JETROフィリピンは16日、2020年7~9月のGDP成長率についての情報を発表しました。
2020年7~9月のGDP成長率はマイナス11.5%
フィリピン統計庁(PSA)は11月10日、2020年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率をマイナス11.5%と発表した。第2四半期の成長率はマイナス16.9%で、経済の減速が続いたものの、減少幅は緩やかになった。
フィリピン国家経済開発庁(NEDA)のカール・チュア長官代行は、第3四半期の成長率が減速となった要因について、同国のGDPの6割を占めるマニラ近郊のセブで、広域隔離措置が一時的に強化されたことを挙げた。フィリピンでは6月と7月にセブで、8月にはマニラ近郊で広域隔離措置を一時的に強化し、感染拡大を防ぐために経済活動を制限した。
一方、同長官代行は、第2四半期からの減速幅が縮小したことを受け、「GDPの減少幅が縮小したことはフィリピン経済が好転していることを示しており、2021年には経済の力強い回復が見込まれる」と説明。フィリピン経済は「最悪の状態を脱した」との見解を明らかにしている。
需要項目別にみると、国内総固定資本形成はマイナス41.6%(第2四半期:マイナス53.7%)で、下落幅が大きかった。同項目の中で特に、建設投資がマイナス43.5%(マイナス31.4%)と大きく減少した。
一方、輸出はマイナス14.7%(マイナス35.8%)となり、第2四半期に引き続きマイナス成長だったものの、減少幅は緩やかになった。輸出のうち、財輸出はマイナス2.2%(マイナス30.8%)と第2四半期から大きな改善がみられる。11月4日にPSAから発表があった貿易統計では、9月の輸出は前年同月比で2.2%増と7カ月ぶりに増加に転じており、輸出に関しては新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで回復しつつある。政府最終消費支出は5.8%と、需要項目の中で唯一、プラス成長だった。第2四半期に続き、政府の経済政策が景気を下支えした。
成長率を産業別にみると、農林水産業が1.2%、鉱工業がマイナス17.2%、サービス業がマイナス10.6%だった。サービス業のうち、宿泊、飲食がマイナス52.7%、鉱工業のうち、建設業がマイナス39.8%と大きく減少した。広域隔離措置の強化で、通常の事業活動を認められていないことが影響した。一方、サービス産業のうち金融・保険は6.2%(5.4%)で最も成長率が高く、政府機関、防衛、保安が4.5%(7.1%)とプラス成長を維持している。
1~9月の成長率はマイナス10%
2020年の第1四半期から第3四半期までの平均成長率はマイナス10%となる。7月末に、フィリピン開発予算調整委員会(DBCC)は2020年の成長率をマイナス2%~3.4%からマイナス5.5%へ下方修正した。しかし、第3四半期の成長率の発表を受け、成長率予測をさらに引き下げる可能性がある、と報道されている(ビジネスワールドほか)。
(吉田暁彦)