JETROフィリピンは5日、新型コロナウイルス感染症に関連する経済動向の新しい情報を発表しました。
人民元決済額が急成長
中国の国営通信である新華社通信によると、中国銀行マニラ支店は7月22日、2020年にフィリピンで決済された人民元は6月30日現在で3,025億1,100万人民元(約4兆6,284億1,830万円、1人民元=約15.3円)に達し、2019年通年実績の1,272億3,400万人民元と比べても既に約2.38倍に急増していると発表した。また、同行は、国際銀行間通信協会(SWIFT)のデータを引用し、「2020年、東南アジアで人民元決済額が一番速く伸びているのはフィリピン」とした。その背景については、「ドルを介さず、人民元とフィリピン・ペソで直接取引を行う利点が広く認識されてきた」ためとした。
フィリピンでは、2016年10月にフィリピン中央銀行が準備通貨に人民元を加え、「ビジネスミラー」など地元各紙によると、2018年11月から中国銀行や地場銀行13行の間でフィリピン・ペソと人民元の直接取引が開始された。同月には、中国から習近平国家主席がフィリピンを訪れ、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領との首脳会談で、人民元建てフィリピン国債(パンダ債)の新規発行、「一帯一路」構想の一環として多数のインフラ整備事業を支援することなどが合意された。
両国の経済交流は着実に広がっている。まず、貿易取引は輸出入ともに増加基調にある。グローバル・トレード・アトラスによると、2019年の輸出額は前年比4.2%増の703億3,400万ドル、うち対中国は同10.7%増の96億2,900万ドルで、米国、日本に次ぐ3位だった。同じく輸入額は前年比1.4%減の1,073億7,500万ドルで、うち対中国は同14.7%増の245億3,600万ドルと、2位(日本)の倍を超える圧倒的な首位だった。
また、フィリピン統計庁(PSA)によれば、2019年の対内直接投資認可額3,901億1,000万ペソ(約8,582億4,200万円、1ペソ=約2.2円)のうち、中国は前年比74.9%増の886億7,500万ペソで2位だった(2020年3月11日記事参照)。なお、フィリピン財務省財務局が7月29日に発表した2020年6月末の政府負債残高によると、外債1兆6,952億1,100万ペソのうち人民元建てフィリピン国債は279億800万ペソだった。
(石原孝志)