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日本で作成した遺産分割協議書の効力について【フィリピン法律あらかると第九十三回】

『日本で作成した遺産分割協議書の効力について』


今月の事例

Q.フィリピンに不動産と銀行口座を持っていた日本に住んでいた親が遺言書を残さず亡くなり、日本で遺産分割協議書を作成しました。これはフィリピンでも有効ですか。
 
 
フィリピンに所在する財産に関する相続手続についてはフィリピン法の適用を受けますので、質問のケースではフィリピン法における遺言がない場合の相続手続(intestate)に従うことになります。そこで、日本で作成した遺産分割協議書がフィリピンでも有効かという問題となりますが、フィリピン法においても、被相続人が債務を負担しておらず、相続人が成人であるか、未成年の場合でも法定代理人により代理されている場合は、裁判所における遺産分割手続ではなく、相続人間で締結した遺産分割協議書に基づき遺産分割を行うことは可能です。もっとも、日本で締結した遺産分割協議書に基づく遺産分割を行うためには以下の手続が必要となります。

1.日本で締結された遺産分割協議書に公証役場でのアポスティーユまたはフィリピン大使館における認証を受けること
2.遺産分割協議書の英訳がフィリピンで発行されている新聞紙上に3週間連続して掲載されること
3.相続税を支払い、BIRから登録許可証(CAR)を取得すること。フィリピンにおいては、相続の発生時(被相続人が亡くなったとき)から1年以内に相続税(Estate tax)を支払う必要があり、支払いが完了するとCARが発行されます。

なお、フィリピンで支払った相続税は日本で支払うべき相続税額から控除が可能です。

次に、日本人がフィリピンで保有している可能性の高い、コンドミニアムや銀行預金口座の遺産分割の方法につき、もう少し詳しく説明致します。

<コンドミニアムの遺産分割>

上記の手続きが終了したあと、遺産分割協議書において対象となるコンドミニアムを相続する相続人は、市の当局に地方譲渡税(local transfer tax)を支払ったのち、証書登録所(Registry of Deeds)に登録名義変更の申請を行い、名義変更の完了した権利証(CCT)を受領することにより、手続きは終了します。

<銀行預金口座の遺産分割>

銀行預金口座の相続は、被相続人名義の預金口座から出金した金額を相続人に分配する形が一般的ですので、相続発生後の被相続人名義の預金口座からの出金方法につき説明させていただきます。一般的には、被相続人名義の預金口座からの出金につきましては、被相続人の死亡から1年以内の出金の場合、相続税の支払いを完了していなくとも、源泉徴収(相続税の税率と同じ6%)はなされますが、預託金を積むことにより、預金口座からの払い戻しを受けることが可能です。他方、被相続人の死亡から1年が経過した後の出金に関しては、相続税の支払いが完了し、BIRからCARを受領しており、それを銀行に対しても提示することが必要です。なお、具体的な手続につきましては銀行ごとに異なると思われますので、個別に確認が必要です。
 
 

結論

A.一定の条件を満たせば有効です。

 

本稿においてフィリピン法に関する記載につきましては、Quasha Law法律事務所の監修を受けております。



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