『判決の執行について』
今月の事例
<判決執行の手続き>
民事裁判で勝訴判決を得ても被告が自発的に判決で命じられた金銭の支払いを行うとは限りません。そこで、被告が自発的に支払いを行わない場合に判決を執行する方法について説明します。
1.裁判所に対する執行の申立
裁判所で勝訴の確定判決を得た場合、判決の登録から5年以内に執行の申立を行う必要があります。裁判所が判決の執行の申立を受けた場合、執行を命じる令状( W r i t o f Execution)を発行します。
2.執行官による執行
執行令状が発行されますと、令状を発行した裁判所に所属する執行官は、義務者の所在地において事前の通告を行うことなく判決の執行を行います。なお、フィリピンにおいては権利者または権利者の代理人が判決の執行に立ち会うことが可能です。
義務者の所在地において、執行官は義務者に対して執行令状に記載された金額満額の即時支払いを要求します。即時支払いの方法としては、現金、または銀行小切手での支払いが可能です。もし権利者が執行に立ち会っていた場合、義務者が権利者に直接支払いを行いますが、権利者が立ち会っていない場合は、義務者は執行官に対して支払いを行い、執行官は即日裁判所にこれを預託し、裁判所が権利者に対して支払い
を行います。
もし義務者が即時に支払いを行うことが出来ない場合、執行官は義務者の資産を差押えます。なお、執行官は義務者に対してどの資産を差押対象とするかについて選択することを認めており、その権利を行使しない場合は執行官はまずは動産類を差押え、それでも足りない場合にのみ不動産を差押えます。
なお、執行官は銀行預金などの債権を差し押さえることも可能です。銀行預金を差し押さえる場合、執行官は銀行等の債務者に対して通知を行います。通知を受けた銀行等は差押えの通知を受領してから5日以内に、債務者が義務者に対して負っている債務額を通知します。そして、通知の受領日から10営業日以内に、債務者は現金または銀行小切手にて権利者に対して支払いを行います。
3.差押え資産の公売
差押え資産の公売は、差し押さえられた資産の種類により定められた期間、公売の通知がなされたあとに、競売により処分されます。義務者に対しても事前の通知がなされ、公売日までに全額の支払いを行えば、公売は中止されます。公売日においては、判決により支払いが明示された金額に達するまで、差押え資産が売却されます。ちなみに、権利者自らが差押え資産を競り落とすことも可能です。このような公売の手続きによる差押え資産の売却から得られた金銭が権利者に支払われます。
結論
本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。
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