『職場でのハラスメント』
今月の事例
日本では職場における労働者に対するハラスメントを防止するため、労働施策総合推進法や男女雇用機会均等法が、いわゆるパワハラやセクハラを防止する措置を雇用主が取ることを義務づけていますが、フィリピンではどのような規制があるかについて解説させていただきます。
まず、セクハラについてはフィリピンにおいても1995年Anti-Sexual Harassment Act(共和国法第7877号)が制定されており、職位の上の者が職場やトレーニングまたは教育の場において下位の者に対して性的な便宜(favor)を求めることを禁じています。かかる禁止される行為には、体を触ったり、性的な言動を行うこと等が含まれ、違反行為を行った者は懲役及び/または罰金の刑に処されることもあります。また、同法に加えて、Safety Space Act(共和国法第11313号)は、セクハラ行為による処罰対象者を上位者以外にも広げ、また、禁止される行為態様も拡大し、職場外やサイバースペース上の行為等も対象としています。
次にパワハラですが、現時点ではフィリピンにおいてはパワハラを規制対象とする法律は存在しません。もっとも、職位の上の者の行為によりハラスメントを受けたと感じた者は当該行為を退職勧奨行為、差別的な行動(労働法により差別的な行動は禁止されています)等であるとしてDOLEに訴え出ることが可能な場合があり、かかる行為の存在が認定された場合は行為者のみならず、雇用主も責任を追及される可能性がありますため、注意が必要です。
以上のとおり、職場においてハラスメント行為を行うことは法律上の処罰及びDOLEにより民事的な責任追及がなされる可能性がありますが、会社としてハラスメント行為が行われたことを認識した場合、その行為を行った者をどう処遇するかということが問題となります。 まず、大前提として、会社は正当な理由がある場合はマネジメントの裁量として従業員に対して懲戒処分を行うことができます。もっとも、会社側に裁量が認められているとしても、懲戒処分は会社が提示している社内規程等に従って行われる必要があります。また、懲戒処分についても行われた行為の悪質度に応じて行われる必要があり、過度に重い処分は後に争われる可能性もありますので、注意が必要です。この点、フィリピンにおいてはセクハラはかなり重い反則行為であると認識されていると言えますので、事案にもよりますが、解雇処分とすることも妥当であると言えます。その他のハラスメント行為についてもその反則度に応じた処分が可能と考えますが、懲戒処分として給与を減額するという処分は一般的ではないと言えます。もし給与の減額と同等の結果を求めるのであれば、一定期間の出勤停止(出勤していない期間は給与の支払いを行う必要はありません)という懲戒処分が一般的です。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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