JETROフィリピンは4月23日、新型コロナウイルスに関連する経済動向の新しい情報をアップしました。
新型コロナによる経済損失は最大5兆2,000億円、政府系シンクタンクが試算
政府系シンクタンクのフィリピン開発研究所(PIDS)は4月16日、新型コロナウイルスの国内感染拡大によるフィリピンの経済損失は最大2兆4,829億ペソ(約5兆2,141億円、1ペソ=約2.1円)にのぼり、2019年のフィリピンのGDPの12.9%に相当すると発表した。
この経済損失は、世界で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が抑制できず、世界経済が減速し、景気後退に陥った最悪のケースの試算とした。一方、パンデミックが2020年の6月末までに効果的に抑制された最良のケースでは、経済損失は2,763億ペソとした。
業種別の経済損失では、製造業が最大で8,552億ペソ、2019年の製造業GDPの23.8%に相当するとした。以下、損失額が大きい順に卸売・小売業(7,248億ペソ、20.3%)、金融業(1,413億ペソ、8.6%)、運輸業・倉庫業・通信業(1,243億ペソ、11.3%)、農林水産業(1,103億ペソ、6.4%)、不動産業(797億ペソ、3.3%)、電気・ガス・水(443億ペソ、7.3%)、鉱業・採石業(269億ペソ、16.7%)、建設業(193億ペソ、1.2%)などとなった。
PIDSはさらに、3月16日から4月30日まで実施されているマニラ首都圏を含むルソン地方全体の広域隔離措置(ECQ)を延長せず、さらに現在平均で6日間必要とされる感染者のPCR検査を受けるまでの日数が短縮されなかった場合、フィリピン国内では症状のない感染者を含む全感染者数は851万人、うち症状のある感染者数が641万人、死者数は109万人に達するとの試算を示した。なおPIDSは、ECQを1カ月延長した場合、労働者の失業状態の長期化によって消費が減少し、少なくとも1,500億ペソの経済損失が生じる恐れがあるとした。
アジア開発銀行(ADB)は4月3日、感染拡大によるフィリピンの経済損失は最大54億ドル(GDP比1.6%)とする試算を発表(2020年4月9日記事参照)。PIDSが今回発表した経済損失額は、ADBの試算の約9倍にのぼる。
(坂田和仁)