JCB、フィリピン進出30年
成長市場で挑む「日本発ブランド」戦略

JCB International Asia Pacific Pte. Ltd. Manila Branch
Country Manager
田村 渉氏
日本発唯一の国際カードブランド「JCB」。同社は1996年にフィリピンへ進出し、今年で30周年を迎える。これまでフィリピン市場でどのような歩みを重ねてきたのか。現在のクレジットカード市場の動向、そして競合他社との差別化をどのような戦略で図っているのか。JCB International Asia Pacific マニラ支店を率いる田村氏に、その取り組みと今後の展望を伺った。
編集部
フィリピンへ進出されてから30年、貴社はどのような展開をされてきたのでしょうか。
田村氏
JCBは1961年に設立し、その後、海外展開に着手したのは1981年です。日本人の海外旅行が一般化しつつある中で、海外でのカード利用の利便性を確保することが業界の課題となっていました。多くの日本のカード会社が海外のクレジットカードブランドとの提携によって対応していたのに対し、JCBは独自で海外事業を展開する道を選択いたしました。これにより、1981年に香港に初の現地法人を設立し、当社の海外事業が本格的に開始されました。
フィリピンにおける事業の始まりは、1996年です。RCBC様との提携を通じて、フィリピンで初めてJCBカードの会員事業が開始しました。当時は数名規模の人員で、オフィスを間借りしてのスタートでした。 その後、1997年にBDO様、2022年にEastWest様とのパートナーシップを結びました。
日本では当社は自社カードを発行し、加盟店も自社で開拓・管理するというイメージが強いかもしれません。しかし、海外事業においてはビジネスモデルが異なります。 現地の銀行やカード会社にJCBブランドのカードを発行する権利や、加盟店を開拓・管理する権利を供与する「ライセンス事業」という形態をとっています。現地のパートナーと連携しながらビジネスを拡大していくという戦略で、現在カードを発行するライセンスを提供をしている3社のほか、加盟店の開拓や管理を担うライセンス先9社と協業して業務を推進しています。
編集部
現在のフィリピン市場をどのように分析されますか。
田村氏
フィリピン市場は今、まさにクレジットカードが幅広く普及し始める 予兆の中にあります。現在のフィリピンの一人当たりGDPは約4,000米ドルですが、これは日本の1970年代前半から中盤の水準に相当します。当時の日本もクレジットカードが普及し始め、その後急成長を遂げました。フィリピンは若年層が多く、民間消費が旺盛であるため、成長性という観点では非常に大きな期待を持っています。
実際、数字にもその勢いは表れています。コロナ禍が明けた2021年の第1四半期と比較すると、現在のJCBカードの会員数は3倍の100万会員に達し、利用額は6倍にまで伸長しています。パンデミックを経てE コマース利用が定着したことも追い風となりました。
当社が特に力を入れている東南アジア4カ国、フィリピン、タイ、インドネシア、ベトナムの中でもフィリピンは特に高い成長率をあげています。フィリピンではクレジットカード保持者は人口の10パーセント未満と言われており、まだまだ伸びしろがある市場です。
編集部
貴社の強み、競合他社との差別化について教えてください。
田村氏
提携先様向けのBtoB、エンドユーザーであるカード会員様向けのBtoC、これら2つの面で、私たちは「日本発の国際ブランド」としての強みを活かした差別化を行っています。
提携先様に対しては、コールセンターや銀行支店など会員獲得の現場スタッフの方にJCBについてしっかり知ってもらうための勉強会の実施や、仕事場への直接訪問、モチベーション向上のためのインセンティブ、獲得をサポートする販促ツールの提供などを行っています。ライセンス事業という形態でありながら、このように現場に足を運んで、提携先様のビジネスの拡大を後押しするような支援のスタイルは当社の特長だと思います。
一方、カード会員様向けには、日本人気の高まりを背景に「日本ブランド」を活かしたプロモーションを展開しています。例えば、「JCBest Bites(バイツ)」と銘打ち、日系レストランと提携してカード会員様に割引等の特典を提供しています。マニラだけでなく、セブやダバオでも日系レストランでの優待提供を行っています。さらに、毎週火曜日(Tuesday)にどこかの加盟店に行けば必ず優待や特典を受けることができる「JCB Chooseday(チューズデー)」というプロモーションも3年間継続中で、加盟店様から「施策日の売り上げが20倍~30倍も伸びた」という声もいただいています。
編集部
現在の組織体制とスタッフ育成について重視されていることは何でしょうか。
田村氏
現在は総勢19名、その内訳は日本人スタッフが3名、フィリピン人スタッフが16名です。組織機能は大きく4つの部門、カード発行を担うライセンス営業、加盟店ライセンス営業、マーケティング、そして人事・総務を管轄するアドミンチームの4部門に分かれています。 採用および組織運営において最も重視している点は、「協調性」と「顧客に対して親身に向き合える姿勢」です。実際の業務では部署の垣根を越えた連携やプロジェクトへの参画が不可欠であるためです。
その象徴的な事例が、近年注力している対面イベントの開催です。昨年はマニラ、セブ、ダバオで実施し、特にマカティのグロリエッタで開催した日本をテーマにしたJCB主催イベントでは、2日間で1万人を超える来場者を記録しました。このような大規模な施策を成功させるには、マーケティング部門単独の力では成し得えません。オフィス全体が一体となって役割を分担し、スタッフ全員の総力で取り組む必要があります。このように、組織全体で協力し合い、業務を遂行できる人材を求めています。
編集部
貴社の今後のビジネス展開について教えてください。
田村氏
フィリピン進出から30周年という節目を迎え、当社は今、フィリピン事業における「第2章」をスタートさせようとしています。 JCBの根底に流れるDNAは「挑戦」です。1981年に独自ブランドでの海外展開という決断を下した歴史が示す通り、私たちは常に挑み続けてきました。国際クレジットカード業界の巨大な競合相手に対し、同じことをしていては勝機はありません。他とは違うこと、新しいことをとにかくやってみようという企業風土のもと、失敗から学び改善を続ける姿勢を徹底しています。
今後の展望としては、カード発行パートナーを着実に増やしていくことが目下の目標です。中長期的には、フィリピン市場をJCBの海外事業全体を支える「柱」となる規模へ育て上げることが私の使命であり、フィリピンにはそのポテンシャルがある国だと思っています。
【プロフィール】
神奈川県川崎市出身。大学卒業後、2007年株式会社ジェーシービー入社。コールセンター部門で北海道に配属され、電話対応業務に従事。その後、国内銀行営業部門を経て、全社企画部門で予算管理や中期経営計画の策定等を担当。国際事業部門へ異動に伴い、23年10月から現職。
【趣味】
スポーツ全般。小学校から高校まで野球に取り組む。現在はマニラ日本人会のソフトボールチーム「マニラロックスター」でプレー。仕事で関係がある銀行主催のバドミントン大会に出場し、優勝経験も。ゴルフは「回数は重ねていますが全く上達していないです。ゴルフそのものよりも、その後の飲み会を楽しんでいます」。
【座右の銘】
「10年の歳月は、人を賢者にも愚者にもする」。高校を卒業する際に恩師から贈られた言葉です。日々の積み重ねが将来の姿を大きく変えるという意味が込められていると受け止め、今も心に留めています。





























