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第十九回ビジネス烈伝 / バンダイ・フィリピン 石井敦樹さん

海外事業強化で現地法人設立
新生産工場で安定的競争力と生産拡大を

石井敦樹さん

バンダイ・フィリピン代表取締役社長
石井敦樹さん

>1962年生まれ。東京都出身。1985年株式会社バンダイ入社。
栃木工場、東京本社、香港、タイ、シンガポールなどを経て、2012年9月から現職。趣味はゲームで、「休日は基本ゲーマーです(笑)」。
 
【好きな書籍】
週刊少年ジャンプと週刊文春はフィリピンでも欠かさず毎週取り寄せています。ジャンプは弊社で商品化している漫画が多いのでその背景を知るためにも。文春は日本の旬の話題のトレンドを掴むためです。

〈座右の銘〉
吾唯足知(われただたるをしる)
あれが欲しいこれが欲しいと言わずに今あるものの中で頑張っていこうということです。
無い物ねだりしても仕方ありませんから。

海外事業の拡充で生産体制を強化するためフィリピンに現地法人を設立、国内外を含め実に17年ぶりとなる新生産工場をバタンガス州に建設した老舗玩具メーカー、バンダイ。“真のグローバル化”を掲げ、キャラクター、エンターテイメントビジネスで世界のリーディングカンパニーを目指す。フィリピンで新たな一歩を踏み出したバンダイフィリピンズの初代社長、石井敦樹さんにお話をお聞きしました。

 

 

編集部

 

まず、バンダイ・フィリピンの拠点である工場について教えて下さい。

 

石井さん

 

バタンガス州リパ市のリマ・テクノロジー・センターで、2013年8月から稼働を開始しました。投資額は約7億5千万ペソで、昨年末時点での従業員は425名。そのうち、5人が日本人です。私以下、管理、製品、品質管理、輸出入の、それぞれの部門の担当マネージャーです。設備は、プラスチックを商品ごとに成形する射出成形機が30台、塗装設備が240台、24mの製造ラインが6本あります。その他、金型メンテナンス用の機械などもあります。

 

 

編集部

 

どのような商品を生産しているのでしょうか。

 

石井さん

 

現在は、カプセル自販機で販売するいわゆるガシャポン®と呼ばれるサイズの小さいカプセルトイです。ドラえもんやアンパンマンをはじめとするキャラクター商品で、大部分は日本向け、一部をアジア市場に出荷しています。ガシャポン®は比較的シンプルな商品のため、稼働して間もない当工場でも作りやすいということもあります。今年は、月間100万個の製造を目標にしています。いずれはより高度な工程が必要な可動稼働フィギュアなども手掛けていきたいと考えています。

 

 

編集部

 

フィリピンに進出した理由は?

 

石井さん

 

現在、玩具についてはカードやプラモデルを除くと中国での生産が約9割以上を占めています。生産拠点の分散や、事業成長に伴うキャパシティを他地域で確保していくために、2011年頃よりミャンマー、ベトナム、インドネシアなどアジア各国を調査してきました。 その中で、豊富な労働力と公用語が英語であることによるコミュニケーションの容易さ、さらに政府が輸出企業に対して積極的な誘致をしている点を評価し、フィリピンに決定しました。

 

 

編集部

 

数ある候補地の中から、バタンガスのリマ工業団地に工場を構えました。

 

石井さん

 

ここに入っているのはほとんどが日系企業です。当初は、フィリピン特有の人事制度や福利厚生など、様々な事を先に入居している日系企業さんからヒアリングさせていただきました。情報交換という点で大きな利点がありますね。立地についても、一見遠そうですが現在は高速道が開通したので、マニラ中心部から1時間ちょっとで来られます。

 

 

編集部

 

中期計画のビジョンとして“真のグローバル化”を掲げています。具体的には?

