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フィリピンの相続とは【フィリピンで役立つ! フィリピン法律あらかると 第四回】

『フィリピンの相続とは?』

前回はフィリピンで法人を設立する場合の手続き等についてお話させていただきました(前回のフィリピンあらかると )。今回はビジネスの話を離れて、フィリピンでの相続の制度はどのようになっているのかについてお話しさせていただきます。

フィリピンの相続手続


  まずは、フィリピンの相続手続について簡単に説明させていただきたいと思います。フィリピンでは、遺言がある場合とない場合で手続が違いますので、それぞれについて説明させていただきます。

<遺言がある場合>

被相続人(亡くなった方のことです)が遺言を残していた場合、被相続人の資産は遺言の検認手続を経なくては相続人に分配することができません。遺言検認の申し立ては被相続人の最後の住所地を管轄する地方対審裁判所(Regional Trial Court)に対して提起します。裁判所は遺言検認手続を行い、遺言執行者を選任します。問題がない限り、裁判所は遺言において遺言執行者として指定されている者を遺言執行者に選任します。遺言執行者は相続財産を収集し、債務及び税金を支払った後に、残った財産を遺言に従って相続人に分配します。

なお、ここで言う遺言はフィリピンの法律に照らして有効な方式の遺言であることが必要です。フィリピンでよく使われる遺言の方式としては、①公正証書遺言(各ページ上部にページ番号を振るとともに、左側余白に遺言者と証人(そのほかの要件もありますが、フィリピンに住んでいる18歳以上の者)が署名を行い、遺言の末尾には遺言者の署名のほか、そのほか3名以上の証人の署名が必要です。そして出来上がった遺言を公証人が公証すればできあがりです。)と、②自筆遺言(全文を遺言者が自筆で記入することが必要ですが、そのほかには証人等必要ありません)がありますが、①の公正証書遺言が一般的なようです。

<遺言がない場合>

被相続人が遺言を残さずに亡くなった場合の相続手続としては、2つの手段が存在します。

a. 裁判所外での相続(遺産分割協議による相続)

被相続人に債務がなく、すべての相続人が成人に達している場合、すべての相続人の同意により相続財産の分配について合意に達したときは、その合意に基づく遺産分割が可能です。

b. 裁判所による遺産管理手続

遺産分割協議の方法によることができない場合には、遺言がある場合の検認手続と同様に、裁判所への申し立てにより遺産管理手続が開始し、裁判所が選任した遺産管理人が相続財産を収集し、残余の財産がある場合にはこれを法律で定められた相続分に従って相続人に分配することになります。結婚している両親から生まれた者が亡くなった場合(このケースがもっともポピュラーです)、原則的には以下の順番で相続人となります。

① 嫡出子(結婚している両親の間に生まれた子供)
② 直系尊属
③ 非嫡出子(嫡出子以外の子)
④ 兄弟姉妹および甥姪

なお、配偶者が生存している場合、配偶者は常に第1順位の相続人となります。
この原則に加えて、フィリピンの法定相続分は以下の特徴があることを覚えておきましょう。

(ア) 配偶者は常に第1順位の相続人となりますが、他の誰が相続人となるかによって、その持分が異なります。日本とは異なり、配偶者が必ずしも最大の持分ではありません。
(イ) 嫡出子と非嫡出子がいる場合、非嫡出子にも相続分がありますが、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1です。
(ウ) 嫡出子がいない場合、非嫡出子と直系尊属は同一順位の相続人となります。

(ケース1)配偶者の他、嫡出子が2名存在する場合
→配偶者、嫡出子2名がいずれも1/3を相続(日本では、配偶者が1/2、嫡出子2名がそれぞれ1/4を相続します)

(ケース2)配偶者の他、子はなく、両親が存在する場合
→配偶者が1/2を、両親がそれぞれ1/4を相続(日本では、配偶者が2/3、両親がそれぞれ1/6を相続します)

(ケース3)配偶者の他、嫡出子が1名、非嫡出子が1名存在する場合
→配偶者と嫡出子がそれぞれ2/5、非嫡出子が1/5を相続(日本では、配偶者が1/2、嫡出子と非嫡出子は平等に1/4を相続します)

(ケース4)配偶者の他、嫡出子はなく、母親及び非嫡出子が1名存在する場合
→配偶者が1/2を、母親と非嫡出子がそれぞれ1/4を相続します(日本では、配偶者と非嫡出子がそれぞれ1/2を相続し、母親には相続分はありません)

 

