JETROフィリピンは10日、フィリピン国内の観光業に関する情報を発表しました。
フィリピン政府、観光産業の復興へ対策を講じる
フィリピン観光省(DOT)は9月3日、下院歳出委員会において2022年の観光産業計画のプログラムを支援するために約35億2,000万ペソ(約77億4,400万円、1ペソ=約2.2円)を予算要求した。2021年と同程度の予算規模を継続した。同計画は、2016~2022年の中期計画である国家観光開発計画(NTDP)(注1)をもとに、持続可能で、回復力があり、包括的な観光産業を最終目標としており、観光労働者の仕事の保護や旅行者の安全の確保を目的とした内容が盛り込まれている。
今回は併せて、新型コロナウイルスが観光産業に与える影響を緩和することを主な目的として、観光対応および回復計画(TRRP)(注2)を更新した。同省のベルナデット・ロムロ・プラット長官は「同計画とプログラムのもとで、DOTは引き続き観光のサービス基準を改善し、世界で最も質の高い旅行への信頼を回復させたい」と述べた。
また、フィリピン政府は、観光産業の復興を促進するために、観光労働者が新型コロナウイルスワクチンを早期に接種できるように積極的に働き掛けている。2021年8月20日時点で、マニラ首都圏の観光労働者〔ワクチン優先グループA1およびA4(注3)〕の予防接種状況は95%に達している。DOTは、そのほかの観光地においてもDOT独自のワクチン接種プログラムを展開し、観光労働者のワクチン接種を支援している。
フィリピンの観光産業は、「新型コロナ禍」以前、フィリピンのGDPの約13%に当たる約2兆5,100億ペソとなっていたが、2020年は、フィリピンにおいても新型コロナウイルスの感染が拡大し、感染を抑制するために強力な移動・経済制限措置を導入したことで、約9,733億ペソまで減少している。また、フィリピンへの海外からの観光客数は、2019年の約826万人から2020年は約148万人へと約82%減少している。
(注1)観光法に定められた政策を実現し、厳しい国際競争に打ち勝つための長期的な枠組みを定めるもので、現在のものは2016~2022 年を計画期間とした第2次国家観光開発計画。
(注2)2020年に新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた観光産業を復興させるために、DOTと民間観光関係者によって作成されたロードマップ。
(注3)フィリピン政府は、国内でのワクチン接種計画の実施に当たり、優先的にワクチン投与を行う対象をグルーピングし、徐々に接種対象を拡大していくという政策をとっている。優先接種グループA1は医療関係者、A2は高齢者、A3は併存疾患を有する者、A4は経済活動において現場で業務従事する者、A5は貧困層で、番号が小さいほど優先順位は高い。
(蛇見拓斗)