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第十八回ビジネス烈伝 / フィリピン・ワコール・コーポレーション社 岩崎孝志さん

来年に創業25周年を迎える大手下着メーカー
女性に“美”を提供し続ける独自の流儀とは

岩崎孝志さん

フィリピン・ワコール・コーポレーション社会長兼最高経営責任者(CEO)
岩崎孝志さん

1960年、静岡県生まれ、慶応大学経済学部卒。6年間のP&G勤務を経て、1990年株式会社ワコール入社。1999年に念願叶って海外(香港)勤務となり、2010年フィリピン・ワコール社長に就任。今年4月、会長兼最高経営責任者(CEO)に就任した。休日はゴルフや山登りに汗を流し、マニラ猛虎会会長、静岡県人会会長も務める。
 
【好きな書籍】
「ラ・マンチャの男」デイル・ワッサーマン脚本
※小説『ドンキホーテ』を元にしたミュージカル作品
主人公であるドンキホーテは、人々から狂っていると思われるほどの夢追い人。彼の夢を追い続ける姿勢にとても惹かれます。学生時代に彼の従士サンチョ・パンサを演じたこともあり、思い入れのある作品です。
 
【好きな言葉】
見果てぬ夢 ~The impossible dream~
ミュージカル「ラ・マンチャの男」で歌われる主題歌タイトル。
現実に引き戻されることがあっても、夢は見続け、そして追い続ける。このような状態が理想だと考え、常にこの言葉を掲げています。

来年創業25周年を迎えるフィリピン・ワコール。百貨店で接客を行う100名以上の販売員を全員正規雇用、今年3月には同社初のフィリピン人社長が誕生するなど、積極的な現地化を推進している。フィリピン下着メーカーシェア率第3位、ドル安傾向も相まって三年連続過去最高売上、最高利益を叩き出している。世界のワコールで「美」を提供し続ける、同社の岩崎孝志会長にお話をお聞きしました。

 

 

編集部

 

まず、フィリピン・ワコールの概要について教えて下さい。

 

岩崎さん

 

下着メーカーワコールの、フィリピン現地販売会社です。マカティ市内にオフィス兼倉庫を設け、物流スタッフも含めた35名ほどが常時ここにいます。私は唯一の日本人。国内の主要百貨店には現在100名ほどの販売員がおり、教育担当の社員が定期的に指導にあたっています。現在は、来年迎える創業25周年のイベントに向けて動き出しています。

 

 

編集部

 

市場としてフィリピンを選んだ理由は?

 

岩崎さん

 

1970年からワコールは韓国、タイ、台湾にそれぞれ合弁会社を設立し、シンガポール、香港と進出してきました。フィリピンにまで市場を拡大したのは1989年。他アジア諸国と比べ、かなり遅い方でした。女性下着は一人当たりのGDPがUS$2,000を超えるとにわかに動き出すと言われています。当時のフィリピン経済状況からして、十分にポテンシャルがあると判断したわけです。

 

 

編集部

 

日本と展開商品や売れ筋の違いは?

 

岩崎さん

 

圧倒的に、Tシャツブラと言うウレタンカップで出来ているタイプが主流です。色はベージュと黒が売れ筋ですね。日本では下着はファッションアイテムという捉え方をされている。デコラティブなものが売れるんです。反面フィリピンでは、下着が目立つのは恥ずかしい、アウターに響かないものが良いという意識が強い。購入客は、高価格設定もあり、ミセス世代の富裕層の方々が大半です。

 

 

編集部

 

日本と異なる状況で、どのように販売促進を行ったのでしょう。

 

岩崎さん

 

私がフィリピン・ワコールに就任した当時、日本で新入社員用のマニュアルとして使われていた「おもてなしブック」を英訳し導入しました。

 

 

編集部

 

日本のおもてなし文化を浸透させる上で、苦労された点は。

岩崎さん

 

特にないですね。日本文化と言うよりは“ワコール文化”だと思っています。日本人だとか香港人だとかフィリピン人だとか関係なく、ワコール流のお客様への思いやりが、同じワコール・ブランドで商売をしている社員同士にありました。前任の日本人社長3人がそういったワコールの軸をきっちり守ってくれていたのも、大きかったですね。

