JETROフィリピンは3日、フィリピンの第4四半期のGDP成長率についての情報を発表しました。
フィリピン統計庁(PSA)は1月28日、2020年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率をマイナス8.3%と発表した。第3四半期(7~9月)の成長率(改定値、2021年1月27日発表)はマイナス11.4%で、景気後退が続いたものの、落ち込みは緩やかになった。
また、2020年通年の成長率は前年比マイナス9.5%となり、政府の予測範囲マイナス8.5%~マイナス9.5%の下限に収まったと説明した。フィリピン政府は、厳しい隔離措置を実施した2020年第2四半期(マイナス16.9%)を底として、経済の回復が継続しているとの認識を示した。
第4四半期の実質GDP成長率について、需要項目別にみると、民間最終消費支出がマイナス7.2%(第2四半期:マイナス15.3%、第3四半期:マイナス9.2%)で、回復の兆しがある。国内総固定資本形成に関しては、マイナス29.0%(マイナス53.7%、マイナス41.6%)と、減少幅が大きい状況が継続しているものの、同じく改善がみられる。一方、政府最終消費支出は4.4%(21.8%、5.8%)で、増加幅が減少している。第2四半期に、経済状況の悪化に対応した政府の財政出動が景気を下支えたが、ビジネス活動制限の緩和により、経済活動の重心が政府から民間に移りつつある。
成長率を産業別にみると、農林水産業がマイナス2.5%、鉱工業がマイナス9.9%、サービス業がマイナス8.4%だった。鉱工業では建設業のマイナス25.3%(第3四半期:マイナス39.7%)、サービス業では宿泊、飲食のマイナス42.7%(マイナス54.4%)の落ち込みが大きいものの、減少率は緩やかになっている。サービス業の金融・保険は4.4%(4.3%)で、最も成長率の高い産業となった
経済活動の本格的な再開と感染拡大防止のバランスを模索
フィリピンでは、新型コロナウイルスの感染拡大の勢いは2020年8月上中旬ごろをピークに落ち着きをみせ、10月以降、徐々に経済活動や移動の制限緩和を進めてきた。政府は、感染拡大のリスクを見据えつつ、引き続き経済活動を再開させていく姿勢を示している。また、2021年2月に新型コロナウイルスのワクチンがフィリピンに到着の予定で、ワクチンの普及による景況感の好転が期待されている。政府は、2021年の実質GDP成長率を6.5%~7.5%と予測している。
(吉田暁彦)