリピン日本国大使館
11月10日付でフィリピンについての海外安全情報(危険情報)を改訂しました。
【危険度】
●ミンダナオ地域の中部以西(周辺海域を含む)
レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)(継続)
●ミンダナオ地域の中部以東(但し,カミギン州,ディナガット・アイランズ州,カガヤン・デ・オロ市,ダバオ市及びジェネラル・サントス市を除く)(周辺海域を含む)
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
●パラワン州南部(プエルトプリンセサ市以南の地域)
レベル2:不要不急の渡航は止めてください。(継続)
●上記地域以外のマニラ首都圏を含む全地域
レベル1:十分注意してください。(継続)
【ポイント】
●ミンダナオ地域の一部では,身代金目的の外国人誘拐等が多発し,様々な武装勢力が活動を行っていることもあり,「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」を発出しています。これらの地域には目的の如何を問わず渡航は止めてください。
●ダバオ市では,9月2日に発生した爆発事案を受け,同6日に国家非常事態宣言が発出され,市街地での軍・警察による警戒や検問が強化されています。事件が発生したダバオを含む南部はもとより,首都マニラを含む全土において,テロの発生に注意する必要があります。
●ジカウイルス感染症の流行に伴い,フィリピン全土に感染症危険情報を発出していますので,渡航・滞在される場合には蚊に刺されないための対策に努めてください。
☆詳細については,下記の内容をよくお読みください。
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_013.html#ad-image-0
1.概況
(1)政治情勢
●2016年6月にドゥテルテ大統領が就任し,ミンダナオ和平推進,治安強化及び違法薬物の撲滅を重要政策として掲げ,政権を運営しています。現在は,政権が移行し新たな政策の過渡期であることから,今後の政治・治安情勢には留意する必要があります。
●9月には長年闘争中であった共産系反政府武装組織(新人民軍(NPA))を傘下に持つフィリピン共産党(CPP)が無期限の停戦に同意しました。
●9月2日にダバオ市で発生した爆発事案を受け,同6日に国家非常事態宣言が発出されており,市街地での軍・警察による警戒や検問が強化されています。
(2)ミンダナオ和平プロセス
2001年にマレーシアを仲介役として開始されたフィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)との和平交渉は,2012年10月に「枠組み合意」が署名されて以降,具体的な内容についての交渉が継続され,2014年3月に包括和平合意の署名に至りました。
しかし,前政権中には包括和平合意を基にする法案が議会で可決されず,和平プロセスは現政権に引き継がれ,依然として情勢は不安定な状況です。特にフィリピン政府とMILFとの和平プロセスに不満を抱く反政府武装勢力がミンダナオ地方において国軍や警察等治安当局との衝突を繰り返しており,ミンダナオ地方の治安情勢については依然として予断を許さない状況にあります。
(3)テロ・誘拐情勢
ア フィリピンには,イスラム系反政府武装組織(アブ・サヤフ・グループ(ASG),マウテ・グループ,アンサール・アルキラファ・フィリピン(AKP),バンサモロ・イスラム自由運動/戦士団(BIFM/BIFF),モロ民族解放戦線ミスアリ派(MNLF-MG),ジュマ・イスラミーヤ(JI)等)や共産系反政府武装組織(新人民軍(NPA))等多くの過激派組織が存在します。イスラム系反政府武装組織による無差別爆弾テロ事件,身代金目的の誘拐事件等が発生しています。また,NPAは「革命税」を徴収するとの名目で企業や富裕層に対する恐喝等を行っています。
イ イスラム系反政府武装組織の中には,イスラム過激派組織ISIL(イラク・レバントのイスラム国)への支持を表明している組織が存在します。その一つであるASGは,2014年9月,ドイツ政府がISILに対する米国の行動への支援をやめず,身代金を支払わなければ人質のドイツ人2名を殺害する旨警告する動画を公開しました。また,2016年2月,同じくISILへの忠誠を誓ったとされるマウテ・グループは陸軍部隊を攻撃し,兵士8人が死傷させる事件を起こしています。
