ブログ
食べる
経済ニュース
コラム
求人情報

HOME >  フィリピンのコラム  >  外国の仲裁判断の実行方法【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第二五回】

外国の仲裁判断の実行方法【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第二五回】

『外国の仲裁判断の実行方法』

先月号ではフィリピンでの紛争解決方法についてお話させていただいております( に掲載されていますので、見逃された方は是非ご覧ください)。今回は外国で得た仲裁判断の執行についてお話しいたします。


今月の事例

Q.フィリピンの会社を相手とする仲裁をシンガポールで行い、その結果、フィリピンの会社が我々に支払いを行う内容の仲裁判断を得たのですが、フィリピンの会社が自発的に支払いを行わなかったため、フィリピン国内でその仲裁判断を執行しようと思います。どのようにすればよいですか?

 

 

<外国仲裁判断の執行>


    日本の会社とフィリピンの会社との間で紛争が生じた場合、フィリピン国内で紛争解決を目指すことはフィリピン側の当事者に有利な結果となる可能性が懸念されるなどの理由から、一般的にはフィリピン以外の第三国の仲裁機関での仲裁を検討することが多いと思われます。具体的には、地理的に近いシンガポールの仲裁機関である、シンガポール国際仲裁センター(Singapore International Arbitration Centre; SIAC)が選ばれることが多いように思われます。そこで、SIACでフィリピンの会社が日本の会社に対して金銭を支払うことを命じる仲裁判断を得たときに、その仲裁判断に基づいてフィリピンの会社に支払いを行わせるための手続について検討します。なお、フィリピンは日本も締結国となっている外国仲裁判断の承認及び執行に関するニューヨーク条約の締結国ですので、原則的に外国仲裁判断もフィリピン国内の裁判の判決と同様に有効であり、拘束力があります。

 

<具体的な手続>


   上記のような仲裁合意がない場合ですが、支払いを受けるためには裁判所での手続を起こすことになります。日本の場合、裁判所の手続としては訴訟だけでなく、調停の申立なども存在しますが、フィリピンでは申立の時にそのような区別はありません。もっとも、フィリピンではすべての訴えの提起がなされた場合、まずは調停手続、すなわち、裁判所が強制的に判断を下すのではなく、両当事者の話を聞き、自発的に合意をすることができないかどうかを探る手続が行われ、かかる手続で合意が得られなかった場合のみ、訴訟手続を行い最終的に裁判所が判決を下すことになります。裁判の場合、請求金額にもよりますが、第1審としては地方裁判所に訴えを提起し、判決につき不服がある場合には、第2審として高等裁判所、それでも不服がある場合には最高裁判所で審議が行われます。また、裁判手続には非常に時間がかかることは覚悟しておいた方がよいでしょう。
(1) 執行対象資産の所在地
(2) 義務履行地
(3) 被告の本店所在地
(4) 被告が個人の場合はその居住地
(5) マニラ首都圏の地方裁判所

申立てに対して、フィリピンの裁判所は仲裁判断の内容を覆 す判断を行うことはできませんが、以下の理由があると認めた 場合には仲裁判断の承認及び執行を拒絶することができます。
(1) 当事者に法的能力がない場合または仲裁の合意が無効である場合
(2) 仲裁判断において不利益を蒙った当事者が、仲裁人の選定もしくは仲 裁手続について適切な通告を受けなかったか、その他の理由により防 御することが不可能であった場合
(3) 仲裁判断が、仲裁の対象となっていない紛争または仲裁の対象を越 える事項についての判定を含む場合
(4) 仲裁機関の構成または仲裁手続が当事者間の合意に従っていない、 または、そのような合意がなかった場合
(5) 仲裁判断がまだ当事者を拘束するものに至っていないことまたは仲 裁判断がなされた国もしくは仲裁判断の基礎となった法令の属する 国の権限ある機関により取り消されたか、停止された場合
(6) 紛争対象である事項がフィリピンの法令により仲裁による解決が不可 能なものである場合
(7) 仲裁の承認及び執行がフィリピンの公の秩序に反する場合
フィリピンにおいて外国仲裁判断の承認及び執行を求める申し立てを行った場合、その執行により不利益を受けるフィリピンの会社は上に挙げた理由があると主張して争う可能性が高いといえます。その場合は、控訴裁判所、最高裁判所まで争うことも考えられます。そうなった場合には、実際に承認執行が可能となるまで3年程度かかることもありえます。


結論

A.フィリピンはニューヨーク条約の加盟国ですので、外国仲裁判断を国内で執行することが可能です。ただし、裁判所に外国仲裁判断の承認を求める申し立てを行い、これが認められることが必要です。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco法律事務所の監修を受けております。



- - - - - - - - - - - - -

弊事務所は、下記のフィリピンの法律事務所と提携しており、フィリピン進出中の日本企業及び在留邦人の方々に日本語での法律面でのサポートを提供させていただいております。取扱業務:会社設立、企業法務、倒産、労務問題、税務問題、一般民事、相続等


Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco
住所: Don Pablo Building 114 Amorsolo Street, 12290Makati City, MetroManila, Philippines
電話:02-8892-3011(代表)・02-8892-3020(日本語対応)・0917-851-2987

E-mail: [email protected]
URL: http://www.quasha-interlaw.com



- - - - - - - - - - -- - - - - - -

(左) 弁護士 上村真一郎
(右) 弁護士 鳥養雅夫
(桃尾・松尾・難波法律事務所)
〒102-0083
東京都千代田区麹町4丁目1番地
麹町ダイヤモンドビル
電話:+81-3-3288-2080
FAX:+81-3-3288-2081
E-mail: [email protected]
E-mail: [email protected]
URL: http://www.mmn-law.gr.jp/

 

広告

フィリピン法律あらかると 前回のコラム

前回までは労使交渉に関する様々な点についてお話させていただいております。今回は一般的にフィリピンで紛争が生じた場合の解決方法についてお話しいたします。

新着コラム

フィリピンでの職場におけるハラスメントに関する法律はどのようなものがありますか?
日本で持っている登録商標をフィリピンでも保護したいのですが、どうすればよいですか?
日本では被疑者に警察などが接触せずにいきなり逮捕する場合がありますが(この場合、警察などが裁判所に逮捕状を請求して裁判所が逮捕状を発行し、その逮捕状を執行するという形での逮捕となります)、フィリピンでも日本と同様に被疑者がいきなり逮捕されるということはあるのでしょうか。本稿ではフィリピンでの逮捕の手続について解説させて頂きます。
フィリピンでも日本と同様にコロナのパンデミック期間にリモートワークが拡がりを見せましたが、フィリピンにおけるリモートワークに関する法制について今回はご説明させて頂きます。
フィリピンの空港から出国しようとする際に、イミグレーションの係官に止められて出国できないという場合があり得ます。これは、出国しようとした外国人に何らかの出国を制限する命令が出ているためです。そこで、まずどのような出国禁止命令があるのかにつき解説します。
フィリピン不動産賃貸ポータルサイト  |   フィリピン求人 ジョブプライマー  |   BERENTA:Find the condo that suite you
ページトップに戻る