JETROフィリピンが新型コロナウイルス感染症に関する新しい情報を発表しました。フィリピン自動車産業の直近の動向についてです。
足踏み続くかフィリピン自動車産業の回復
ASEAN自動車連盟(AAF)が9月3日に発表した、ASEAN主要国の自動車(四輪、二輪)生産・販売実績によると、フィリピンの1~7月の四輪車販売台数は、前年同期比48.7%減の10万5,583台だった(添付資料参照)。二輪車販売についても、42.2%減(56万4,311台)となった。
四輪車販売台数の落ち込みは、AAFが発表している8カ国の中で、シンガポール(53.4%減)、インドネシア(49.9%減)に次いで3番目だった。一方、生産面では、四輪車が32.7%減(3万3,715台)にとどまる一方、二輪車は60.7%減(27万747台)と減少が著しかった。3月中旬から5月中旬までフィリピン全土で実施した、厳格なコミュニティ隔離措置によって、自動車の製造・販売が禁止されていた。そのため、4月には生産・販売がともにほぼゼロになるなど、大きな影響が出ていた。
月別でみると、「新型コロナ禍」で低迷していた生産、販売台数が、5月から月を追うごとに回復してきている。四輪の販売台数は、4月に前年同月比99.5%減の133台だったが、7月には2万542台(35.4%減)となった。しかし、8月にマニラ首都圏と近隣州で制限措置が再び厳格化されたため(2020年8月3日記事参照)、先行きの見通しは不透明だ。
ジェトロが現地の日系企業から聞いたところ、現在、フィリピンの自動車製造業が直面する主な課題として、まず、長期にわたるコミュニティ隔離措置による経済活動の停滞と、消費市場の縮小を挙げる声が出ている。次に、感染対策に伴う経費負担の増大と、現場の作業効率の低下も課題だ。
その例として、従業員の通勤用シャトルサービスの独自手配や、通勤中、生産ライン、食堂など、あらゆる局面でのソーシャルディスタンス確保、感染者や濃厚接触者が発生した場合の出勤シフト再調整、などが挙げられる。さらに、外国人の入国制限で現場に必要な人材を欠いているケースなどもある。また、国の規制とは別に、地方自治体が独自に厳格なルールを適用し、現場が混乱する事例も散見される。
(石原孝志)