 

 

編集部

 

岩崎さんが、ワコール・フィリピンに来るまでの経緯をお聞かせ下さい。

 

岩崎さん

 

大学卒業後の6年間は、日用消費財メーカーP&Gブランドマネジメント部門に勤めていました。海外からのヤングエグゼクティブのアシスタントが最初の仕事でした。彼らは異国に来て、独自の打ち手で、新しい商品を新たな市場に売り込んでいくんです。もちろん結果はすぐに跳ね返ってくる。自分が全く知らないマーケットに行って、自分の打ち手によって新たな市場が開拓される。これって凄い醍醐味ですよね。この経験から、もっと海外を見たいと思うようになりました。外資系に移る同僚もいましたが、私はそういうのにあまり興味がなくて。日本の会社で、多少知り合いもいて…ということで、ワコール社。1990年当時に“世界のワコール”を掲げていたのも魅力的だった。

 

 

編集部

 

ワコール社に移られてからのお話を聞かせてください。

 

岩崎さん

 

世界のワコール、と謳っていましたが、実際海外勤務になるまで8年かかりました。初めて赴任したのは香港。香港・マカオ市場における販売で5年間務めました。一度日本に戻り、国内販売部門で6年務めた後、現在のフィリピン・ワコール勤務となりました。ワコールグループの中で、フィリピンは最小規模の海外法人。商品価格も客単価も低く、売上げが凄く小さかった。50歳手前で海外勤務はもうないかな、と思っていた矢先にこのような国に配属され「新しいミッションをもらったな」と感じました。

 

 

編集部

 

ワコール・フィリピンでの勤務は4年目となります。

 

岩崎さん

 

ドル安という外的要因もあり、三年連続過去最高売上げ、過去最高利益を出しました。ただこの結果を手放しに喜んではいけない。今期は名だたる主要百貨 店の売上げが芳しくない。下着だけというわけではなく、全体で買い控えているという印象もあります。地元フィリピンの安価ブランドは依然として売上げ上位におり、世界のファーストファッションのブランドが下着も取り揃えてきています。私たち自身もやり方を見直さなければいけない部分があるでしょう。

 

 

編集部

 

新たな販売政策を打っていくということですね。

 

岩崎さん

 

そうですね。ただ、私はあまり社員に「売ってくれ」とは言わないんです。私たちワコールの使命は“美の提供”。販売員がお客様をおもてなしして、よりジャストフィットの商品を提案し、気持ちよく購入していただく。本質はここにあると考えます。また、ワコール社は、本社設立以来40年以上に渡って女性のからだを研究し続けてきた“人間科学研究所”を社内に設置しています。約4万人のモニターのうち、2百人はなんと40年間モニターを続けて下さっている。私たちは妊娠、出産などを経て変化していく女性の体型データをきちんと持っています。年齢と共に変わっていく体にあった 下着を提供する。日本では「ラブ、エイジング。」と言っています。 ワコール流の顧客サービスにあわせ、このような競合各社にはない強みを生かしていきたいと考えています。

 

 

編集部

 

休日はどのように過ごされていますか?

 

岩崎さん

 

ゴルフか山登りです。香港勤務の時も山登りチームに入っていました。4人チームで出場する100kmレースにも出場して、24時間かけて完走したりしていたんですよ。当時40代でしたか。他には、阪神タイガースのファンで構成するマニラ猛虎会の会長、静岡県人会の会長も務めています。ぜひプライマーでも会員募集を…。

 

 

編集部

 

日本勤務に戻りたいと思うことはありませんか。

 

岩崎さん

 

ありません。一回駐在するとその国が凄く好きになっちゃうんで。香港もそうでしたが、フィリピンも最高です。社員がいるという責任感はもちろんありますが、ストレスが全くない。 もしワコール社がこれから新興国に進出していくという話があれば、自己申告書に「打たれ強いんで行かせてください」という事は必ず書くでしょうね。

 

 

 

 

フィリピン・ワコール・コーポレーション

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