4月には,フィリピン南部において兵士を殺害したとする「ISILフィリピン」を名乗る最初の犯行声明が発出され,その数日後にISILはASGの幹部を「ISILフィリピン」の指導者に任命したと発表しています。6月には「ISILフィリピン」を名乗る武装集団が自国におけるジハードの実施を呼びかけるなどした動画が公開され,8月には,南ラナオ州マラウイの拘置所の襲撃について,「ISIL東アジア」の名義での犯行声明が発出されるといった事案も発生しています。
このほか,BIFFはインターネットのSNSを通じてISILと連絡を取っていると主張,AKPもISILに忠誠を誓ったとされています。しています。今後,ISIL等によるテロの呼びかけに呼応し,これらの組織がテロ活動をさらに活発化させる危険性があります。
ウ また,以上に加え,2014年のフィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)間の包括和平合意を受けて,MILFによるテロ活動は減少していると見られる一方,和平合意に反発するMNLF-MG,BIFM/BIFFによるテロ活動が現在まで散発的に発生しており,今後活発化する可能性もあります。
2013年9月にはMNLF-MGがミンダナオ西部のサンボアンガ市に侵入し,住民数百人を人質に市街地に立て籠もり,国軍等治安当局と大規模な武力衝突をする事件が発生しました。また,BIFM/BIFFは,コタバト州やマギンダナオ州で国軍等との衝突を繰り返しています。さらに,ASGは,サンボアンガ地域やスールー州をはじめとして,ミンダナオ地方全域で身代金目的の外国人誘拐や地元住民の拉致,地元企業に対する襲撃等の事件を繰り返しています。加えて,インドネシアを中心に活動しているイスラム過激派組織ジュマ・イスラミーヤ(JI)は,フィリピン南部のミンダナオ地域にも拠点を有し,ASG等フィリピン固有のイスラム系反政府武装組織と連携しながら軍事訓練やテロ活動を行っていると見られています。
エ こうした状況の中,9月2日には,ミンダナオ地域のダバオ市の夜間市場において爆発事案が発生し,15名が死亡,60名以上が負傷しました。10月4日,この事案に関与した10名のうち3名が逮捕されており,当局によれば,何れもマウテ・グループのメンバーであるとされています。事件が発生した南部はもとより,首都マニラを含む全土において,テロの発生に注意する必要があります。具体的には,以下の点を心がけてください。
●テロ事件等不測の事態に巻き込まれることのないよう,最新の関連情報の入手に努める。
●テロの標的となりやすい場所(デパートや市場,観光・リゾート施設,公共交通機関など不特定多数の人が集まる場所,欧米関連施設や宗教関連施設など)を訪れる際には,周囲の状況に注意を払い,不審な状況を察知したら速やかにその場を離れる。
●政府・軍・警察関係施設には近づかない。
●複数の爆弾が時間差で爆発することも想定されることから,爆発現場には近づかない。
●爆弾事件や不測の事態が発生した場合の対応策を再点検し,状況に応じて適切な安全対策が講じられるよう心がける。
オ NPAは,ミンダナオ地域,ルソン地域及びビサヤ地域の広い範囲で国軍等治安当局と交戦し,また「革命税」の支払を拒否する企業への襲撃を行っていましたが,2016年9月,NPAを傘下に持つフィリピン共産党(CPP)が現政権との間で無期限の停戦を発表しました。しかし,広範囲にわたるNPA関係者の全てが停戦を遵守しているかは不透明であり,引き続き十分な注意が必要です。
カ フィリピン全土,特にミンダナオ地域においては,身代金目的の誘拐の脅威が高まっています。2013年にはマニラ首都圏において日本人実業家1名が誘拐されたほか,2014年には,パラワン州においてヨットで旅行中のドイツ人観光客が武装集団に誘拐されるなど,マニラ首都圏やミンダナオ地方等でドイツ人,中国人,韓国人など外国人が被害に遭ったものを含め,誘拐事件が数十件発生しています。2015年9月には,ミンダナオ地方ダバオ州サマル島のリゾート施設で,カナダ人やノルウェー人など外国人が誘拐され,居あわせた邦人も負傷する事件が発生しました。また,同年10月には,同地方北サンボアンガ州ディポログ市で,レストラン経営者のイタリア人が誘拐されました。日頃から治安情報の収集に努めるとともに,毎日の行動がパターン化しないよう注意する,不用意に不特定多数の人間に自らの身辺情報を流さない等,ターゲットにならないよう慎重な行動を心がけてください。
(4)一般治安情勢
