JETROフィリピンは3日、大統領の施政方針演説についての情報を発表しました。
大統領の施政方針演説、インフラ整備で経済復興を
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は7月27日、第18次国会第2期通常国会の開会に当たり、毎年恒例の大統領施政方針演説を行った。「コロナ禍」対策の緊急措置に必要な権限を大統領に付与する「国民が一体となって回復するための互除法」を継承する法案(2020年6月2日記事参照)、税制改革第2弾のCREATE法案(2020年6月24日記事参照)、インターネット取引の規制に関する法案(2020年7月28日記事参照)などの早期承認を促した。
「コロナ禍」で打撃を負った経済については、同政権の看板政策であるインフラ整備事業の推進によって復興を目指し、首都圏以外での経済特区開発や地方への企業移転促進を通じて地方経済を振興する方針を確認した。
学校教育について、感染者数の少ない地域に限り、通信授業と対面授業を併用するかたちの学校再開を検討していたが、「学校での感染拡大を警戒しているため、ワクチンが手に入るまで再開を見送る」とした。なお、ワクチンについては、「中国の習近平国家主席から『ワクチンを開発したら、いち早くフィリピンに提供する』約束を取り付けている」とした。また、任期中、2022年までに教育省と全国の公立学校を情報通信網で結ぶPEN(Public Education Network)も実現すると発表した。
このほか、通信業界を主導する大手2社に対して「2020年12月までに通信サービスを劇的に改善できなければ、残りの在任期間中に下院と協力し、両社抜きで通信業界を改善する」と警告した。フィリピンでは最近、大統領から警告を受けていた大手民間放送局が事業免許更新を下院で否決されて事業停止になった(2020年7月22日記事参照)。
この演説に先駆けて官民各界から経済活動の早期再開を求める声が相次いだ。例えば、貿易産業省のロペス長官は7月16日、「当省が6月4~17日に2,135社を対象に調査を行ったところ、22%が(事業の)全面復旧、52%が部分復旧、26%が閉鎖または休業と回答した。企業と雇用を守るにはビジネスの早期再開が必要」と指摘した。
また、全国にネットワークを持つ最大の経済団体フィリピン商工会議所連合会も7月22日、「経済活動の制限を全面的に解除してほしい。製造業、サービス業を問わず、(地域によって)30~50%の稼働率上限を課されては収益も上がらず、やむなく閉鎖や休業を続ける企業も多い。廃業する零細・中小企業も増えており、早期の制限解除を望む」との声明を発表していた。しかし、今回の演説では事業活動の加速を促すような方策は示されなかった。
(石原孝志)