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ビジネス烈伝 YAMAHA MUSIC PHILIPPINES INC. ヤマハミュージックフィリピン President 尾上 浩一朗 氏

フィリピンの7000諸島を舞台に、
“深さ”を軸に音楽市場の開拓に邁進!

 

YAMAHA MUSIC PHILIPPINES INC.
ヤマハミュージックフィリピン
President 尾上 浩一朗 氏

 

 

 

2023年、ヤマハはフィリピンに現地法人YAMAHA MUSIC PHILIPPINES INC.を設立し、本格的な市場開拓に乗り出した。立ち上げを率いるのは、豊富な海外経験を持ち「先遣隊長」を自認する尾上浩一朗社長だ。多様な文化、商習慣、物流の制約が入り組むフィリピン市場で、同社はどのようにブランドを浸透させ、持続可能なビジネスを築こうとしているのか。尾上社長にお話を伺った。

 

 

編集部

 

ヤマハミュージックフィリピンを設立した背景を教えてください。

 

尾上氏

 

フィリピンは、音楽が生活に深く根付いている国です。スペイン統治時代の影響、その後のアメリカのエンターテインメントの影響もあり西洋音楽に親和性が非常に高い。さらにASEANの中で英語が公用語、かつ唯一キリスト教文化圏で音楽に対する制約も低く楽器ビジネスに適した環境です。

 これまでヤマハは50年以上、製品の輸入販売を現地代理店に委ねてきました。しかし代理店の志向や扱う製品のポートフォリオ、得意不得意などで、製品・施策への注力度に濃淡が出てしまう点に課題がありました。現地法人を立ち上げ、より近い所で直接事業を展開し、お客様とのつながりを強化することで、大きな成長が望めると考えました。

フィリピンには現在、ヤマハ製品だけを扱う「ヤマハストア」が3店舗あり、いずれもパートナーが運営しています。ただ、専売店出店には大きな投資が伴うため、パートナーの販売店にヤマハ製品のコーナーを設けるなど、効率的な展開にも力を入れています。「ここに来ればヤマハが試せる」という場を多く設置することが大切だと考えています。

 

 

編集部

 

販売戦略で特に重視しているのは?

 

尾上氏

 

楽器は決して安いものではありません。実際に触って、音を出して、その価値を体感していただかないと本当の良さと価値は伝わりません。ギターでもピアノでも、一番感動する瞬間は、やはり最初に音が鳴った瞬間だと思います。

フィリピンの楽器市場では、弊社はまだ新参者です。まずはパートナーの数を増やして、販路を広げるとともに『深さ』、店舗でただ商品を置いているだけではなく、お客様が個々のニーズに合ったヤマハの商品を実際に体験し、感動できる機会・場所を増やす、及びご購入いただいた商品を『長く』使っていただくため、メンテナンスできる機会・場所を増やすことが大事と考えています。「広く、深く、長くお客様とつながる」ため、それらが推進可能なパートナーを多く作り、私たちの代わりに現場でヤマハの魅力を伝えられる存在になっていただくことが重要です。

私たちは幅広いカテゴリーの商品を提供させていただいており、それぞれの商品ごとに最適な体験・流通体制を整える必要があります。同じやり方はすべてに通用しません。時間を要しますが、逆にそれをしっかり構築できれば、簡単には真似ができない我々の強みにしていけると思っています。

 

 

編集部

 

フィリピンの音楽教育は?

