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他社の株式取得の際の競争法上の手続【フィリピンで役立つ!フィリピン法律あらかると第六十一回】

『他社の株式取得の際の競争法上の手続』


今月の事例

Q.このたび、日本法人の完全子会社であるフィリピン法人が他のフィリピン法人の株式全株を譲り受けることを検討していますが、フィリピンの競争法上の手続がどのような場合に必要となりますか?
 
 

<フィリピン競争法の適用がある取引とは>


フィリピンの競争法(Philippine Competition Act)は、競争を阻害する契約や合併、株式譲渡等を禁止しています。そこで、そのような禁止される行為が行われることのないよう、一定の行為についてはフィリピン競争委員会( Philippine Competition Committee; PCC)に届出を行うことを義務付けています。設問のフィリピン法人の株式を取得するに当たっては、以下の2要件を満たす場合、PCCに対する届出が必要となります。

1.取引主体に関する要件
売主グループまたは買主グループのいずれかにおけるフィリピン国内の合計売上高またはフィリピン国内の資産価値が56億ペソを超える場合ここでいう「買主グループ」には、実際に株式を取得する主体だけでなく、その親会社である法人も含まれます。同様に、「売主グループ」には株式を取得されるフィリピン法人だけでなく、その株式を譲渡する親会社も含まれます。

2.取引額に関する要件
(1)取得される株式を発行している法人が所有する、株式以外のフィリピン国内の資産の総価値が22億ペソを超える場合、または、
(2)株式以外のフィリピン国内の売上高が22億ペソを超える場合であって、
(3)株式譲渡の結果、当該法人の株式を取得者が有することとなる議決権が35%を超える場合(既に35%以上を所有している場合は50%を超えることとなる場合)
なお、上記の基準金額(56億ペソまたは22億ペソ)は毎年PCCが改定を行っており(2018年、2019年ともに3月1日に改定)、今年も同様に改定される可能性もありますので、都度確認をされることをお勧めいたします。
 
 

<届出の手続>


先の基準に照らして届出が必要となる場合、売主と買主の双方が届出をPCCに対して行う必要があります(できれば同時に届けることが望ましいとされています)。届出が提出されますと、PCCは15日以内にその形式面をチェックし、不備があれば提出者に補充・修正を求めます。不備がない場合はPCCは形式面は十分である旨の通知を提出者に対して行い、30日間の実態調査に入り、当該取引が競争法上問題がないかどうかを精査します。問題ないとPCCが判断した場合、PCCは当該取引を承認することをウェブサイト上に公表します。また、PCCが30日間以内に判断を行わなかった場合、当該取引は承認されたものとみなすことができます。他方、PCCは更なる情報の提出を上記30日の期間内に当事者に対して求めることも可能であり、その場合、最大60日間待機期間が延長され、60日の期間内にPCCは当該取引を許可するかしないかを決定します。なお、PCCへの届出手続なしに行われた取引は無効であるとともに、取引金額の1から5%の行政制裁金が課される可能性があることに注意が必要です。また、今回は株式譲渡についてのみ説明しましたが、合併や資産譲渡も同様の届出が必要ですので、ご留意ください。
 
 
 

結論

A.債取引の当事者となる売主及び買主グループの資産及び取引の対象となる金額により競争法上の手続を行う必要があります。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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