ア フィリピンにおいては,強盗,窃盗事件や銃器を使用した殺人事件が多発しています。特にマニラ首都圏やセブ都市圏では短期滞在の個人旅行者を狙った強盗,窃盗事件が頻発しており,日本人観光客が睡眠薬強盗や窃盗被害に遭う事例も跡を絶ちません。また,現職警官や偽警官による強盗,恐喝事件も発生しており,十分な注意が必要です。
イ フィリピンにおいては,銃規制が緩く,些細なことでも生死に関わる事態に発展する危険性があることを十分認識し,特に夜間の一人歩きを避ける,万一被害に遭遇した際は無理な抵抗はせず冷静に対処する,口論や争いごとを避けるよう言動に注意する等,慎重に行動する必要があります。
(5)感染症情報
ジカウイルス感染症の発生に伴い,フィリピンには感染症危険情報を発出しています。詳細についてはこちら(http://www2.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/pcinfectioninfolist.asp?pageno=1 )をご参照ください。
2.地域別情勢
(1)ミンダナオ地域の一部地域(南サンボアンガ州,北サンボアンガ州,サンボアンガ・シブガイ州,サンボアンガ市,西ミサミス州,南ラナオ州,北ラナオ州,コタバト(旧北コタバト)州,コタバト市,マギンダナオ州,スルタン・クダラット州,サランガニ州,バシラン州,スールー州及びタウイタウイ州)(周辺海域を含む)
:「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」(継続)
ア これらの地域では,アブ・サヤフ・グループ(ASG),モロ民族解放戦線ミスアリ派(MNLF-MG),バンサモロ・イスラム自由運動/戦士団(BIFM/BIFF)等の武装勢力によるテロ・誘拐事件が多発しています。
このうちASGについては,バシラン州やスールー州などムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)において,国軍等治安当局と断続的に交戦しており,特に新政権発足後,両州においてASGに対する国軍等の掃討作戦が行われており,双方に多数の死傷者が発生しています。また,ASGは,同地域やサンボアンガ地域及び周辺海域において資産家や外国人旅行者のほか,航行中の船員等を狙った誘拐が断続的に発生しています。
MNLF-MGは,2013年9月,サンボアンガ市において住民数百人を人質に市街地に立て籠もり,国軍等治安当局との大規模な武力衝突を引き起こし,結果として死者100人以上,避難民約12万人を出す事態となりました。
また,MNLF-MGやBIFM/BIFFは,主にコタバト州やマギンダナオ州において国軍等治安当局と交戦しており,2014年1月に発生した国軍とBIFFの交戦では,死者50名以上,地域住民約2500世帯が避難しています。2015年1月末には,マギンダナオ州においてテロリスト掃討作戦を実施していた警察特殊部隊がBIFF及びMILFと相次いで交戦し,44名の警察官と18名のMILF構成員が死亡する事案も発生しています。いずれの事案においても,民間人が巻き込まれることが多く,引き続き高いレベルの警戒が必要です。
イ 爆発事件については,ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)(とりわけマギンダナオ州,バシラン州,スールー州)やサンボアンガ半島地域,コタバト州(旧北コタバト州),スルタン・クダラット州等において,即製爆弾の使用,手りゅう弾の投てきによる民間人が巻き込まれる死傷者を伴った事件等が多発していることから,引き続き高いレベルの警戒が必要です。2015年1月にはサンボアンガ市において,ASGによる報復行動とみられる爆発事件が発生し,56名が死傷しました。また,2015年9月サンボアンガ市内でバスターミナルに停車中のバス車内で爆弾が爆発し,30名余りが死傷しました。
ウ 誘拐事件は,特にサンボアンガ地域やARMM地域(とりわけスールー州,バシラン州,タウイタウイ州)及びその周辺海域で多く,実業家,中国系フィリピン人のほか外国人旅行者等を狙った身代金目的の誘拐も多発しています。2015年1月には,南ラナオ州において韓国人が身代金目的で誘拐される事件が発生したほか,同年10月には北サンボアンガ州ディポログ市でレストランを経営するイタリア人が武装集団に拉致される事件も発生しています。また,隣国マレーシアのサバ州東海岸・島しょ部についての危険情報( http://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_017.html#ad-image-0 )にもご留意ください。