日本人が関係する場合の相続

それではフィリピン在住の日本人が亡くなった場合の相続手続はどうなるのかについて、続いて説明します。

フィリピンの裁判所にはフィリピン国内の資産に関する相続手続についての管轄権があります。そして、遺言については、それがフィリピン国内で作成された場合にはフィリピン法または遺言者の国籍のある国の法律に照らして有効な遺言であれば有効なものとしてこれを扱い、フィリピン国外で作成された場合には、遺言作成国、遺言者の居住国または国籍のある国、またはフィリピンのいずれかの法律に照らして有効な遺言であれば有効なものとしてこれを取り扱うことにしています。このような考えをもとにしますと、フィリピン在住の日本人がフィリピンで遺言を作成する場合、フィリピン法または日本法に従った遺言を作成すれば、フィリピン国内の資産については遺言の内容に従った相続がなされます。

他方、遺言がなかった場合には、フィリピン国内の財産については、被相続人の国籍の法律に照らして遺産の分配がなされることになりますが、手続についてはフィリピン法に従って行われる必要があります。よって、先に挙げた遺産分割協議ができる条件が整っている場合には相続人の間で成立した遺産分割協議に従って遺産の分配がなされますが、そうでない場合には裁判所による遺産管理手続が行われ、裁判所により選任された遺産管理人が日本の民法を適用して遺産の分配を行うこととなります。

 

資本・株式について

定款には、授権資本、並びに、株式の引受人の名称、国籍、引受株式数及び払込資本を記載する必要があります。ここでは、授権資本(Authorized Capital)、引受資本(Subscribed Capital/ Outstanding Capital)、払込資本(Paid-up Capital)という3種類の資本について区別することが必要です。授権資本とは、会社の株主が引き受け、支払われるべき最大の金額として定められた金額を指します。また、引受資本とは、授権資本のうち、株主が引き受けた部分を指します。払込資本とは、株主により実際に払い込まれた資本の額をいいます。若干わかりにくいため、もう少し説明しますと、授権資本は、会社が株式を発行して株主から払い込みを受けることのできる資本の額の最大限をいい、引受資本は株主が既に引き受けた株式について全額の払い込みを行った場合の資本額を指すと言えます。また、日本の株式会社とは異なり、フィリピンの株式会社の株式引受人は引き受けた株式の全額を払い込む必要はなく、引き受け契約において残額の支払時期が定められているか、払い込み時期が定められていない場合には取締役会が要求したときに払い込むこととされていれば、最低その4分の1を支払えばよいこととされており、実際に払い込まれている資本の額が払込資本となります。これら3種の資本について整理すると以下のとおりとなります。
 
<授権資本>(25%以上)<引受資本>(25%以上)<払込資本>
 
なお、SEC登録の際の手数料は授権資本の金額により定められていること、また、授権資本を変更するには定款の変更が必要となることにご注意ください。

日本人がフィリピンで事業をしようとしても、 すべての事業を行えるわけではありません。 というのも、一部の事業についてはフィリピン人のみしか行えなかったり、フィリピン人とパートナーを組んで共同で事業を行うとしても、 外国人の投資割合が決まっている業種もあるからです。 ですから、まずはあなたが行おうとする事業ができるかどうか、できるとして、外国人の投資割合がどれくらいまで許されているのか について検討する必要があります。この点については、1991年外国投資法という法律が規定を置いており、 外国資本による投資が規制又は禁止される業種は、いわゆるネガティブリストとして公表されています。このネガティブリストはたびたび改正されており、2012年10月に改訂された第9次ネガティブリストが最新版となりますが、常に改訂がなされていないかについて、事業開始を検討する 前に確認する必要があるでしょう。
 このネガティブリストには禁止・規制業種がリストAとリス[トBに分かれて規定されています。リストAは外国人による投資や所有がフィリピンの憲法や特別法により禁止又は規制されているものを列挙しており、リストBは安全保障、防衛、公衆衛生、公序良俗保護や中小企業保護の観点等から規制されているものを列挙しています。実際のネガティブリストは多くの業種を挙げていますが、以下の図表においてはリストAとBに掲げられているもののうち、主要な業種について例示させていただきました。

 

相続税に注意

なお、本稿では扱いませんが、フィリピンには相続税(Estate Tax)の制度がありますので、フィリピンに資産がある場合の相続では相続税の支払いをお忘れなく。簡単に言いますと、被相続人が亡くなった時点の資産から負債を引いた金額が20万ペソを超える場合には相続の発生から6ヶ月以内に相続税の申告及び支払いが必要になります。詳細は専門家にお尋ねください。

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。

 



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弊事務所は、下記のフィリピンの法律事務所と提携しており、フィリピン進出中の日本企業及び在留邦人の方々に日本語での法律面でのサポートを提供させていただいております。取扱業務:会社設立、企業法務、倒産、労務問題、税務問題、一般民事、相続等


Quasha, Ancheta, Peña & Nolasco
住所: Don Pablo Building 114 Amorsolo Street, 12290Makati City, MetroManila, Philippines
電話:02-8892-3011(代表)・02-8892-3020(日本語対応)・0917-851-2987
E-mail: [email protected]


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(左) 弁護士 上村真一郎
(右) 弁護士 鳥養雅夫
(桃尾・松尾・難波法律事務所)
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