 

石井さん

 

キャラクタービジネスの世界でオンリーワン企業を目指すというものです。人事を含め組織全体でをグローバリゼーションを意識した形にしようとしています。これまでは海外事業は海外部門だけが担当していました。現在は、例えば国内でプラモデルを担当するホビー事業部が、販路拡大のためなどアジアの販売も同時に見る、という風に体制自体を変革しています。また、本社役員が欧州やアジアの現地法人の役員を兼務するなどしています。

 

 

編集部

 

商品の性格からみて、若年層の多いフィリピンは生産拠点としてだけでなく、市場としても魅力的なのでは?

 

石井さん

 

フィリピンは国の歴史的な背景から、アジアの中でも特にアメリカのキャラクターが強いマーケットでした。ですが、近年は日本のアニメ、漫画をテーマにしたイベントやアニメのキャラクターに扮したコスプレイベントが多数開催されていて、我々にとっても可能性が広がりつつあります。グループ として大型ショッピングモールでの催事や、アニメイベントなどに積極的に参加し、若年層へのアピールを強化しています。ただ、販売での直接の収益は事実上まだないのが実情です。GDPがタイくらいになるともっと市場としての魅力が出てくるでしょう。その上で国民の収入が底上げされれば、おもちゃに使うお金も増えていくはずです。

 

 

編集部

 

石井社長ご自身の経歴について教えて下さい。

 

石井さん

 

1985年にバンダイに入社し、栃木工場で品質管理を2年間担当しました。その後、海外部門ではなく現場で品質管理を経験した人間を海外へということになり、香港、タイ工場などへ赴任しました。95年に一旦日本に戻り、3年ほどして今度はシンガポール、香港、深圳と海外勤務が続きました。これまでの会社員人生の半分以上を海外で過ごしています。

 

 

編集部

 

各地の製造現場を見てきた上で、新工場運営で留意している点は?

 

石井さん

 

入社してから数多くの玩具工場を見てきましたが、きれいな工場は大抵が良い工場です。この工場も出来てからまだ1年も経っていないのできれいですが、10年経ってもきれいな工場でいられるようにしたいと思います。きれいな工場は不良品も少ないんです。。

 

 

編集部

 

フィリピンの工場に期待されている事は?

 

石井さん

 

人件費は既に中国よりフィリピンの方が安くなっていると思うので、人手のかかる作業で強みを発揮していこうと。工場は結局QCDと言われます。Quality、Cost、Delivery。品質がよくても納期が遅れたらだめだし、コストを下げても、品質が悪くなったら意味がない。この3つのバランスをとりながら、フィリピンで玩具生産のプロを養成していきます。

 

 

編集部

 

フィリピンの印象はいかがですか。

 

石井さん

 

長らく勤務したタイに気候が似ているので、過ごしやすいと感じています。従業員のマネージメントについても、タイと共通する部分が多いです。ただ、これは国民性か時代性かわかりませんが、今の工場の従業員はおとなしいと感じています。良く言えば仲が良く和を重んじる、悪く言えば切磋琢磨する積極性に欠ける。一生懸命なんですが、指示に対して従順過ぎてしまう部分があるので、もう少し個々人の積極的な意見を引き出せるようにしていきたいですね。

 

 

編集部

 

ここフィリピンで人気のキャラクター商品を教えて下さい。

 

石井さん

 

ハリウッド関連作品の「トランスフォーマー」、「アイアンマン」等は映画の効果もあり広く知られています。バンダイ関連商品においてはアメリカ発のキャラクターとして「パワーレンジャーシリーズ」「BEN10」、が人気です。また、一昨年放送を開始した「モンスーノ」も評判が良いです。日本発のキャラクターとしては、「ガンダム」の人気があります。特にプラモデルでは「ガンプラ・ビルダーズ・ワールドカップ」と銘打った、世界13のカ国と地域の参加者でガンプラの出来映えを競う世界大会を開催しており、毎年フィリピンからも国内大会から選出された代表者を決勝大会に送り込んでいます。

 

 

 

 

バンダイフィリピンズ

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