エ 2009年11月,マギンダナオ州で地元政治家の家族,支持者及び報道関係者数十名が武装集団に虐殺された事件を踏まえ,同州及びコタバト市並びに近隣のスルタン・クダラット州には非常事態宣言(State of Emergency)が現在も発出されています。
オ 南ラナオ州マラウイの拘置所の襲撃について,「ISIL東アジア」の名義での犯行声明が発出されるといった事案も発生しています。
ついては,これらの地域(周辺海域を含む)においては反政府武装勢力,国際テロ組織等の活動が懸念され,今後もテロ・誘拐等が発生する危険性が高いため,どのような目的であれ渡航は止めてください。既に滞在中の方は,常に最新の治安情報の入手に努めるとともに,滞在期間は短期間にとどめ,身の回りや行動に細心の注意を払うようにしてください。
(2)ミンダナオ地域のうち上記「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」発出地域以外の地域(カミギン州,ディナガット・アイランズ州,カガヤン・デ・オロ市,ダバオ市及びジェネラル・サントス市を除く)(周辺海域を含む)
:「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」(継続)
ミンダナオ島東北部では,主にNPAの活動が認められ,コンポステラ・バレー州,南・北スリガオ州,南・北アグサン州及びブキドノン州では,民間企業に対する襲撃事件が多発しています。2011年10月には北スリガオ州においてNPAによる日系鉱山施設等への大規模な襲撃が発生したほか,2014年1月にはブキドノン州の日系果物工場が襲撃されました。2014年12月には,同州マラマグにおいて,走行中のバスで爆弾が爆発し,少なくとも11名が死亡し,多数が負傷する事件等がそれぞれ発生しています。
また,ダバオ市周辺でも,2015年9月,ダバオ州サマル島のリゾート施設が武装集団に襲撃され,カナダ人やノルウェー人など複数の外国人が誘拐された上,居あわせた邦人も負傷する事件が発生しました。同年10月には,インターネット上で誘拐被害者を撮影したとされる動画が公開され,2016年4月及び6月にそれぞれカナダ人が斬首されました。なお,ノルウェー人は9月に解放されました。このほかにも,これらの地域ではASG等の反政府武装勢力の活動が活発化していますので,今後,再びテロや誘拐等不測の事態が発生する危険性も否定できません。
ついては,これらの地域及び周辺海域への渡航を予定されている方は,不要不急の渡航は止めてください。渡航・滞在する場合には,最新の現地治安情勢について情報収集に努めるとともに特別な注意を払い,安全確保のため準備を十分に行い,不測の事態に巻き込まれないよう十分注意してください。
(3)パラワン州南部(プエルトプリンセサ市以南の地域)
:「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」(継続)
パラワン州南部及びその周辺海域では,2014年4月にドイツ人観光客2名がASGにより拉致される事件が発生したほか,2015年6月にはプエルトプリンセサ市内で誘拐を企てていたASG構成員2名が治安当局に逮捕される事件も発生しました。ASGの活動範囲は,スールー諸島のみならず,パラワン州南部や隣国マレーシアのサバ州東海岸など,スールー海全域に及んでいるとみられます。これらの地域ではASG等イスラム系反政府武装組織によるテロ・誘拐の危険性が排除できず,今後も活発化するおそれがあります。また,パラワン州では,従来,山間部を中心にNPAの活動が認められていました。
ついては,パラワン州南部(プエルトプリンセサ市以南の地域)及びその周辺海域への不要不急の渡航は止めてください。やむを得ず渡航・滞在する場合には特別な注意を払い,常に最新の治安情報の入手に努めるとともに,安全確保のための準備を十分に行い,不測の事態に巻き込まれないよう十分注意してください。
(4)上記地域以外のマニラ首都圏を含む全地域
:「レベル1:十分注意してください。」(継続)
ア ルソン島地域(マニラ首都圏を含む)
(ア)2013年には1名,2014年には7名,2015年には2名の邦人がそれぞれ殺人事件の被害に遭っているほか,強盗(タクシー強盗,睡眠薬強盗を含む),窃盗,詐欺,恐喝(警官の制服を着用した2~3人組によるものを含む)等の被害に遭う邦人が跡を絶ちません。(犯罪事例については,「安全対策基礎データ」をご参照ください。)
(イ)マニラ首都圏においては,2012年1月にはマカティ市サルセド・