JETROフィリピンは20日、フィリピンの輸入完成車に対するセーフガードの有無に関する情報を発表しました。
フィリピン貿易産業省、輸入完成車への正式なセーフガード発動を見送り
フィリピン貿易産業省(DTI)は8月6日、輸入完成車に対する正式なセーフガードを発動しないことを発表した。同省は2021年1月、自動車や鉄鋼、造船、鉱業分野の労働者で構成される労働組合「フィリピン・メタルワーカーズ・アライアンス(PMA)」からの申請を受けてセーフガード暫定措置の発動を発表し(2021年1月6日記事参照)、2月1日から、乗用車に対して1台につき7万ペソ(約15万4,000円、1ペソ=約2.2円)、小型商用車に対して1台につき11万ペソの関税を、現金担保のかたちで賦課していた。
暫定措置の導入について、DTIは乗用車・小型商用車ともに国内生産に比べて海外からの輸入が大きく増加しており、国内自動車産業の保護が必要と説明していた。しかし、関税委員会(TC)は、正式なセーフガード発動に関する調査を行った結果、2021年7月23日付で、「輸入の増加が国内産業に重大な損害を与えている、または与える恐れがあるとされない」との報告を発表した。
同報告において、TCは正式なセーフガードの発動を行う明確な根拠はないとの勧告を出した。今回、DTIはTCの勧告に従うかたちで、正式なセーフガード発動を見送った。なお、正式なセーフガード発動が見送られたことで、暫定措置による関税引き上げ分(現金担保のかたちで付加された関税分)は払い戻される。
フィリピンの自動車輸入流通業者協会(AVID)は、DTIが正式なセーフガード発動を見送ったことを評価し、「正式なセーフガード発動の見送りが、自動車産業の回復に寄与するとともに、(輸入完成車に対して関税が課されないことで)消費者に便益をもたらす」とコメントした(「フィルスター」紙2021年8月13日)。
(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)