JETROフィリピンは6日、新型コロナウイルス感染症に関連する経済動向の新しい情報を発表しました。
「コロナ禍」で首都圏の不動産市場も打撃
米国不動産大手コリアーズ・インターナショナルは7月30日、マニラ首都圏のオフィス市場に関し、2020年は、新規需要が前年比57%減の38万5,700平方メートル、新規供給が当初見込みから50%減の53万2,600平方メートルと、需給ともに減少するとの予測を発表した。
また、市場全体で見ると供給超過に陥るため、約5.3%の空室が生じ、賃料は約17%下落する見込み。3月中旬から施行されている広域の隔離措置で経済が打撃を受けているほか、在宅勤務を含めた新たな勤務体制の導入でオフィスの在り方を見直す企業も出てきている。さらに、同社によると、厳格な衛生管理基準を満たしながらの建設工事は通常より時間がかかるため、新規供給が停滞している。
同社は、オフィス賃貸市場は2021年から回復に向かうと見ている。特にIT-BPM(ITを活用したアウトソーシング)産業やオンラインカジノ事業者が大きな影響を与えるとして、その動向を注視している。
同社はまた、同年におけるマニラ首都圏の住宅市場についても、需給ともに減少を見込む。ただし、新規需要の減退に比べて、工期遅延で新規供給が当初見込から42.7%少ない6,270戸にとどまるため、空室率は前年比3.6ポイント増の14.6%、賃料は前年比4.5%減と、比較的小さい減少幅に抑制されるとしている。
なお、住宅市場の需要減退には、海外就業者の本国送金額の減少が強く影響している。フィリピン中央銀行は8月3日、2020年1~5月における海外就業者の本国送金額は前年同期比6.4%減と発表した。1~4月の送金実績が前年同期比3.0%減であり、5月はさらに大きく落ち込んだ。7月27日のフィリピン労働省の発表によると、これまで世界各国から10万6,200人の海外就労者が帰国しており、6月以降の送金実績も引き続き落ち込みが予想される。
(石原孝志)