 

尾上氏

 

フィリピンの音楽教育では器楽演奏の機会が十分にありません。ヤマハには「スクールプロジェクト」という活動があり、世界の子供たちが音楽や器楽活動を通して未来を生きる力を育み、心豊かな人生意を送る世界の実現を目指し公教育における「新しい音楽の授業」の構築支援に取り組んでいます。フィリピンでも昨年ダバオ教育局との協業の下、小学校でのリコーダー教育を試験的に開始しています。

また、音響機器の分野では、商品の提供だけでなく、実際の現場で必要な知識をユーザーの方々に共有するセミナーを各地で行っています。昨年はダバオやセブでも開催し、こうした機会が少ない地方の方々にとても喜ばれました。ヤマハの音づくりのノウハウや魅力を伝え、音楽を楽しむ裾野を広げていきたいと思っています。

 

 

編集部

 

業務体制について教えてください。

 

尾上氏

 

現在、日本人4名、現地スタッフ23名の体制です。当然と言えば当然ですが、現地スタッフの方が多いので、弊社業務の大部分は現地スタッフにより遂行されています。フィリピンの場合、英語が通じるのは大きなメリットである一方で、指示や依頼の意図が正確に伝わるかは文化的な違いを理解しないと認識の掛け違いを生み、ロスが発生してしまいます。

文化的な違いを理解するうえで、よくホフステードの文化次元モデルが使われます。これは異文化比較の指標で国ごとの文化の特徴を6つの軸、「権力格差」「個人主義と集団主義」「不確実性の回避」「達成と成功への同期」「長期/短期志向」「耽溺対抑制」の切り口で、各国の位置を数値化しています。  日本人は世界的に見ても 不確実性回避が極端に高く、先のことを見通し、すべてをルール化したがる傾向が強い。イレギュラーが苦手で、徹底的に準備する文化です。一方で、フィリピン人の不確実性回避は、中程度からやや低く、逆に集団主義、短期的志向が強いとされています。ラテンに似た気質で、例えばイベントでも準備は遅れていても、最後に一気に仕上げ、当日の爆発力でなんとかする。良し悪しはありますが、日本人には真似できない部分です。

私は、日本人がスタンダードで他国が特殊、という考え方は捨てるべきだと思います。むしろ、日本人がエクストリーム(極端)、フィリピンの方が、実はグローバルスタンダードに近い点もあります。文化や価値観の違いを認め合いながら、良いところを融合させていくのが、組織づくりで大事だと思っています。

また、人材育成においては、「なぜそれをやるのか」という目的や背景をしっかり理解してもらうことが重要だと思っています。例えば、イベントで機材をセッティングする場合、「お客様に良い音を届けて感動してもらう」という目的を理解しないと、表面的な作業で終わり、定着しないと考えています。

 

 

編集部

 

今後の拡大戦略と展開は?

 

尾上氏

 

簡単に売上を数倍にするというようなマジックはないと思っています。商品を理解していただき、価値を感じて使っていただく。それが次の購買や口コミにつながり、市場が広がる。地道に基盤を作り、将来的に他の誰にも真似できないような強い組織を作ることが一番の成長戦略です。弊社は設立2年、登山でいえば一合目くらいと思っています。

私は自分のことを「立ち上げ先遣隊長」だと思っています。文化を作るには時間がかかります。「マジックはない。地道に、一歩一歩やるしかない」今をきちんと機能させることが、未来を作る唯一の方法だと思います。

それと同時に、日本の文化と、フィリピンの文化と融合させることが大切だと思っています。現地の方々と一緒に、ここでしかできない組織や文化を作りたい。それが私の思いです。

 

【プロフィール】
幼少期をUAE、高校時代は米国テキサス州ヒューストンで過ごす。横浜国立大学卒業後、2001年ヤマハ株式会社に入社。電子金属部門営業、スペイン語研修を経て09年からパナマ駐在(中南米担当)、ドバイ駐在(中東・アフリカ・CIS地域担当)し、内部監査部門を経て、23年から現職。

 

【趣味】
B級グルメの食べ歩き、ミニ四駆など。楽器は家に「あります」が、社内は凄腕ばかりなので、とても「弾きます」とはいえません(笑)。


【座右の銘】
「マジックはない。着実にやるべし」を心がけています。現状には必ず背景がある。変化するにはそれを踏まえて、一つひとつ積み上げることが大切だと思っています。

 

詳細はこちらから:https://primer.ph/shopping/categories/music/yamaha-store/

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